モデル、ライターを経て、現在は旅や美容を中心とした暮らしにまつわるコラムやエッセイを寄稿している前田紀至子さん。お父様が大のインテリア好きで、ご自身も自然とインテリアに興味を持つように。この連載では、そんな前田さんとともに、毎回1つずつアイテムを決めて探求していきます。

第2回目は、“世界で最も美しい木の家具”と言われ、前田さんも大のお気に入りという「ポラダ」の椅子をピックアップ。輸入家具からオリジナル家具・雑貨など幅広く取り扱うインテリアショップ「ACTUS」にお伺いし、新宿本店家具チーフ山西さんにポラダの椅子の魅力や、椅子を選ぶときのポイントについて教えていただきました。


家族で訪れたACTUSで

衝撃的な出会いを果たす

山西さん「ポラダの一番の魅力は、何と言っても無垢の削り出しからくる曲線の美しさだと思います。と同時に、曲線を綺麗に見せるために、実は直線も多く使われているんです。その曲線と直線の絶妙なバランスのおかげで、現代の日本の住宅にも合わせやすくなっているんですよね。前田さんはもともとポラダがお好きだったんですか?」

前田さん「そうなんです。今ひとり暮らしをしている家には、ポラダの椅子が3脚あります。仕事用にガルボ チェアが1脚、今は廃盤になってしまいましたが、寛ぐための椅子としてドリスチェアとグランド・ホテルも使っています」

山西さん「3脚もお持ちなんですね! どんなきっかけでポラダを知ったんですか?」

前田さん「ティーンの頃からガーリーでロマンティックなものが好きだったんです。そんななか、ある日家族でACTUSさんを訪れたときにポラダを見かけて。一見シンプルなのに乙女心をくすぐる洗練された曲線に、『これぞ真のオシャレじゃないか』と衝撃を受けたんです。父も気に入ったので、それ以来実家の家具の多くはポラダで揃えられています。椅子が増えすぎて、母に『こんなに椅子いらないでしょ!』と怒られたこともありました(笑)」

山西さん「うちも、椅子の置き場所に困っているスタッフは多いんですよ」

前田さん「椅子って、家に何脚あってもいいものですよね。個人的にポラダは、エッジィな部分はあるのに、全体としてはアクがなく、万人に好かれるタイムレスなデザインに魅力を感じています」

山西さん「ポラダの椅子のなかでも、特にお気に入りのものはありますか?」

前田さん「とても迷うのですが、ひとつ選ぶとしたらアイコニックで女性なら誰しもがかわいい!と思うであろうガルボ チェアでしょうか。これを読んでいる皆さんのお家にも、ぜひ一脚置いてほしいと思うくらい、おすすめの椅子なんです」

GARBO CHAIR(ガルボ チェア)¥121,000

山西さん「僕も、ポラダでひとつ椅子を選ぶとしたらガルボ チェアを選びます。ACTUSとして椅子をひとつ選んでほしいと言われても、確実にガルボ チェアは候補に挙がると思いますよ。それくらい、ガルボチェアはポラダらしさを集約した一脚と言えると思います」

前田さん「そうなんですね。私は毎日この椅子を見るたびに『あぁ今日もかわいいわね…』と思ってしまうくらいお気に入りなので嬉しいです。どんな家具とも合わせやすいので、ファーストポラダはぜひガルボ チェアをセレクトしてほしいなと思います」


大切なのはライフスタイルにあった

椅子を選ぶこと

前田さん「ポラダのなかにも数多くの椅子がありますが、選ぶときのポイントはありますか?」

山西さん「選ぶポイントとしては、座面の高さや背面の当たり具合、アームの有無などが挙げられますが、大事なのは用途やライフスタイルにあった椅子を選ぶことです」

前田さん「確かに、ライフスタイルに合わせることは大切ですよね」

山西さん「例えば、食事の後も同じテーブルで寛ぐライフスタイルを希望される場合、椅子にアームがあったほうが寛ぐことができますよね。反対に、食後はソファに移動するライフスタイルの場合はアームがなくてもいいんです。そういったご自身のライフスタイルを考えると、どんな椅子を選べばいいのか自然と見えてくると思います」

前田さん「私は本業がライターなので、椅子に座っている時間がすごく長いんです。だから、私の場合は“座っていることがイヤじゃないか”がすごく重要で。視覚的にも感覚的にも、自分にとってしっくりきて、座り続ける毎日が心地いいものになる椅子を選びたいなと思いました」

山西さん「それはとても大切なことだと思います。もうひとつ例を挙げると、デスクワークでは前傾姿勢になるので、背中と背面の当たり具合は考えなくてもいいと思います。さらに言えば、前傾姿勢だと浅く腰掛けるので、座面の高さも許容範囲が広くなります」

