贅の限りを尽くしたニューヨークのアマンは、2022年8月2日、マンハッタンの五番街と57丁目の交差点に位置するランドマークタワー(1921年築)、クラウンビルの中に開業しました。開業直後から、アマンを待ち望んでいたゲストは引きも切らずに足を運び、開業当時はそれほどに稼働していなかった客室ですが、毎日フル回転だったと聞かされました。

アジアの辺境地や小さな村など人里離れたリゾートから出発したアマン。その後は多大なる躍進を遂げ、徐々に都会へと舞台を広げていきました。やがて東京、ヴェニス、北京にと都会型のアマンを披露。そして2022年、話題と共に開業した街が世界屈指の大都会NYでした。車や人がひっきりなしに行き交う賑わいの中、「アマン ニューヨーク」のエントランスを一歩入った途端、アライバルロビーには静謐な空気が漂い、無駄のないすっきりとしたモダンな空間には天然石でできたレセプションデスクがあり、世界的な人気の日本人陶芸家、人間国宝到着ロビーの花瓶は辻村ゆいさんのもの。The vase in the arrival lobby belongs to Yui Tsujimura.辻村史郎氏の次男到着ロビーの花瓶は辻村ゆいさん。辻村塊氏の印象的な大壺が置かれ、日本人作家の作品が目立つアライバルホールに置かれていたのはとても誇らしく感じました。

14階の印象的なラウンジロビーのオブジェはPeter Gentenaar(ペーター・ヘンテナー)作、竹と手漉き長繊維紙で作られた燃え盛る炎のようなロビー階のアイコン的存在。
ガーデン テラスはラウンジバーとイタリアンのArvaに隣接、大理石のファウンテン、ファイアピット、バーカウンターがあり、天候の良い季節にはマンハッタンの社交場としてにぎわう。

1階のエントランスから14階まで一気にエレベーターで昇り、メインロビーに到着します。そこには慎ましやかなチェックインデスクと、シームレスに広がるパブリックスペースがあり、隣にはラウンジバーや屋外施設「ガーデン テラス」が造られ、屋外に出れば、超高層ビルの林立する大都市ニューヨークを肌で感じる風景に包まれます。ビルの間から見える緑は、なんとニューヨークのシンボルでもあるセントラルパークの木々、徒歩5分もかかりません。

「アマン ニューヨーク」の客室数は全83室。とはいえ、建築中から完売していたというアマン初の‘ブランデット レジデンス’22戸が上階15~30階を占めています。その客室は、煌びやかさよりもシンプルシックな内装で、高品質のマテリアルが使われたレジデンスらしい落ち着いた趣の部屋でした。私が滞在した客室は、ホテルのプレミアムスイートルームでした。室内には世界的にも、日本国内でも話題になった絵が飾られていました。それは、日本の国宝「松林図屏風」のモチーフが描かれた水墨画で、見つめているだけでス~っと情景に引き込まれるようなオーラを放っていたのです。国宝「松林図屏風」は、絵仏師から絵師となり、画壇の頂点へと上り詰めた長谷川等伯の命をかけた作品と言われ、水墨画最高峰と謳われており、客室のモチーフにも不思議な安堵感が宿っていました。

一方、「アマン ニューヨーク」で最大の客室は「アマンスイート」(185~257㎡)であり、全2室揃っています。部屋のリビングルームを飾るインテリアは、筆で描かれた‘漢字’でした。「アマン ニューヨーク」には、随所に感性豊かな‘和’のアートや精神性が見え隠れし、東西融合の新たなるモダニズムを漂わせた空間が造られていたのです。こうしたクラフツマンシップを巧みに表現した意匠が、高級感漂うラグジュアリーホテルを造り上げているのでしょう。 

「アマンスイート」は全2室、アマン ニューヨーク最大(185~257㎡)の広さを誇る。リビングルームには‘漢字’が描かれ東西融合の美意識が漂う。
アマンスイートのダイニングエリアにも日本人画家、長谷川等伯作の国宝「松林図屏風」をモチーフにしたウォールアート。穏やかに癒されると好評。

本格的なスパも造られています。総面積2300㎡、11階から3フロアを独占する「アマン・スパ」には20mの温水プールが備わり、その周囲には焚火台、デイベッド、高い天井と印象的なライトなど豪華そのもの。ニューヨーク市内随一の豪華なウェルネス施設と言われています。さらに2棟のスパハウスもオープンし、中にはハマムやバーニャ、冷温露天風呂、暖炉付きの屋外テラスなど、ビルの中とは思えない充実した施設が整っています。レジデンスの住人とホテルゲストとの導線は分かれており、エレベーターも異なります。

アマン・スパに作られた20mの温水プール。焚火台、デイベッド、などアマンらしいラグジュアリーな造り。市内随一の規模と内容を誇る豪華なウェルネス施設。
ニューヨーク初となる2棟のスパハウスには、ハマム、バーニャ、冷温露天風呂、暖炉付きの屋外テラスなどが造られ、クライオセラピー(全身冷却療法)施設も。

館内には和食のレストランも開業しています。東京でも馴染深く、各国のアマンで大人気のイタリア料理「Arva」と共に、伝統和食と斬新なメニューが楽しめるファインダイニング「NAMA」がニューヨークでも好評です。世界的な和食ブームも手伝い、和食レストランは宿泊客でさえ席を予約し難いほど賑わっています。レストランやバーには外来のアッパークラスのゲストも多く来店、華やかな賑わいを見せています。

イタリア料理「Arva」は各国のアマンの人気店。もともと「収穫」を意味するラテン語に由来。イタリアの伝統料理に敬意を払い、上質でサステナブルな料理を提供。
ユネスコの無形文化遺産登録の和食はニューヨークでも大人気。その土地で調達された旬の食材で作る伝統と現代日本の食文化を提供。
伝統和食と斬新な日本料理を楽しむ「NAMA」。カウンター席に座れば料理長の米丸琢馬氏が上質な食材による独自の‘おまかせ’を振舞う。

取材・文/せきねきょうこ

Photo: ©AMAN

せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、21年4月、新刊出版。

http://www.kyokosekine.com

DATA

アマン ニューヨーク

The Crown Building, 730 5th Ave, New York, NY 10019 USA
https://www.aman.com/ja-jp/hotels/aman-new-york

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