部屋にお気に入りの絵画を飾るだけで、空間の雰囲気が変わったり、気持ちが豊かになったりするもの。 そんな「アートと暮らし」をつなぐ体験を広げるべく、アーティストやアート作品の情報を集約したオンラインプラットフォーム「ArtSticker」を運営する「The Chain Museum」とともに、3回にわたって生活を素敵に彩るアートの連載をお届けします。
過去の記事
Vol.01 好きから始めるアートのある暮らし|アートアドバイザーが教える自分に合った作品の選び方
Vol.02 アートと人をつなぐ拠点|麻布台ヒルズ「Gallery 舞台裏」で学ぶギャラリー鑑賞のヒント
アートを家に迎えるとき、どこに飾ればいいのかと迷う方は少なくありません。第3回となる今回は、暮らしの中でアートを楽しむための飾り方にフォーカス。自然光の使い方、インテリアとの色合わせ、額装の選び方、複数点を並べるときの構成まで、気になるポイントをアートコンサルタントの川越地球さんに聞きました。

ギャラリーディレクター・アートコンサルタント 川越地球(かわごえ・てら)さん
武蔵野美術大学空間演出デザイン学科出身。(株)アートフロントギャラリーにて、ホテル/マンション/オフィスなどのアートコンサル、大地の芸術祭 / 瀬戸内国際芸術祭などの芸術祭企画運営、ギャラリーでの作品販売業務を経験。その後、RICOH ART GALLERYのギャラリー立ち上げを経て、2023年4月よりThe Chain Museumに参画。 主にギャラリー事業の展覧会キュレーション・運営、法人向け事業のアートコーディネーションなどを担当。

The Chain Museumとは
「気付きのトリガーを、芸術にも生活にも。」 をミッションに掲げる日本のアート企業。 アーティストと鑑賞者、そしてアートと生活をつなぐプラットフォーム「ArtSticker」やアートギャラリーを運営する。ほか、個人宅や商業施設、オフィスなどの空間に向けたアートの企画・キュレーション・コーディネートを行う。
「ArtSticker」では、価格や作品のテイスト、色合いなど、さまざまな条件から好みのアートが見つかるほか、日本各地の展覧会やアートイベント、芸術祭などアートに関する情報が集約されている。
The Chain Museum https://www.t-c-m.art/
ArtSticker https://artsticker.app/

アートを飾る場所の選び方
――家の中でアートを飾る場合の、基本的な考え方を教えてください。
それぞれの好みや生活環境によって変わると思いますが、リビングや仕事部屋など生活の中で「よくここにいるな」という場所から考えていくと、アートの置き場所が自然と見えてくる気がします。
また、ゲストの多いお家だったら、玄関や客間に華やかな絵があると、一枚の作品から自然と会話が生まれることがあります。個人で楽しみたい方は、仕事部屋にクリエイティビティを刺激してくれる作品を置いたり、本当に好きなものを個室に飾ったり。特に寝室はリラックスする場所だと思うので、パーソナルな感性と共鳴する作品があると落ち着くのではないかと思います。

――光の当たり方はどう考えれば良いでしょうか。
照明は本当に大切で、あるかないかで作品の見え方が全く変わることもあります。 新しく家を購入される方なら、絵に合わせて照明の位置を決めることもできますが、多くの方は今の住環境があると思うので、まずは照明のある明るい場所に展示するのが現実的かなと思います。
小さな立体作品なら、卓上ライトのそばに置いて光を当てるのもひとつの方法です。 天井照明が首振りできるタイプなら、それを活用して作品全体に均等に光が当たるようにすると、絵がとても綺麗に見えます。

ただ、照明をしっかり調整した環境も美しいですが、いちばん手軽で作品を綺麗に見せてくれるのは自然光なんです。アートだけじゃなく、インテリアや空間そのものを美しく見せてくれるので、直射日光が当たらず、自然光が柔らかく入ってくる場所を選ぶのが良いと思います。
作品の素材にもよりますが、直射日光による劣化は防げないので、直射日光は避けてください。 最近は UVカットのアクリルやガラスの額もあるので、どうしても日光が入る場所に飾りたい場合は、そういった方法で対応することもできます。
――絵を飾る場所がないという方におすすめできる場所はありますか?
ギャラリーや美術館だと、壁に作品がかかっていて、きれいに見えるというイメージがあると思いますが、コンソールや棚の上に立てかける飾り方もすごく素敵です。
床にラグを敷いて、その上に大きめのアートを直置きしているコレクターの方もいますし、ご自身がよければ、壁にかけるだけが正解ではないのかなと思います。
壁に穴をあけられないから飾れない、という場合は専用の両面テープも市販されていますので、活用してみてください。
それからアートというと平面作品を思い浮かべる方が多いと思いますが、立体作品なら飾り方の幅が広がります。
最初から選択肢を狭めすぎず、いろんなタイプのアートから自分の生活や住んでいる環境に合うものを探してみるのも楽しいですよ。実は飾れる場所は、思っているよりずっとたくさんあるはずです。

