番外編の今回は、アフリカ大陸の北西にあるモロッコの街、マラケシュからお届けします。日本から直行便がないモロッコは、遠いデスティネーションに感じるかもしれません。実はパリからマラケシュへは、約3時間のフライトで到着。3〜4日の旅にちょうど良い距離です。古来より北アフリカを中心に住んでいたベルベル人の言葉で「神の国」を意味するマラケシュ。異国情緒あふれる美しい街へいざ、旅立ちましょう。

メディナの中心に位置するスーク。アラビア語で市場を意味し、細い道の両側に店が並ぶ。

伝統建築をリノベートした美しきリヤドに泊まる

インテリアデザイナーのヴァレリー・バルコウスキーが営むリヤド「ダル・カワ」。

 モロッコの中央部にある街、マラケシュは旧市街と新市街に分かれ、メディナと呼ばれる旧市街は1985年に世界遺産に登録。赤土の城壁に囲まれたエキゾチックな街並みは美しく、ショッピングやグルメも堪能できる。宿泊はリヤドがおすすめだ。リヤドとは庭園や中庭を持つ伝統建築の邸宅を改装した宿のことで、部屋数は少なく、モロッコらしいインテリアとあたたかいもてなしを楽しめる。ベストシーズンには屋上で朝食やミントティーをいただきながら、静かな時間を過ごせる。

リヤド・ジャルダン・スクレ

(左)2階の回廊から緑豊かな中庭を眺めるのも一興。(中)モロッコスタイルの朝食。モロカンクレープ、フルーツなどがたっぷり。(右)アンティークの家具や雑貨を美しく配置。

 16世紀に裕福なマラケシュ人が建てた邸宅をパリのカップルが改装し、2015年からリヤドとなった「ジャルダン・スクレ(シークレット・ガーデン)」。モザイクタイルの床や壁の美しい伝統工芸と、オーナー夫妻が集めたモロッコのアンティーク家具が調和する。中庭には熱帯植物が茂り、リヤド名でもある「秘密の庭」を擁する宿だ。1階と2階に客室5部屋、スイートルームが2部屋ある。屋上で小鳥のさえずりを聞きながらいただく朝食は最高。

Riad Jardin Secret

リヤド・ジャルダン・スクレ

HP:https://www.riadjardinsecret.com/

Instagram:@riadjardinsecret

スークをそぞろ歩いてモロカン雑貨探し

良質なオリジナル雑貨を揃える「ヒシャーム・ホーム」。

 宿にチェックインをしたら、モロカン雑貨を探しにスーク(市場)へ行ってみよう。値札がついていない店が多いスークでは、価格交渉が必須。英語かフランス語は通じるが、慣れない場合はなかなかハードルが高い。そこで、明朗価格で買い物ができるショップをご紹介!

ファッション&インテリア雑貨

ヒシャーム・ホーム

空間に温かみを添える木製のキッチン用品やインテリア雑貨、美しいテキスタイルを用いるバブーシュはお土産におすすめ。レザーと椰子の葉のコンビバッグは人気商品。

デザイナーの石田雅美さんとヒシャームさんご夫妻が営む雑貨店「ヒシャーム・ホーム」。デザインも質もいいオリジナルバッグやバブーシュ、インテリア雑貨が見つかる。

Hisham Home

ヒシャーム・ホーム

Instagram:@hichamhome_frommichi

バブーシュ

ベンザロ・ジャファル

色とりどりのバブーシュ。素材や形によって価格が異なる。

 モロッコ独自の皮スリッパ、バブーシュ専門店「ベンザロ・ジャファル」。この店の商品は値札がついているから安心。毛糸のポンポンをサービスでつけてくれるのも嬉しい。

Benzarrou Jaâfar

ベンザロ・ジャファル

住所:Kissariat Drouje No.1 Souk el hannaa No.15

インテリア雑貨、グラス

ファシル

3軒が隣り合い、左に鏡、中央にグラスなどのガラス製品、右にメタルの雑貨を販売。

 「ファシル」はガラス、鏡、香水瓶など職人のハンドメイド雑貨を良心的な価格で販売。オーナーは親日家。安心してショッピングが楽しめる良店。

Facil

ファシル

住所:Souk Kh’chachibiya Semmarine No.55/57/59

味も雰囲気も抜群のモロッコ料理店&カフェ

(左)モロッコの定番料理、チキンとレモンコンフィのタジンはぜひご賞味を。(右)街の喧騒から離れ、静かに食事ができるレストラン「アル・ファシア」アグイドアル店。

 新鮮な野菜やスパイスをふんだんに使うモロッコ料理。実は日本人の口によく合うメニューが多数ある。リーズナブルな食堂からお洒落をして訪れたいレストラン、散歩の途中に立ち寄りたいカフェまで、外せない店をラインナップ。イスラム教徒が多いマラケシュではアルコールを置いていない店が多い。交渉すれば持ち込みが可能なことも。予約時に確認を。

ラ・ファミーユ

スークの小道に面する小さなドアをくぐると、緑豊かなレストランが現れる。
この日は前菜の自家製パンと2種の野菜クリームディップ、日替わりサラダ(木苺、大麦、キャロット、山羊のチーズ、ヒヨコ豆)、日替わりフレッシュパスタ(アーティチョーク、フレッシュチーズ、ドライアプリコット、オレンジの皮、タイムのタリアテッレ)、フラットブレッド(グリーンピース、オニオン、リコッタチーズ、ひまわりの種、レモンの皮、ミント)をオーダー。
カウンターに並ぶ焼き菓子はフルーツタルトやフォンダンショコラなどが5種。

