フランスの暮らしとデザインを紹介する連載の18回目は、女優のイネス・ド・ブロワシアさんとデザイナーのピエルジル・フルキエさんが住む、パリ郊外の一軒家をご紹介します。

Inès de Broissia(イネス・ド・ブロワシア)/パリ7区育ち。エコール・ペリモニーで演技を学んだ後、複数の劇団で活動を重ねる。劇団「Femme Totem」を共同設立し、代表作に『Naissance(s)』『Un enterrement de vie de jeune fille』など。2024年にはひとり芝居『Feu Mamie』をテアトル・ラ・フレーシュで上演。脚本執筆やモデルとしても活躍する。
www.inesdebroissia.fr 
Instagram: @debroissiaines

Piergil Fourquié(ピエルジル・フルキエ)/パリ生まれ。ENSAAMA(オリヴィエ・ド・セール)でプロダクトデザインを学んだ後、英国バーミンガム工芸美術大学(BIAD)にてデザインの学士号を優秀な成績で取得。アリク・レヴィのスタジオを経て、フィリップ・スタルクのデザイン部門に参加。2015年に自身のスタジオを設立。エコール・ブルーでデザインの教鞭も執る。
www.piergil-fourquie.fr
Instagram:@piergil.design
3階から見下ろす緑豊かな庭。

 女優であり脚本家でもあるイネスさんと、デザイナーのピエルジルさんが3人の子供、2匹のうさぎと暮らすのはパリの南、ヴィルジュイフ市にある一軒家だ。この街に引っ越してきたのは10年前、2人目の子供が生まれるタイミングで家を探したという。「以前はパリ18区に住んでいました。いろいろな物件を見ましたが、ここはパリに近いのにそれほど高くなかったんです。見に来たのが夏で、すごく印象がよかった。庭もあって」とイネスさん。「私は他にも気に入った物件があったのですが、ピエルジルがとても厳しくて(笑)」。

ダイニングテーブルはピエルジルさんのデザイン。ドラム缶をカットし、中に50kgの砂を入れて脚に。天板はイケア。椅子はカルテルのものでフィリップ・スタルクのデザイン。

 家は1945〜46年頃の建築で、入居時はほとんど工事をせず、家具を入れるだけでよい状態だったという。もともと2階建てだったが、3人目の子供が生まれることをきっかけに、3階を増築。「ヴィルジュイフ市に許可を取るため、建築計画や設計図を送り、何度もやりとりをしました」とイネスさん。現在は1階にキッチン・ダイニング・リビング、2階に3人の子供部屋、3階に夫婦の寝室とピエルジルさんのオフィスという間取り。広さは3フロアで約150㎡。地下にはカーヴ(貯蔵室)がある。

玄関右のスペース。グレーの屏風はピエルジルさんのデザイン。左のチェストはピエルジルさんの祖母から受け継いだもの。「ローテーブルは足を切ってこの高さにしました」(イネスさん)
着物風のカーペットもピエルジルさんのデザインで「イネス」と妻の名をつけた。

 インテリアのテーマは「ミックス」。ピエルジルさんがデザインした家具やカーペット、著名なデザイナーの家具やアート作品、そして古いものの3つが混在している。「ピエルジルはミニマリストで、ものを買うのが嫌い。でも私はオブジェが好きで、気に入ったものが見つかると買ってしまうのです」とイネスさんは笑う。

左・イネスさんが母親から譲り受けた、18世紀のとティーセットとアンティークの皿。上田右・アートはパリが拠点のデザイナー、ブルレック兄弟の作品。椅子はイタリアのドリアデの「ローリーポーリー」。ロンドンを拠点に活動する家具デザイナー、フェイ・トゥーグッドのデザイン。

 イネスさんのブロカント好きは母親譲りだ。「子供の頃、週末はよく母とブロカントに行きました。家にはブロカントで見つけた古いお皿や食器、お母さんからもらったものもたくさんあります」