前田さん「そう考えると、デスクワークで使う椅子は背面の素材や座面の高さの制約が少ないので、デザイン面の選択肢が増えそうですね。私は、仕事用の椅子をその日の体調によって変えているんです。高めの椅子に長時間座ると肩が張ってきますし、かといって低い椅子に座っていると首が疲れてきて。そうやって、体調に合わせて椅子を変えれば身体が凝り固まることもないし、気分転換にもなると思います」

山西さん「ちなみに、椅子の座面の高さなどの数値はアテにならないことが多いんですよ」

前田さん「そうなんですか!」

山西さん「例えばクッション性がある座面は座ると少し沈みますが、板の座面だったら沈まないですよね。数値上は同じ座面の高さの椅子でも、デザインや素材によって実際に座ったときの高さは違ってしまうんです」

前田さん「そう考えると、ネットで椅子を買うのはやめたほうがよいのでしょうか?」

山西さん「そうですね。椅子は家具のなかで一番人間の身体に近いものなので、実際に見ないで買うのは避けたほうがいいと思います」

前田さん「なるほど。ライフスタイルを踏まえたうえで、実際にお店に行って座り心地を確かめることが大事なんですね。長く使う椅子だからこそ、自分にあった椅子を選びたいですね」


ブランドの垣根を越えて

自分好みにコーディネート


前田さん「私の家では、ポラダをバカラの照明やカルテルのマドモアゼルなど、少しデコラティブなものと合わせているのですが、椅子をコーディネートするときのポイントはありますか?」

山西さん「ACTUSの場合は、“テーブルと椅子を自由に組み合わせてほしい”という考え方なんです。もちろんポラダだけでコーディネートするのもいいですし、あえて他のブランドに合わせてもいいと思います。ACTUSのカタログでは、ポラダを日本のお祭りを背景に撮影をしたこともあったんですよ」

前田さん「面白いですね。どんな場所にも溶け込みながら、存在感を放つポラダだからこそできることですね。先ほども仰っていましたが、やっぱりポラダの魅力はどんな空間にも合うことなんですね」

山西さん「そうですね。あとは、テーブルとコーディネートするだけでなく、ただ1脚置くだけでも空間をスタイリッシュに演出できると思います。椅子って、使えるし飾れる、家具の魅力が集約されたアイテムなんです」

前田さん「なるほど。そう考えると、椅子はある意味インテリアの主役なのかもしれませんね。嵩張らないのに存在感があって、かつ華があって愛される存在。これからも、そんな椅子を探していきたいなと思いました」



(取材・文/SUMAU編集部 撮影/古本麻由未)


□取材後記

住まいを考えるということは、自分が大切にしたい家具を選ぶこと。今回「アクタス」を訪れて、自分にとってなくてはならない椅子が「ポラダ」の「ガルボチェア」なのだと再認識して、改めてそう思いました。

長年に渡って、私や家族がこよなく愛している「ポラダ」は、木目の美しい無垢の木を使用して、「世界で最も美しい木の家具」と称されているイタリアの家具メーカー。それゆえに長きに渡って使えば使うほど、なんとも愛らしくも品のある「味」が出るのも魅力の一つなのですが、今回山西さんに伺ったところによると、住まいやインテリアが一つの文化として成立している欧米では、「ポラダ」のような家具は、座面の布を張り替えたりして、何代にも大切に受け継がれてゆくのだとか。

実際に私が愛用している、(今では廃盤になってしまった)ベンチタイプのグランド ホテルやガルボチェアは一度布を張り替えて、気分一新したことでより一層愛着が増しました。

そんな風に、購入する時には少し勇気が必要かもしれないけれど、その分一生大切に経年変化を愛せるもの。そして、いつか増える家族に受け継いでいきたいもの。そういった「使える宝物」を少しずつ吟味して増やしていくことこそが、住まいを、そして、暮らしを、ひいては人生に彩りを与える秘訣になり得るのかもしれませんね。

さあ、次はどんなインテリアを迎え入れようか。何とも愉しい悩みです。

前田紀至子

前田紀至子

インスタグラム:@ki45m

Note:https://note.mu/kishikomaeda

ACTUS新宿店

普段使いの雑貨から、一生モノのインテリアまで、北欧、イタリアを中心としたヨーロッパ各国をはじめ、北米、アジア、そして日本各地で生産、セレクトした製品がそろうライフスタイルストア。

住所:東京都新宿区新宿2-19-1BYGSビル1・2F

時間:11:00~20:00

定休日:不定

HP: https://www.actus-interior.com/

Share

LINK