インテリアとアートのバランス
――絵とインテリアの配置や色のバランスはどう考えれば良いでしょうか。
配色から考えるのは、アートを選ぶときにすごくわかりやすい方法だと思います。 自分が何を好きなのかまだはっきりわからないけれど、アートを飾ってみたいという方もいらっしゃいますよね。そういう時は、お手持ちのインテリアに合う色から選んでいくのもひとつの手です。
例えば、ソファが緑なら補色は赤なので、赤が入っているアートを取り入れてみる。 難しく考えなくても、リビングや食事をする場所なら寒色より暖色の方がご飯が美味しそうに見えたり、空間があたたかく感じられたりします。逆に寝室なら、あまり派手な色よりも青や緑など落ち着いた色合いの方がリラックスできますよね。

位置関係は、本当に好みによると思います。 私は余白のある空間が好きなんですけど、あえてマキシマムにアートをたくさん飾ったり、家具と近い距離で作品を置いたりしても、それはそれですごく映えると思います。
ギャラリーや美術館だと、目の高さに合わせて、床から1450〜1500mmくらいの位置に飾ると一番見やすいと言われています。でも、お家の環境って座ったり立ったり、いろいろ動く場所なので、そこまで厳密に気にしなくてもいいのかなと。 自分が「ここにあると落ち着く」「ここにあると元気になる」と感じる位置で選んでいただくのが、いちばんだと思います。
あとは作品全体がちゃんと見える距離感を、どこか1か所でも確保できると、飾った時の印象がすごく良くなります。

額装選びもアートを飾る醍醐味
――額装するかどうかは、どう判断すべきでしょうか。
版画や写真など、額装が必要な作品はあります。でも、作品によっては、側面まで表情が出てるものや素材感が魅力で額装しない方が、見え方が綺麗なものは額装しない方がいい場合もあるかと思います。住空間でお料理するときの湯気が当たってしまうなど、劣化が気になるポイントがもしあるのであれば、額装した方が安心です。
その辺は作品の素材や表情で判断して決めるのがよいですが、どう判断すべきかわからないですよね。そうした場合はアートの購入先に気軽に聞いてみて良いと思います。
――額装する際は、専門店に相談するのが一番でしょうか。
プロに相談すると安心ですが、その前に額装をご自身で探すのも、アートを飾るときの醍醐味だと私は思います。作品を引き立たせるにはシンプルな黒い額がいいのか、ナチュラルな白木っぽい額装がいいのか。もしくは豪華な装飾がある額装がいいのか……好みもあると思うので、作品を選ぶのと同じくらい、額装を自分で考えてみるのは楽しいプロセスです。
その上で額装屋さんに相談に行くのも良いと思います。保護するだけの目的とは考えずに、アートをよりよく見せるという観点で楽しんで探してみてください。
――複数のアートを並べて飾るとき、色やサイズの考え方を教えてください。
サイズがバラバラの絵を横一列に並べる場合は、センターの高さをそろえると綺麗に見えやすいです。 タテに並べる時も、両端のラインをそろえると全体が整って見えます。ただ、コラージュのようにバラバラに飾っても、それはそれでとても面白くて、特徴のある空間を演出できます。飾り方は本当に自由でいいのかなと。
あとは、作品同士に通じるものを見つけて並べてみるのも楽しいです。 美術館やギャラリーでは、私たちのようなディレクターやキュレーターがテーマを持って作品を並べていますが、同じことを自分の家でできるって、住んでいる人にしかできない贅沢なこと。
複数点アートがあるなら、関連付けて展示してみたり、構成を考えてみたりして、自分だけの展示空間をつくるのは、とても面白いと思います。

――改めて、お部屋にアートを取り入れる魅力はどういうところにあると思いますか。
私自身、もともとアートが好きなので、好きな作品が自分のいちばん長く過ごす空間にあるというのは、純粋にすごく幸せなことだと感じています。
それ以外にも、絵って人の気持ちや思考を切り替える効果があるんですよね。
当社のお客様はさまざまいらっしゃいますが、例えばオフィスの会議室に刺激的でクリエイティブな思考が生まれるような作品を置くと、社員の方同士の会話が活発になった、思考の切り替えがしやすくなったという声もいただきます。住空間でも同じで、気持ちが明るくなったり、生活を彩ってくれたり……それがアートのすごくいいところだと思うんです。 季節ごとに作品を入れ替えると、空間の雰囲気が変わって季節を感じられますし、家具だけではなかなか変えられない部分をアートが担ってくれます。
それから、深いコンセプトがあるアートもあって、一見しただけではわからないけれど、作家の意図や背景を知ると「そういうことだったんだ」と発見がある作品もあります。 そういう作品を導入すると、感じ方に正解がないからこそ、新しい考えに出会えたりする。 生活の中にそうした要素が入ってくるのは、とても豊かなことだと思っています。

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