「Inspiration Life」では、さまざまな分野で活躍されている方のご自宅を訪ね、ルームツアーのように空間を巡りながらお話を伺います。

今回伺ったのは、パーソナルスタイリストで保護犬・保護猫活動にも力を入れる大日方久美子さんが、動物たちの暮らしを一番に考えたご自宅。SUMAU「私たちだって自分らしい家が欲しい!」の連載で家を購入する事の良さに気づいたという大日方さんが、千葉に建てた素敵な一軒家です。

犬・猫たちと暮らすための“動物が遊べる美術館”

――SUMAUの連載をきっかけに、家の購入を前向きに考え始められたと思います。実際に購入を決めた理由は何でしたか?

連載を通して、「家を買ったほうがいい」という気持ちにはなっていたのですが、たくさんの犬や猫と暮らしているので、都内のマンションでは現実的に難しくて。多頭飼育を叶えるには、やっぱり一軒家を建てるしかないと考えていました。その後、コロナ禍でリモートワークが完全に定着したことが大きかったですね。彼は10年以上前からオンラインで仕事をしていたんですが、私自身もオンラインで働ける環境が整って、だったら思い切って田舎に引っ越しても大丈夫だろうという目途が立ったんです。

――家の購入を決めてから最初に取りかかったことは何でしたか?

建築家選びです。2組の建築家の方に「コンペ形式でお願いしたい」と伝えたら、快く引き受けてくれて。私たちのテーマは“動物が遊べる美術館”。そのテーマと予算、エリアの条件だけを伝えて、2組にプランを出してもらいました。最終的に選んだのは、若手ユニット「アーキペラゴ」の提案で、コンペの段階で、象徴的な丸い庭のアイデアを出してくれたんです。

円形の壁に囲まれた一面芝生の庭

――「動物が遊べる美術館」というテーマは、どのように決められたんですか?

まず大前提として、この子たち(犬や猫)を中心に家を建てたい、という思いがありました。それに加えて、私たちは共通の趣味で好きなアーティストの作品を集めていて、アートを飾れる壁の多さや空間の広さも大切で。
動物たちが安心して家の中と外を行き来できる環境と、アートを楽しめる空間――その2つだけが希望でした。それ以上は建築家の方にお任せしたんです。
そして、できあがったこの家そのものが、私たちがこれまで買った中で一番高価な“アート作品”だと思っています。

――土地探しはどのように進めましたか?

サーフィンが好きな彼と一緒に週末は千葉の海で過ごすのが日常で、シェアルームを借りて金・土と滞在していました。私もコロナ以降は車生活に切り替えていたことに加え、東京から千葉の片道1〜1.5時間の移動にも慣れていたので、なじみのある千葉が第一候補になりました。土地の価格が比較的手頃で、広い敷地が現実的に購入できるというのも大きかったですね。

不動産会社と建築家の方が候補をいくつか探してくれて、私たちも一緒に見て回りました。その中で、アーキペラゴの2人が「ここで建てたい」と。ここは300坪ほどの広さで、他の候補地よりゆとりがありました。そして何より、この借景! 庭の奥に見える木々が、まるで我が家の一部のようで、そこもポイントでした。

――家づくりで重視されたポイントはどこでしたか?

犬や猫がのびのび遊べる大きな庭と、絶対に逃げられないような高い壁は絶対条件でした。その分、家の中はとてもシンプルで、収納も最小限。徹底的に断捨離して、本当に必要なものだけを持つ暮らしに切り替えました。

キッチンも鍋が収納に入らないので、外に出しても美しく見えるようなものを選んだり。以前の家では8畳ほどのクローゼットがありましたが、今は1畳ほど。ゲストルームも本当は欲しかったけれど、予算を考えて思い切って削りました。「ゲストルームは諦めて、日常の心地よさを優先しよう」と切り替えたんです。

――家づくりの中で大変だったことはありますか?

大変なことは本当にたくさんありました。前例のないデザインなので、扉ひとつとっても既製品ではなくて職人さんが作っているんです。鍵穴が少しずれると鍵が入らないし、木造なのでは湿気で膨らんだり乾燥で縮んだり……そういうことは、ずっと付き合う必要があるのかなと思っています。ハウスメーカーの家がいかにスムーズにできているか、改めて実感しましたね。
でもその分、見たことのない家ができた。建築家の2人が、既視感のあるパターン化された家ではなく、本当に唯一無二の空間をつくってくれました。

家ごと包み込むように庭から家の中まで続く壁が特徴的

――特にお気に入りのポイントはどこですか?

