ロケーションは東京品川区のウォーターフロント、桜の花を愛でながら散策をするにも、デートを楽しむにも、またワンちゃんの散歩にも気持ちのいい季節となりました。でもそれだけではありません。品川区には様々な顔があり、歴史や逸話も語り切れないほどバリエーション豊かな街なのです。かつては水辺の無機質な倉庫街の様相でしたが、今や洒落たウォーターフロントとして、ファッションやグルメ、感度の高いライフスタイルを送る人々が暮らす高層マンションが立ち並び、スマートシティとして大きな進化を続けているのです。
まさにその中心である‘天王洲’エリアの運河に、オランダやドイツ、ポルトガルなど、ヨーロッパの一場面を想わせるホテルが誕生しています。日本ではまだメジャーではない水上のアートホテルとして生まれたフローティングホテルは、運河に浮く小船のリゾートホテル「PETALS TOKYO」なのです。
日本では未だ馴染みの薄いフローティングホテルですが、それもそのはず、日本では初めての本格的なフローティングホテルとして、2020年11月9日に開業したのです。ホテル名であるPETALとは、ご存知の通り‘花びら’の意味があり、ホテル名の由来には、「水面に浮かぶ蓮の花びら【PETALS(複数形)】のようである」ことで命名されたといいます。
小船の中(客室)に入るとまるで1軒家のようにコテージタイプであることを実感し、隣の音や周辺の騒音も気にせずに、ゆったりと静かに過ごせるホテルは、水辺の光を浴びながら、都心で過ごすリゾートホテルとして気分は最高。好天の日など、朝陽に照らされてキラキラと光る水面を見ながらの朝食は、まさに海外のリゾートにでもいるような錯覚に陥ります。
全4隻(4棟)の船であるホテルルームは、個性的なハンドクラフトの面白さを誇り、4棟に全く異なるデザインであることも滞在の面白さと言えるでしょう。内観はいずれもラグジュアリーであり、一般の高級ホテルとどこも変わらない設備も整っています。ただ、運河をスピードボートや水上タクシー、小型観光船などが通るたびに軽く波が立つのを感じますが、これこそがフローティングホテル「PETALS TOKYO」の醍醐味でもあるのです。
水上アートホテル「PETALS TOKYO」の存在は、周囲の倉庫街が‘水辺とアートの街’として生まれ変わるプロセスに明解な意思表示としての存在感があります。今では倉庫街の壁にもアート作品が描かれ、洒落たカフェやレストランがオープン。隈研吾氏がデザインを監修したイベントスペース、海に浮かぶ「T-LOTUS M」もホテルに並んで浮かんでいます。「PETALS TOKYO」自体にはレストラン、カフェ、ラウンジ、プールなど付帯施設はありませんが、陸に上がれば徒歩圏内には新しい施設が多く、食事にも憩いにも問題はありません。何よりも、滞在中にサービスをカスタマイズしてくれる‘バトラーサービス’が提供され、リクエスト次第では我儘な滞在も可能になるかもしれません。
すっかり春めいた今どき、清々しい朝食も素敵ですが、同時に、お気に入りの食事をテイクアウトして、お気に入りのワインやシャンペンを傍らに、夕陽を見ながら運河を感じる大人のディナーもプライベートで最高です。好天ならば、都心で味わうサンセットタイムも感動的です。
取材・文/せきねきょうこ
Photo: PETALS TOKYO
せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、21年4月、新刊出版。
DATA
PETALS TOKYO
東京都品川区東品川2-1先
📞 050-5491-2681