日本人として生まれたからなのか、お米に対する執着は人一倍強い。毎日炊き立ての白いご飯が食べたいし、外国で生活しても週に数回は手軽に和食・米料理が頂ける寿司屋に通う。我が家でよく作る米料理といえば、シンプルに炊いた白飯、短時間に火を通して香ばしく仕上げるチャーハン、そしてリゾットがある。リゾットは吸水具合を見ながら作りたいので20分近くも鍋の横に付きっきりとなる。そう、家で作る米料理にしては少々手間がかかるのだ。とはいえ他の何ものにも変えられない美味しさがある。出来立てとろとろのリゾットを皿の中心に一気呵成に流し、すぐに皿の下に手を入れてトントンと叩く。すると、ふわりと一面に米粒が均等に広がる。この瞬間を逃さぬように熱々をいただくのがこの上なく贅沢である。


 そもそもリゾットとはイタリア語の米(リゾ)と最高(オッティモ)が組み合わさってリゾットと呼ばれるようになったと言い伝えられている。それがいつの時代なのか、また誰が言い出したのかは明らかではないが、馴染みの店で店主に「あの最高の米料理食べたいな」とか、家で出てきた料理に「この米料理最高だな」などと家人が発言するなど容易に語源になりそうな情景を想像できる。手間が掛かろうが、やはりリゾットは最高の米料理なのだ。


 そもそもイタリアに米がもたらされたのは10世紀頃。当時医学、薬学、灌漑など世界の先端の知識を持ったアラブ人の手によってシチリアに運ばれた。しかし現代のように料理に使うというより、あくまでも薬としての扱いであった。イタリアの歴史は複雑で、国として統一されたのが19世紀と遅かったため、各地域で独自の文化が発達した。そのためリゾットの歴史を紐解こうとすると全く異なる時代に異なる地域で、いわゆる米を使用した料理を追うことはできるが、リゾットとして統一されたイメージはなかなか現れてこない。


 比較的早いものでいえば16世紀にフェラーラのエステ家でミラノ風リゾット(サフランを使ったもの)の原型に近い料理が作られているようだが、その後17世紀の戦争とペストの大流行により米料理の記録がほとんど見つからない。ようやく18世紀に入ると、米と玉ねぎをバターで調理してスープで湿らせたもの、という表現が登場する。個人的な見解としては、イタリアの伝統的な汁物ミネストラに米を入れて煮詰めてみたらリゾットになったという素朴な誕生もあったのではないかと素人ながら想像している。


 さて、今回の器はイタリアのマヨリカ焼きだ。柔らかく焼かれた陶器に、白い錫釉をかけ、その上から色絵で絵付けされたものだ。マヨリカ焼きの技法は、イスラム文化圏からスペインのマヨリカ島に伝わり、さらにそこからシチリアに伝わった。マヨリカ焼きが現れるまで、緑色や紫色という落ち着いた色彩が主だったのだが、この技法が伝わったことで明るく華やかな焼物の製作が可能になったことが画期的であった。

 今回の器は、母がイタリア土産にいただいたもので、壁掛けとして使えるように皿の後ろに穴が空いている。持ってみるとずっしりと重たいのだが、見ているだけで元気がでるので、飾って楽しむことが多い。皿の中央に描かれている鶏は、イタリアでは魔を祓う太陽の象徴として重宝されているシンボルである。レモンとカラフルな花と、南イタリアの底抜けな明るさを感じさせてくれる1枚だ。




海老とアスパラのチーズリゾット

―材料(2人分)

・鶏ガラ 1個

・ネギ(緑色の部分) 1本

※→鶏ガラスープ 450ml


・米 100g

・パルミジャーノレジャーノ(削ったもの) 25g

・生クリーム(立てたもの)5~10g

・塩 3g(4つまみほど)


・アスパラ 5本

・レモン 1個

・エビ 1パック

・カレー粉 適宜

①鶏ガラスープをとる。熱湯をかけながら、鶏ガラの内側に残っている内臓と、お尻の部分についている脂を取り除く。処理した鶏ガラとネギの緑色の部分を鍋に入れ、2リットルの水を加えて、沸騰させる。沸騰したらアクが出てくるので取る。しっかり取れたら、火加減を弱めて、1時間半〜2時間ほど火を入れ続ける。水分量は最初の半分以下ほどになっている。これを漉す。

②アスパラの処理をする。アスパラを折って、全体を切り揃え、はかまを包丁で取り除く。分量外の塩を入れた湯で1〜2分茹でて、冷水に取る。水分を拭き取って、斜めに切る。一部は好みでスライスしておく。

③海老の両面にカレー粉をまぶし、分量外の油をひいたフライパンで焼く。パルメザンチーズは削り、生クリームはしっかり立てておく。

④リゾットを作る。①で作っておいたスープは別の鍋で温めておく。分量外の油をひいたフライパンで、米に油をコーティングさせるように軽く炒め、①のスープ150mlを入れる。この時鍋に焦げ付かないように混ぜる。次第に水分が減ってくるので、再びスープ150mlと塩2つまみを加える。水分の量はお米とひたひたを目安にすると良い。さらにスープ150mlと塩2つまみを加えて、

アルデンテになったら分量のパルミジャーノレジャーノと味を見ながらレモン汁を加えて、火を止める直前に生クリームを加えて全体を混ぜ合わせる。塩で味の最終調整をする。

⑤器の真ん中にリゾットを流し入れたら、お皿の下から手でトントンと叩く。ここへ海老、アスパラ、レモンの皮を散らす。

米もマヨリカ焼きも、東から西へと伝えられた文化交流の証である。今日も最高の米料理、リゾットをいただけるありがたさを実感しながら、東西世界の平和を祈りたい。

料理家 千 麻子

学習院大学で美術史と経営学を専攻し、博物館に勤務。美味しいもの好きが高じてフランス随一の美食の街、リヨンのInstitut Paul Bocuseで料理を学び、ランスのレストランL’assiette champenoise(ミシュラン三つ星)の厨房で研鑽を積む。
Instagram: https://www.instagram.com/asako_sen/

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