「軽井沢の森を愉しみ、森を識る」をコンセプトに掲げ、進化を遂げながら発展し続けている星野リゾートは、創業の地‘軽井沢星野エリア’で2024年に110年を迎えました。始まりは、1914年開業の「星野温泉旅館」にあります。内村鑑三や北原白秋など文化人が逗留した場として、豊かな自然と文化が織りなす110年を振り返り、記念すべき特別企画がスタートしています。
2005年、時代の流れに求められ、未来の100年を見据えて誕生したのが、新世代型日本旅館「星のや軽井沢」でした。開業にあたり、それまでどこの旅館も成し得なかった‘旅館の定義’を覆し、今後の日本旅館の在り方を見つめました。温泉旅館の伝統や地域性に深くこだわりながら、旅館本位のサービスから、お客様本位のサービスへと転換。さらに‘訪れてこそわかる地域性’の魅力が発揮できる旅館づくりに徹しました。今なお、‘谷の集落’として生まれた「星のや軽井沢」は、星のやブランドの礎として色褪せることのないコンセプトを貫いています。日本の宿泊業や観光業を牽引する担い手として走り続けてきた110年、意味のある道のりを祝しているのです。


軽井沢では間もなく真夏を迎え、年間で最も賑やかな季節を迎えます。そして創業110年の節目この1年を通して、様々な祝賀の行事も開催されています。敷地内では、象徴的なランドスケープである棚田に「棚田ラウンジ」が誕生、6月1日から通年楽しめるオールデイラウンジとして生まれました。ここでは季節に合わせ、信州の恵みを堪能できる「棚田アフタヌーンティー」を提供。一方、大人気の‘星野エリア ハルニレテラス’では、草木染のインスタレーションが登場。さらに社会的責任の一環として、以前から熱心に取り組む星野リゾートの環境経営3要素「ゼロエミッション」「自然エネルギーの活用」「エコツーリズム」を案内してくれるSDG’sツアーも大きい反響です。通常は非公開ですが、この貴重な機会に敷地内の水力発電所も見学してみてはいかがでしょう。
そしてトンボの湯で足湯に浸かりながら楽しめるクラシックコンサート「温泉クラシックス」も企画されています。昭和30年代の「軽井沢現代音楽祭」にちなんで新しい音楽体験をと、いずれも110周年ならではの企画が用意されています。四季を選ばず人気の高い「星のや軽井沢」では、通常でも、それぞれの季節ならではのプログラムが提供されています。涼し気な緑のトンネルや、浅間山から吹き渡る快適な風の舞う夏ならではの軽井沢の華やかさは、唯一無二の魅力です。軽井沢の放つ文化や伝統、土地の持つ力が、世代を超えて‘魅力の避暑地’として格式さえ感じさせてくれます。



魅力的なのは真夏だけではありません。春の新緑、秋の紅葉は特に美しく、標高1003mの軽井沢では、東側に野鳥の森を控え、西側に星野の丘が広がる大自然に包まれ、厳寒の冬も寒い土地ならではの魅力を湛えています。美肌効果の高い源泉かけ流し温泉‘星野温泉 トンボの湯’も冬には魅力倍増です。施設内に造られた宿泊者限定の温泉‘メディテイションバス’は、人の少なくなった冬の軽井沢を訪ねる‘軽井沢通’の醍醐味にもなっています。
とはいえ、大自然と共にある四季の魅力は、環境を正しく継承してきた住人、別荘人、観光客も含め、ホテルや旅館が唯一無二の軽井沢を大切に思い続けた証でもあります。「星のや軽井沢」もそんな環境で現代のリトリート的な存在に生まれ変わり、多くの人を惹きつけながら110年を迎えたのです。


取材・文/せきねきょうこ
Photo/星のや軽井沢
せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数。
Instagram: @ksekine_official
DATA
星のや軽井沢
長野県軽井沢町星野
星のや総合予約:050-3134-8091