ピエルジルさんが設計したキッチン。奥の鍋のフォルムの黒板は備忘録に使用。
ドイツのデザイナー、ドロテア・ベッカーが1970年に発表した「ウーテン・シロ」。ちょっとした小物をいつでも手の届く場所にまとめておける便利な収納パネル。「父がオフィスで使っていたものを譲り受けました」(イネスさん)

 キッチンはIKEAをベースにピエルジルさんが自らデザインしたもの。「2人ともものづくりが好きで、工事も好き。家にはピエルジルがデザインした家具やオブジェがたくさんあります。私の舞台の背景グラフィックも手伝ってもらっています」

左・朝のコーヒーを淹れるイネス。右・朝食のテーブル。中央のケーキと右のクレープはイネスさんの手作り。

 朝は子供たちを送り出してからコーヒーを一杯。その後にピエルジルさんは家で仕事をすることが多く、木曜日は私立の高等デザイン学校、エコール・ブルーへデザインを教えに行く。イネスさんは外での仕事が多く、火曜日は演劇を教えている。ピエルジルの祖父は料理人だったことから、家では彼が夕食を作るのが日課。19時ごろに家族全員がダイニングに集まるのがこの家のリズム。イネスはお菓子を作るのが得意週末はフォンテーヌブローの森へ散歩に出かけることが多く、天気が悪い日は友人や子供たちの友達を家に招く。

左・3階のオフィス。3Dプリンターと大型モニターが並ぶ、ピエルジルさんの創作空間。右・黒いオブジェは2013年に設立された若手デザイナーを中心としたデザイン集団FFD(Fédération Française de Design)のためにデザインしたオブジェ「島」。
つなげてシートを増やせるユニットソファ、テーブルもピエルジルさんの作品。床はOSB合板を使用。_「本来は上にカーペットや木の床材を貼るのですが、このままで綺麗だと考えてそのままにしました」(イネスさん)

イネスさんはパリ7区、ピエルジルさんは13区の生まれ。2人が初めて出会ったのはイネスさんが17歳、ピエルジルさんが19歳のときのことで、その後9年後に再会し交際がスタートした。結婚式はイネスさんの父親の故郷、ジュラ地方で行った。「ジュラ地方に家族が持っている家があり、そこでパーティをしました。今年で結婚20年を迎えるので、またイベントを企画しようかと考えています」とイネスさん。

左・3階のベッドルーム。白い棚はイケアで、オフィスとの仕切りにもなっている。右・天窓から光が差し込む3階のバスルーム。下の棚もイケア。
左・2階の踊り場にあるセルジュ・ムイユのスリーアームランプ。右・2階のバスルームはグリーンのタイルで仕上げた。

 バカンスはカンボジアやタイなど東南アジアへ、家族で1ヶ月の旅に出る。「2人ともフリーランスなので、休みが取りやすいのはいいですね」。

 将来の夢を聞くと「子供が大きくなったら海か山にバケーションハウスが欲しい。映画や演劇の新聞を作りたい。そして日本にもブラジルにも行きたい」とたくさんの答えが返ってきた。

少しずつ作り上げてきたヴィルジュイフの住まいで、イネスさんとピエルジルさん一家はこれからも豊かな物語を育んでいく。

左・庭に暮らす2匹のウサギ。灰色のウサギはバンディ、黒はシンバ。右・大きなプランターではトマトやズッキーニを栽培。「高さがあり、かがまなくていいので手入れが楽です」

撮影/井田純代(Sumiyo Ida)

(プロフィール)

(文)木戸 美由紀/Miyuki Kido 文筆家

女性誌編集職を経て、2002年からパリに在住。フランスを拠点に日本のメディアへの寄稿、撮影コーディネイターとして活動中。株式会社みゆき堂代表。マガジンハウスの月刊誌「アンド プレミアム」に「木戸美由紀のパリところどころ案内」を連載中。

Instagram:@kidoppifr

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