ホテル関係者から、「開業から、もう7年にもなりました」と開口一番に聞かされ、時の経つことの速さに改めて思いを馳せました。京都で初めての最高級ラグジュアリーホテルとして、大きな責任を背負いながらも、次々と誕生する最高級クラスのホテルとは一線を画し、「ザ・リッツ・カールトン京都」は、マリオット・インターナショナルの最高峰ブランドとして、世界中に点在する同名のホテルのごとく揺るぎない高級感を維持し‘リッツ’らしさを誇っています。
鴨川の畔に建ち、二條大橋、東山三十六峰を一望する開放感のある風景の中で、一方では繁華街である祇園や先斗町にも近く、京都らしい新旧の街を味わえるロケーションにあります。しかし一歩、ホテル館内に入るとそこにはプライベートな空気感が漂い、町家を連想させる格子戸や和傘のライティングカバー、七宝文様の白い陶器の壁飾りなど和の意匠が随所に施され、上質な造りのホテルであることが一瞬にして感じられるのも魅力でしょう。
水の流れる入り口のアプローチを過ぎて、ティーラウンジやバーを越え奥に進むと、歴史的建築である‘夷川邸’がその姿を残しています。家主であり実業家として成功を収め、民間者として男爵の位を授かった藤田伝三郎は藤田財閥の創始者でもある人物です。現在の建物は、1908年に総檜造りの別邸「夷川邸」として建てられたもの。その家主であった藤田伝三郎は。藤田財閥の創始者としても知られています。そして、「ザ・リッツ・カールトン京都」開業工事にともない、夷川邸は精密な改装工事が行われ、2013年に改装終了を迎えました。
歴史を振り返ればきりがないですが、ホテルの関係者はこう語っています。「ザ・リッツ・カールトン京都では、美術館さながらに約400点のアートが「源氏物語」の世界観を作り出し、伝統と現代的な要素が重奏する京都の新たな文化の層を優雅に表現しています」と。
客室数は全134室。平均で50㎡の客室内は和洋折衷が品よく融合され、贅沢な広さの客室は落ち着きに満ちています。こうして伝統に触れていると改めて日本伝統の美しさや奥の深さに気づかされます。
滞在の大きな楽しみでもある食事は、イタリア料理「ラ・ロカンダ」の他、会席料理を含む4種の日本料理を展開する「水暉」(みずき)が好評です。とりわけ、現在5年連続でミシュランの1ツ星を獲得している「天麩羅 水暉」(てんぷら みずき)は独創的な世界を楽しませてくれます。金時にんじん、聖護院かぶらなど、京野菜の他にも旬の食材を敏感に、巧みに使い、これまでの天麩羅の世界を超越しているようです。世界遺産となった日本食の奥深い価値を、改めて天麩羅を通して天麩羅を通して感じることができました。
現在、星の数ほどホテルや旅館が点在する京都ですが、開業以来7年が過ぎた「ザ・リッツ・カールトン京都」には、ますます磨きのかかったもてなしにより上質感が漂い、安心して滞在ができる信頼感が伝わってきます。インテリアデザインに優れていることも、温かなもてなしに癒されることも、そして美食が用意されていることも含め、すべてが高級ホテルとして完成度を高めるために‘デザイン’されていると実感しました。
取材・文/せきねきょうこ
Photo: ザ・リッツ・カールトン京都
せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、21年4月、「星野リゾート10の物語」(講談社刊)出版。
DATA
ザ・リッツ・カールトン京都
京都府京都市中京区鴨川二条大橋畔
📞: 075-746-5555
https://www.ritzcarlton.com/jp/hotels/japan/kyoto