紹介する街●大井町

センスのいい空間と美味しい料理
そして食事に合うワインがある



 賑やかな大井町の駅に近い少し静かな一角にビストロオレイユはある。店内は奥に長く、入口を入ると外国のイカ釣り漁船のものだという印象的なランプシェードが目に飛び込んでくる。店内は仄暗く温かな雰囲気だ。あちこちにアンティークの小物や絵画が飾られ、どこかクラシカルで心地よい空気感がパリの小さなレストランを思わせる。


奥の空間にはカウンターがあり、手前にはテーブル席がある


「ベースはフレンチですが、特にそこにこだわっていません」

という店主の青木守幹シェフはひょうひょうとして気負いがない。フレンチというとどうしても気負いがちだが、そんな人柄を反映してか、店もリラックスできる雰囲気だ。ポーションは「二人でシェアしてちょうどいいように…」というだけにしっかり多めで、見るからにビストロらしい大らかさにうれしくなる


たくさん置かれた小物たちがいい雰囲気を醸 し出している


技法はフレンチそのものだが、日本の旬の食材だったり、その時に自分が食べたいものだったり、美味しいものを食べて欲しいという気持ちがこもっている。だからパスタもあれば、カルパッチョもあるのだ。


平目のカルパッチョ
定番のカルパッチョは季節の魚で登場する。サラダ仕立ての野菜と夏を感じ 焦るとうもろこしが薫る


皿の中はいい意味でオーソドックス。奇をてらったところはなく、料理名を見れば誰もが思い描ける姿で運ばれてくる。でもその潔さこそが食いしん坊の心をとらえて離さないのだ。しっとりと肉汁をたたえた鴨のローストも、シャキッと瑞々しい野菜が爽やかなカルパッチョも、丁寧に調理され、隙のない仕事がなされている。「基本はワインに合う料理なんです」と青木シェフ。


鴨のロースト
外は香ばしく、中はしっとりと柔らかく焼き上げた鴨肉。ポーションは大きいが盛り付けは洗 練されている。


青木シェフの得意分野は肉料理。日によって数種を用意するが、牛肉を使うことはほとんどなく、マストであるのは鴨や羊。その理由は羊や鴨は家庭ではあまり調理しないこと。レストランでしか味わえない料理を楽しんでもらいたいからだという。調理法はその都度変えて、季節やその肉に合ったものをチョイスする。品数を絞っているが、その分だけ季節の食材や仕入れによって入れ替えているからゲストを飽きさせない。


左から、カジュアルに飲めるブルゴーニュの白と赤、熊本の白ワイン


ワインはフランスやニューワールドに混ざって日本ワインも置かれている。「フランスの地名ってよく知らないですよね。でも日本なら、行ったことがなくても聞けばイメージしやすいので」と笑う。確かにワインに詳しくなくとも、日本の地名なら一気に親しみがわくというものだ。自身がワイン好きというだけに、ワインと一緒に料理を楽しんで欲しいという。


間接照明の柔らかな光も趣きがある


大井町は、かつては戦後の闇市の名残を留める飲み屋街が広がっていた地域。城南地区の下町としてにぎわっていたが、しかし今はすっかり城南の副都心といわれるほどに洗練された都会に変身している。それに合わせて洗練されたレストランもどんどん増えていてますます注目のエリアなのだ。



Bistro  Oreille

ビストロ オレイユ

住所:東京都品川区大井1-27-7

電話:03-5728-9266

営業時間:11:30~14:00(LO13:00) 18:00~23:00 土曜17:00~23:00

定休日:日曜

※掲載価格は税込価格です(2022年6月現在)

取材&文/岡本ジュン 写真/マツナガナオコ

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