壁です。庭からリビングへと貫くように伸びていて、まるで家全体をハグしてくれているようになっているので『ハグの家』と名付けました。どんな動物が来ても優しく包み込むような家にしたい、という思いがここに表れていて、すっごく好き。

突き抜けた部分が、自然とキャットタワーのようになって、猫たちが子の上をトトトっと歩いていく姿が本当に可愛いんですよ。
この壁にアートを掛け替える楽しみもあって、“動物が遊べる美術館”というテーマがしっかり形になっているんです。

千葉への移住で価値観も変化。小さな出来事で大きな幸せを感じる毎日

――実際に暮らしてみて、どんな変化がありましたか?

私、田舎暮らしが本当に合っていたみたいで。仕事で東京に行くと、「え! 家が密接している……」って驚くんです。あんなに東京にいたのに、あっけなくこっちの感覚に染まっちゃって(笑)。こちらではほとんど人に会わないし、外を眺めていて、人と目が合うということもないのがとても居心地がよくて。あと“断捨離”したはずの料理をするようになったんです! 東京ではずーっとUberEATSに頼っていたけど、この辺では利用できないので。もちろん焼くだけ、切るだけ、という簡単なものばかりですが、料理をしていることに「人って変わるんだ」なんて自分でもびっくりしています。

――仕事と私生活のバランスは変わりましたか?

すごく変わりました。都内にいた頃は、どこかで「頑張らなきゃ」「もっと働かなきゃ」と思っていたのかもしれません。でも田舎に来てみたら、前みたいにたくさん働いて、たくさん稼がなくてもいいと思えるようになったんです。そういう時期はもう過ぎたのかも。だって家でごはんを食べるだけだから、着飾る必要もないし、ブランド物や宝石が欲しいという気持ちもほとんどなくなって。もしお金を使うなら、庭に木を植えたいとか、外猫たちのためにハウスを作ってあげたいとか、そういう方向に変わってきたんです。

旅行も、犬や猫がたくさんいると簡単には行けないので、その欲もいい意味で手放せています。

アーキペラゴが手掛けた、3Dプリンターで作られたサウナ室

――マインドから大きく変わったんですね。

自分が「心地いい」と感じる場所や感覚、大切にしたいものが、前よりずっと深くわかるようになったんです。この家が大好きだから、ここで幸せに暮らしていけるように、住宅ローンや動物たちの生活を守れるだけの仕事は続けたい。でも、それ以上は求めなくていいんだって思えるようになりました。

昼は、「美術館モード」でソファの前にはアートが見えるようにしています。夜はソファの正面にテレビを置いて、Netflixを観ながら、ポップコーンの元をポンポン弾かせて、コーラを飲んで……これを、彼と「シアターモード」と呼んでいます(笑)。それだけで、幸せすぎるんです。幸せを感じる次元が、いい意味でぐっと低くなった気がしますね。

移住前は少し不安もあったけれど、自分の心が落ち着く場所があることが、こんなにも満たされるんだって実感しています。

開放感あふれるバスルーム。露天風呂気分で“温泉旅館ごっこ”を楽しんでいるそう

アートや自然から季節を感じられる家へ

――保護犬・保護猫の活動をされるうえで、「よかった」と感じるのはどんなところですか?

この子たちが朝・昼・晩、好きなときに庭で自由に遊べること。それが本当に大きいです。それから、東京では頭数制限が厳しくて難しかった一時預かりが、ここでは柔軟にできるようになりました。それは本当にありがたいです。

それに、この土地自体がハザードマップをすべてクリアしている場所なんです。津波や水害などの心配がほとんどないエリアで。

もし災害があっても全員を連れて避難するのは難しいから、家が避難場所になるという視点でも、この土地を選びました。避難所に行けない犬・猫たちがいたら、ここで預かることもできる。そういう意味でも、この場所にして本当に良かったと思っています。

――いろんな面で恵まれた場所ですね。では、この家を今後どのように育てていきたいですか?

この家に住み始めてから、季節に合わせてアートを飾るのがすごく楽しくなりました。12月、初めてのクリスマスにツリーを出してみたんですけど……なんだか全然合わなかったんです(笑)。「これは違うね」となって、クリスマスらしいアートを飾るスタイルに切り替えました。

春には念願の桜の木も植えました。
数年後にはきっと花が咲いてくれるはずで、それもまた楽しみのひとつ。
アートでも、植栽でも、季節を感じられる家にしていきたいと思っています。

大日方久美子さん

インスタグラム:@kumi511976

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