友人が訪ねて来たら連れて行きたいお気に入りの飲食店が誰にでもひとつはあります。街の人々に愛され、みんなが通い続けるレストランこそ、胸をはって紹介したい“わが街の味”。この連載では、そんな街で人気のレストランを紹介しています。今月は最近話題の学芸大学駅と都立大学駅のちょうど真ん中あたりに位置する碑文谷地区。人気店がひしめくこのエリアに今年誕生し、またたくまに人気を集めた一軒をご紹介します。

紹介する街●碑文谷

【ハンバーガー】  Burger POLICE

ナチュールワインと合わせて食べる

ハンバーガーの新しい楽しみ

目黒区碑文谷の歴史は古い。不思議な地名の由来は諸説あってはっきりとは分からないが、応永32年(1425年)には文書の中に碑文谷という地名が登場しているという。「江戸のサンタ・マリア聖堂」として建てられた、通称・サレジオ教会があることでも知られ、今は静かな高級住宅街となっている。

こじんまりして上品な外観は隠れ家レストランのようだ。

そんなこの街の一角、碑文谷警察署の脇に今年小さなレストランがオープンした。『バーガーポリス』というちょっとユニークな店名はその立地からきている。一見するとイタリアンかフレンチのレストランのようだが、実はハンバーガーがメイン。しかも、5年連続ミシュラン一つ星を獲得する代官山のイタリアン『TACUBO』の田窪大祐シェフが手がけたセカンド店なのだ。

塩バーガー 1980円
脂の少ない赤身なので、かみしめると肉の旨味がじわっとやってくる。
バターが蕩ける熱々のうちに食べるのが正解。

それだけでも意外性は十分だが、この店のシグネチャー『塩バーガー』が登場するとさらにびっくりする。なぜならば、パティとバンズ、味付けは塩とバターだけという潔さ。このシンプルなおいしさを際立たせるために、ソースやマヨネーズはおろか、トマトもレタスもなし。

ハンバーガー、ことに最近増えているグルメバーガーは、たくさんの具材やソースが一体となっているからどうしても食べにくいという弱点がある。それならすべてを取り去って食べやすくて美味しいハンバーガーを作ればいいじゃないか。その発想から生まれたのがこの『塩バーガー』なのだそうだ。

店内はカウンターとテーブル席。キッチンの窓から調理風景がのぞける。

「ハンバーガーが好きじゃないという人にこそ、

むしろ食べて欲しいとですね」とスタッフも笑顔で話す。

シンプルにそぎ落としただけに、それぞれの具材には強くこだわっている。パティに使われているのは、黒毛和牛の経産牛。部位は噛みしめると旨みが強いネックなどで、手切りでミンチにするから肉々しい旨みをしっかりと感じさせる。

焼きケールと山利のしらす 田中農場の卵の目玉焼き 1540円
ハンバーガーに加えてもうひとつの人気メニューがこちら。濃厚な卵の黄身、
ケールの苦みと甘み、しらすの塩気がワインを呼ぶ。

バンズは、ハンバーガーのバンズで有名なベーカリー『ミネヤ』に特注している。イーストの代わりに酒種を使っているので、風味がよいのが特徴だ。パティを挟む直前にカリッと焼き上げ、仕上げにバターを塗ると、表面はまるでバターロールのように香ばしくハリがある。クラムはバゲットのように空気を含んでモチッとしている。口直しのピクルスが添えられているので、時々つまみながら食べるとちょうどいい。

『TACUBO』のキッチンからやってきたシェフの金垣友也さん

この他にもバーガーは、国産羊を使った『羊サンライズ®バーガー』、鮪の仲卸しで有名なやま幸の鮪のほほ肉を使った『やま幸®鮪バーガー』各1980円、肉の代わりに北海道産の肉厚椎茸を使った『王様しいたけ®バーガー』1760円など、ここでしか食べられないバーガーが揃う。

ソムリエのセレクトが光るナチュラルなワインはカジュアルなテイストでハンバーガーに合う。

ダイレクトに肉の旨みを味わう『塩バーガー』を噛みしめれば、飲みたくなるのはワイン。というわけで、ソムリエが選ぶナチュールワインが、グラスでもボトルでも楽しめる。また前菜はしっかりイタリアンというのもうれしい。イワシのマリネ、白いんげん豆の温サラダ、ブッラータなどワインが進むメニューがいっぱい。

ワインと前菜を楽しんでから、〆にハンバーガーというスタイルもなんだか新しい。

Burger POLICE

バーガーポリス

住所:東京都目黒区碑文谷4-24-16-104

電話:03-6303-1104

営業時間:11:30〜LO14:30、17:00〜LO22:00

定休日:不定休

※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間は変更になることがあります。事前に店舗にご確認ください。

※掲載価格は税別価格です(2021年11月現在)

(取材&文・岡本ジュン 撮影・マツナガナオコ)

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