友人が訪ねて来たら連れて行きたいお気に入りの店が誰にでもひとつはあります。街の人々に愛される店こそ、胸をはって紹介したい“わが街の味”。この連載では、そんな街で人気のお店を紹介しています。今月は学芸大学で20年以上の歴史を持つイタリアン。いつもそこにあって、温かく迎えてくれる街の食堂です。
紹介する街●学芸大学
【イタリアン】
ピッツァ ビスマルクと
手打ちのパッパルデッレが名物
街で愛されるレストランの条件とは何だろう? 料理が美味しいことは大切だけれど、街に馴染み、なぜか通いたくなるような店ではないだろうか。学芸大学でもう20年以上も営業を続けている『トラットリア ピッツェリア アミーチ』はまさにそんな店だ。まるでイタリアの街角にありそうなゆるりとした空気感が心地いい。
場所は駅からは少し離れた駒沢通り沿い、五本木交差点のすぐ近くで赤いシェードが目を引く。小さなドアを入ると、すぐにピッツァ釜のあるフロア、奥にオープンキッチンとカウンター、さらにその奥に落ち着いたテーブル席のフロアがあって意外にも広い。
アミーチでは、2019年よりVREA PIZZA教会認定(真のナポリピッツァ協会)が認定した本格的なナポリピッツァとシチリアの家庭料理が食べられる。ピッツァを担当するのは、恵比寿の名店『パルテノペ』出身の張本賢史さん。目指すは、サクッと軽やかな生地でも、粉の旨みもしっかりとあり、食べ応えのあるピッツァという。
ピッツァの一番人気は、ドイツの宰相ビスマルクが卵好きだったことに由来する名前を持つ『ビスマルク』。半熟の卵と生ハムがのっているこのピッツァは食べ応え満点。ほとんど全員がオーダーするという看板メニューだ。
「ビスマルクにはトマトソースベースと、チーズベースの2種類がありますが、
うちはトマトベース。季節の野菜をトッピングします」と張本賢史さん。
黒板にならぶ本日の前菜やパスタも気になるが、こちらはオープンキッチンで腕を振るうシェフの佐藤誠さんが担当。手間のかかる手打ちのパッパルデッレがあるのもうれしい。これはフランスパン用の中力粉を使った卵麺で程よい弾力と噛みしめると麺そのものの旨みがしっかりと伝わって来る。ソースは優しい味の海老のトマトクリームで、パッパルデッレの美味しさを引き立ててくれる。
「場所柄もあって、長く通ってくださる常連さんが多いですよ」というのは店主の藤田暁朗さんだ。
だからお客さんも店の使い方を心得ていて、ランチでもカウンターでサクッと飲んでいく人もいれば、日曜日に家族で食事を楽しむ人もいる。そんな気の置けない雰囲気は日常使いにぴったりだ。
このところ人気店が次々とオープンして食のシーンが盛り上がっている学芸大学。その街で住民に愛され、長く生き残ってきた『トラットリア ピッツェリア アミーチ』は、わが街のとってと呼びたい大切な一軒なのだ。
Trattoria Pizzeria Amici
トラットリア ピッツェリア アミーチ
住所:東京都目黒区五本木2-54-14
電話:03-5721-0332
営業時間:11:30~L.O 14:00、17:30~L.O 21:30、
土曜・日曜・祝日12:00~L.O 14:30、17:30~L.O 21:30
定休日: 月曜(祝日の場合は翌火曜)
※掲載価格は税込価格です(2022年10月現在)
取材&文/岡本ジュン 写真/マツナガナオコ