部屋にお気に入りの絵画を飾るだけで、空間の雰囲気が変わったり、気持ちが豊かになったりするもの。 そんな「アートと暮らし」をつなぐ体験を広げるべく、アーティストやアート作品の情報を集約したオンラインプラットフォーム「ArtSticker」を運営する「The Chain Museum」とともに、3回にわたって生活を素敵に彩るアートの連載をお届けします。
前回の記事▶好きから始めるアートのある暮らし|アートアドバイザーが教える自分に合った作品の選び方

第2回のテーマは、アートと人をつなぐ場所であるギャラリーの楽しみ方。街のあちこちにあるものの「入っていいのかな」と戸惑う人も多いですが、実は美術館とは違い、作品を購入できたり、作家と直接対話できたりと、気軽にアートを体験できる身近なスポットです。
今回は、麻布台ヒルズ内の「Gallery 舞台裏」を訪ね、初心者はもちろんギャラリーに足を運んだことがある人でも新たな視点で楽しめるポイントや、作品購入の流れまで教わりました。

Gallery 舞台裏 ギャラリーマネージャー 筒井瑠璃(つつい・るり)さん
アーティストのアシスタントを経験したのち、(株)Smilesに入社。PASS THE BATONにてディスプレイ制作とCSを担う。2021年7月よりThe Chain Museumへ出向、REAL by ArtStickerの実務に携わる。現在はGallery舞台裏のギャラリーマネージャーを務める。
ギャラリーは気軽に立ち寄れるアートスポット
――ギャラリーへ足を踏み入れるのに躊躇されている人にアドバイスはありますか。
ギャラリーは少しハードルが高いと感じる方も多いですよね。実際、お客様から「緊張して入りづらい」という声をいただくこともあります。でも、ほんの少し勇気を出して一歩踏み出していただくと、アーティストの考えに触れたり、新しい作品との出会いがあったり、スタッフとの対話から思いがけない発見が生まれたりします。

――ギャラリー舞台裏の特徴を教えてください。
舞台裏はプラットフォームとして、様々なアーティストやギャラリーと協働しているスペースです。例えば現在(取材時)はCADAN(日本現代美術商協会)に所属している全国のギャラリーと共に展示をする「CADAN舞台裏」というシリーズ企画を展開中です。コンテンポラリーアートの中でも幅広いアーティスト、ジャンル、コンセプトの作品に触れられるので、来るたびに印象が違う、と言っていただくこともあります。 商業施設の一角にあり、開けた空間で入りやすい雰囲気なのでお買い物のついでにふらっと立ち寄っていただきたいですね。
――ほかに、どういったギャラリーがおすすめですか。
SNSやアート系の情報サイトで目に留まった作品の展示を見に行くのは、きっかけとしてとても良いと思います。実際に、展覧会の情報が掲載されているArtStickerなどのサイトで、情報を知って来ていただく方が非常に多いです。
また、通りがかりで「綺麗だな」「なんだか気になる」という直感でも十分。小さなフックを頼りに一歩踏み出してみると、思いがけない出会いがあります。
お出かけ先で「この辺にギャラリーはあるかな」と覗いてみるのもおすすめです。Gallery 舞台裏であれば、六本木も近いので美術館に行って、さらに近隣のギャラリーにも足を運ぶなど、エリア内で1日アートに触れて過ごすこともできますよ。
――美術館とギャラリーの違いは何でしょうか。
ギャラリーに展示している作品は、ほとんどが購入可能というのが大きな違いです。気に入った作品を、コレクションとしてお迎えできるのは、ギャラリーならではの魅力です。また、パフォーマンスなど展示方法によっては有料になることもありますが、入場は無料の場合が多いのでとても気軽です。
そして、ギャラリーはフレッシュなアーティストや新しい作品との出会いの場でもあります。今の時代の空気感を、アーティストの視点や作品のコンセプトから感じることができます。
――購入目的でなくても入って良いのでしょうか。
もちろん大丈夫です。アーティストにとって、多くの人に作品を見てもらうのは大きな喜びでもあります。見る人が、買うか買わないかはまったく自由です。
作品を見たことで心に何かが残り、そこから新しい感覚が生まれる。その有機的な広がりを、アーティストの皆さんも望んでいると思います。

