友人が訪ねて来たら連れて行きたいお気に入りの飲食店が誰にでもひとつはあります。街の人々に愛され、みんなが通い続けるレストランこそ、胸をはって紹介したい“わが街の味”。この連載では、そんな街で人気のレストランを紹介します。今月はおしゃれな飲食店やショップで賑わう住宅街・代々木上原。お気に入りのダイニングとして足しげく通いたい和食店を紹介します。
紹介する街●代々木上原
【和食】 代々木上原 ゆう
野菜をたっぷり味わう
体に優しい料理が主役
旬の食材を三度の食事に取り入れる。当たり前のことなのに、忙しい日常ではなかなかままならない時代になってきた。だからこそ、そんな何気ないことが贅沢に思えてくる。
『代々木上原 ゆう』は駅から歩いて数分と近いが、住宅街へと繋がる静かなエリアにあり、和食をベースに旬の食材を使った料理を食べさせてくれる。それも農家やファーマーズマーケットから仕入れる瑞々しい野菜がたっぷりだ。
ここでは春から初夏にかけても見逃せない季節の味覚がどんどん登場する。例えば、福岡・合馬から届く掘りたての竹の子。こちらは地元の直売所に店主の井本有祐さんが直接お願いして送ってもらうというから鮮度抜群。また、富山県魚津で水揚げされたホタルイカも、大ぶりで味が濃厚。他にも山菜、新玉ねぎなど生産者から直送される食材は、香りも味覚もフレッシュ。井本さんはそれを生かした澄んだ味わいの和食に仕立ててくれる。
「料理を食べ終わって、“体の中からきれいになったよ”と言って
下さる方がいらっしゃるとうれしいですね」と井本さんはふわりと笑う。
イタリアンの名店『リストランテ濱崎』などで腕を磨いた井本さんは、イタリア料理を手掛ける中で出会った日本の美味しい食材に魅力を覚えたという。元々、出汁や和食が好きだったこともあって、自身の店では和をベースにした創作料理をやろうと考えた。そこで銀座の割烹や日本ワインと日本酒を扱う料理店などでも働き、代々木上原に店をオープンさせたのだ。
井本さんの料理は気取らないメニューも多い。ちょっとひねりをきかせた井本流のコロッケやポテトサラダなども登場するのだ。看板メニューは、獲れたてを茹で上げたズワイガニの身をたっぷり使ったカニクリームコロッケだ。添えられたソースも自家製というこだわりよう。たっぷりの玉ねぎの旨みが溶け込んだソースは、余ったらお酒のアテにするお客さんもいるというのもうなずける。
「カニを食べるコロッケです」とは井本さん。
ワインなど、お酒もいろいろ揃えているが、ここで飲みたいのはやはり日本酒。なんと銘柄は島根の『王祿』一筋。食中酒として人気の『王祿』は、ろ過をしない、極力火入れをしないなどその造り方にもフィロソフィーがある。食事に寄り添ってくれる味わいにも、造り手の考え方にも共感を覚えたという井本さんは、『王祿』の様々なラインナップを揃えている。
都心のレストランで働いていた井本さんが、あえて代々木上原を選んだのは、落ち着いて食べてもらえるような料理を作りたかったからだという。
「店をやるなら都心ではなく、
大人のお客様のいる街にしたいと考えていました。 代々木上原は飲食店も多くて、少し賑わいがあるところもいいですね」という。
周辺には高級住宅街が広がる代々木上原。北側には京王線方面へ高級住宅街が続いており、最近では初台、幡ヶ谷とのトライアングルエリアとして人気を集めている。一方、少し足を延ばせば下北沢、駒場東大前、富ヶ谷からの奥渋谷など、散歩気分で歩ける距離に人気の街が集中しているのも魅力。そのせいか小さなギャラリーや人気のベーカリー、カフェ、パティスリー、飲食店が周辺に幅広く点在している。
そんな中でも、ゆったりしたカウンターやテーブル席があり、気取らず旬の美味しいものを食べさせてくれるこの店は、まさにご近所のとっておきの場所といえる。
代々木上原 ゆう
よよぎうえはら ゆう
住所:東京都渋谷区西原3-22-12
電話:03-6804-8997
営業時間:17:00~24:00 (LO22:00)、日曜17:00~22:00(LO21:00)
定休日: 月曜
※掲載価格は税込価格です(2021年4月現在)
(取材&文・岡本ジュン 撮影・マツナガナオコ)