友人が訪ねて来たら連れて行きたいお気に入りの飲食店が誰にでもひとつはあります。街の人々に愛され、みんなが通い続けるレストランこそ、胸をはって紹介したい“わが街の味”。この連載では、そんな街で人気のレストランを紹介しています。今月は都心へのアクセスがよく、緑豊かな住宅街・用賀です。この街にある都内でも数少ないスペイン・バスク料理の名店をご紹介します。


紹介する街●用賀

【スペイン料理】

料理人のブレない手仕事が生きた

美食の街・スペインバスクの料理

少し特別な店が歩いて行ける範囲にあれば、それはその街を好きになる理由になる。遠くからわざわざ食べに来る人がいる、そんな良質なレストランが近所にあれば、一人でふらりと食べに行ったり、時には散歩の途中で立ち寄よったりすることができるかもしれない。それは上質な日常の始まりでもある。


窓際のテーブル席は落ちついて会食できるスペース


ここランブロアもそんな特別なレストランだ。ミシュランガイドのビブグルマンに何度も選ばれる実力店であり、この店のためにわざわざ用賀を訪れる人も多い。

店に立つのは、シェフの磯部美木子さんとソムリエの北澤信子さん。女性2人が手がけるバスク料理店である。カウンター6席、6人がけのテーブルが1つ。バスクのイメージカラーである、赤いナプキンがずらりと並ぶ様子が頼もしく、こじんまりした空間は居心地が良い。


ピキージョピーマンのバカラオ詰め サルサビスカイーナ 1540円
ピキージョはスペインナバーラ産の赤ピーマン。焼くと甘みが強く、香りが高い。クリーミーな詰め物とソースとのバランスも絶妙。


鍋から美味しそうな香りが立ち上る小さなキッチンから飛び出すのはとびきりの料理ばかり。鮮やかな赤と白のコントラストが美しい『ピキージョピーマンのバカラオ詰め』は、バスクの定番料理。甘みのある赤ピーマンに、ベシャメルソースで和えたクリーミーなバカラオ(塩ダラ)を詰めたものだ。ピキージョと呼ばれる品種のピーマンも、バカラオもバスク料理の代表的な食材。野菜の旨味が濃厚なソースがたっぷりと敷き詰められ、一口食べれば幸せな気分になる、これぞバスクというひと皿!


イカの墨煮con アロス 2750円
日本でもよく知られたイカの墨煮だがソースのまろやかさは格別。ご飯との相性も抜群だ。


艶のある漆黒のイカ墨煮込みに添えられた白いご飯がまぶしいのは『イカの墨煮con アロス』。イカ墨ソースはトマトや野菜からでた旨みをベースにしているので、まろやかな旨味が豊か。鯛出汁とオリーブオイルで炊き込んだご飯が添えられているので日本人に親しみやすい料理でもある。スペインでは、お米は野菜で、付け合わせという立ち位置だが、そこはやっぱりお米好きの日本人。「ご飯をもう少しちょうだい」とおねだりする人も少なくないとか。そんなオーダーにも磯部さんは笑顔で応えてくれる。


スペイン留学中に料理に目覚めたという磯部シェフ。


バスクは、スペイン北部のピレネー山脈を挟んでスペインとフランスにまたがっている。独自の文化や言語を持ち、郷土食豊かなスペインの中でも、美食の地域として名高い。磯部さんはそのバスクの名門料理学校で学び、東京でも本場の味を伝えるスペイン料理店で腕を磨いた。

2016年に開業して現在6年目。基本は本場で学んだレシピを崩さないが、丁寧に作られる料理は、日本の気候や日本人の味覚に合わせて、強すぎる塩気や脂を料理によって加減している。


料理と一緒に楽しむスペインワインも揃っている。


そんな料理と一緒にソムリエ北澤さんがセレクトしたスペインワインを味わえば、気分はもはやバスクだ。名物・微発砲ワインのチャコリやシードル、バスク産ビール、シェリー、食後酒まで多彩なドリンクもまたこの店の魅力をひきたてている。


キッチンを望むカウンターはお一人さまにも楽しい場所。黒板メニューは眺めているだけでワクワクしてくる。


ランブロアがあるのは世田谷区の用賀駅。駅から直結の高層タワー、世田谷ビジネススクエアがある一方で、駅前には庶民的な商店街が伸びている。劇場のような円形階段がデザインされたドラマチックな駅も特徴的だ。周囲には砧公園や馬事公苑などもあり、都会的な部分と緑豊かな環境が整っている。高級住宅街でもあり、のんびり生活できる街として人気は高い。


LANBRoA

ランブロア

住所:東京都世田谷区用賀3-11-15

電話:03-6432-7017

営業時間:17:30~22:00(LO21:00)

定休日:  月曜 火曜

※掲載価格は税別価格です(2022年1月現在) (取材&文・岡本ジュン 撮影・貝塚隆)

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