スタッフやアーティストとの対話をヒントに鑑賞を深める
――鑑賞するときのポイントはありますか。
初めての方は戸惑うこともあると思いますが、気軽にスタッフへ声をかけていただくのがおすすめです。「これってどういう意味ですか?」という素朴な疑問こそ大歓迎です。アーティストが在廊している場合も同じで、素直な疑問や感想をそのまま伝えていただいて大丈夫です。
もちろん静かに向き合いたい場合は、無理に話す必要はありません。展示空間全体にコンセプトのヒントが散りばめられていることもあります。気になる作品をじっくり観察して、アーティストの意図を想像してみるのも楽しい時間です。


例えば、現在(取材時)のCADAN舞台裏企画 vol.3、秋山珠里・服部憲明による二人展(ギャラリー:Sprout Curation)「光の後始末〈ep.3〉」で言うと秋山さんは古代ローマ時代から使われるエンカウスティークという技法で蜜蝋を使った絵の作品が主です。一方で、服部さんはアルミ板を使い、プログラミングした図をレーザーで焼き削るという新たな技法に挑戦しています。相対的な技法ですが、作品を観察するうちに、表に観えないものを表出させようとする考えなどが共通していることに気づきます。
もちろん、考え方に正解はないので、自分はこう感じる、というものを大切に鑑賞してみてください。
――レセプションが開催される場合、参加できるのでしょうか。
レセプションによりますが、フリーに入れる場合はぜひ、参加してみてください。予約制の場合もあるので、まずはSNSやサイトで情報をキャッチすることが大切です。アーティストや作品のファンが集まる場なので、同じ趣味の友人ができるきっかけにもなるかもしれません。
ギャラリーで過ごす時間は “自分と向き合う時間”
――ギャラリーで素敵だなと感じる作品があったら、そのあとどのようにすればよいのでしょうか。
プライスリストが用意されている場合が多いので、実際に購入を検討いただくこともできます。それに至るまでの不安な点、例えば支払いや配送の方法など、細かな部分まで確認いただいてからジャッジいただくこともできます。
どういう飾り方がいいか迷う場合も、一緒に展示スペースのイメージをすり合わせて、不安な要素をクリアにしていきます。

――会期が終わってから「あの作品、やっぱり良かったな」と思った場合、何か方法はありますか。
展示が終わっていても、販売可能な場合がありますし、アーティストが手元に持っている別の作品をご提案できることもあります。また、「来年こういう展覧会を予定していますよ」といった、今後の動きをご案内できることもあるのでギャラリーに相談してみてください。
ほとんどのギャラリーは、アーティストの作品やスケジュールをよく把握しています。展示後でも広がりのある提案ができるのはギャラリーだからこそです。
――ギャラリーに足を運ぶことで日常にどんな良い変化があると思いますか?
作品が気になってSNSをフォローしているけれど、実物を見たことがないという方も多いですよね。でも、実際に作品を目の前にすると、テクスチャーやスケール、周囲の環境との関係性によって、まったく違う印象になることがよくあります。
そしてそれは、観る人の状況や感情によっても違った表情を見せます。ギャラリーは 自分自身と対話する時間を持てる場所です。
生活の中のちょっとした隙間時間に、そんな時間を持てるのはとても素敵なことだと思います。

Gallery 舞台裏
住所: 東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA B1F
営業時間:11:00 ~18:00
休業日:月曜 ※祝日の場合は翌日
入場料/観覧料:無料
HP:https://artsticker.app/ja/butaiura
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