 昼のみ営業するベジタリアンレストラン。メニューは日替わりで、前菜は季節の野菜のディップの1品、メインは市場のフルーツや野菜、ハーブをふんだんに使ったサラダ、パスタ、グリル野菜を添えたフォカッチャ・ピザの3品。屋外に席があり、青空を眺めながらランチを楽しめる。(予約がおすすめ。アルコールなし)

La Famille

ラ・ファミーユ

HP:https://www.lafamillemarrakech.com/

Instagram:@la_famille_marrakech

ダル・カワ

(左)料理人のサイーダ。家庭料理やオリジナルレシピを提供。(中・右)センスの良いテーブルセッティングも要チェック。
ランチは前菜、メイン、デザートの3皿。前菜とデザートは皆同じものを選択する必要がある。この日は5人のグループで前菜は野菜のスープ、メインはチキンのクスクスとイワシ団子のタジンの2種、デザートはレモンパイ。
 (左・中)客室はスイート、ジュニアスイート、ダブルルームの3カテゴリーで全5室。こちらはジュニアスイート・オルマッシ。(右)中庭のソファで緑を眺めながらゆったり寛ぐことができる。

 インテリアデザイナーのヴァレリー・バルコウスキーが17世紀の邸宅を伝統的な素材のみを使ってリノベートしたリヤド。世界中のインテリア雑誌が取り上げるスタイリッシュな空間では、宿泊客以外のランチ、ディナーの予約も可能。料理人のサイーダが作る家庭料理は抜群の味。(事前に予約をしてメニューを決定する必要あり。アルコールなし)

Dar Kawa

ダル・カワ

HP:https://www.darkawa.net/life-in-dk/the-table/

Instagram:@darkawa_riad

アル・ファシア

「アル・ファシア」アグイドアル店はメディナからタクシーで15分程度。呼び鈴を押すとドアマンが敷地内のレストランまで案内をしてくれる。
(左)小皿で提供する前菜。中央は鳩のパスティーヤ。(中)タジンは肉、魚、野菜など15種を揃える。クスクスに添えられる粒パスタ、スムールはサラサラで上品。(右)名物の羊の肩肉とアーモンドは2人前からオーダーできる。

 マラケシュの富裕層が訪れるレストラン。新市街にあるゲリーズ店、旧市街から約5kmの距離にあり、美しい庭に囲まれ、リヤドを併設するアグイドアル店がある。季節の良い折はアグイドアル店の庭で食事をするのもおすすめだ。(要予約。アルコールあり)

Al Fassia Aguedal
アル・ファシア

HP:https://alfassia.com/aguedal/

Instagram:@alfassiamarrakech

テラス・バクシーシ

(左)魚のタジン。この日はイワシと季節の野菜。(中)壺に肉やスパイスなどを入れ調理する郷土料理、タンジーヤ。(右)右手前から時計回りに牛肉団子のケフタ、野菜のクスクス、牛肉のタンジーヤ、鶏肉のタンジーヤ。
2階から小さな螺旋階段を上ると、見晴らしのいいテラスが現れる。
タジンやクスクスは店頭で炭火調理をする。

 メディナの中心にある屋上レストラン。タジンやタンジーヤなどの伝統料理が味わえる大衆食堂だが、質の高い料理が評判。ザ・ガーディアン紙が選ぶマラケシュの食事処ベスト10にも選ばれている。(予約不要、アルコールなし)

Terasse Bakchich

テラス・バクシーシ

Instagram:@terrasse_bakchich

バシャ・コーヒー

(左)ガラス天井から降り注ぐ光が美しい中庭。(右)アンティークの家具を飾る美しい空間。
(左)豊富な種類から選べるコーヒーはポットサービス。(中)ショーケースに並ぶパティスリーが食欲をそそる。(右)アーモンドとビターアーモンドのクロワッサンはシャンティクリーム付き。

 お茶休憩に立ち寄りたい、1910年設立の老舗コーヒーメゾン。メゾンの起源と伝わるダール・エル・バシャ宮殿がコンフルエンス博物館として生まれ変わり、中庭にコーヒーショップをオープンした。建築家、歴史家、職人など、あらゆる分野の専門家が協力して再生した空間とインテリアは素晴らしい。コーヒーショップのみ利用する場合も、エントランスで入場券を求める必要がある。

BachaCoffee

バシャ・コーヒー

HP:https://bachacoffee.com/

Instagram:@bachacoffee

 食事も買い物も大満足のマラケシュには、他にも紹介したいアドレスがいっぱい! 2度、3度と繰り返し訪れたくなる、吸引力のある街だ。

(文/写真)木戸 美由紀/文筆家

女性誌編集職を経て、2002年からパリに在住。フランスを拠点に日本のメディアへの寄稿、撮影コーディネイターとして活動中。株式会社みゆき堂代表。マガジンハウスの月刊誌「アンド プレミアム」に「木戸美由紀のパリところどころ案内」を連載中。

Instagram:@kidoppifr

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