天孫降臨ゆかりの地として伝説が残る霧島の山間部、遥か桜島を遠望する小高い峰に2021年1月29日、星野リゾートの温泉旅館「界 霧島」が開業しました。神様が本当に降臨したのではないか、そう思わせる不思議なパワーを感じる土地柄です。「界 霧島」の周囲には壮大な風景が広がり、霧島連山の霊峰、高千穂の峰が聳え、錦江湾が眺められる絶景にあり、霧島神宮のお膝元でもある大自然の斜面に佇んでいます。
絶景のロケーションにある「界 霧島」からは桜島が美しく遠望でき、また、すすき野原に佇む‘湯浴み小屋’では、霧島の魅力である豊富な湯量の温泉が満喫できるのです。霧島山から湧出される硫黄泉は効能も豊か、心身ともにリラックスできると好評です。湯浴み小屋までは、客室棟から一歩出てスロープカーで向かいます。そして厳選かけ流しの「あつ湯」、温泉の成分をゆっくりと肌に馴染ませる「ぬる湯」、さらに露天風呂も備わっています。好天の日、夕暮れ時の湯浴み小屋からの景色は感動的です。桜島に沈みゆく夕焼けを見ながら温泉に浸かる時間は、まさに「界 霧島」滞在の醍醐味でもあるのです。
桜島や錦江湾の絶景を見晴らす客室は、全49室共にご当地部屋「薩摩シラス大地の間」として設えてあります。室内には、薩摩和紙、大島紬、薩摩錫器などの伝統工芸品や、鹿児島県特有の火山噴出物であるシラスを使ったヘッドボードがあしらわれ、郷土色に包まれ、旅の情緒を感じながら時を過ごせます。
食事は地域ならではの会席料理が提供されます。薩摩焼や龍門司焼などの器を用いて供されるのは、誰もがお待ちかね、特別会席のメインに登場する「黒酢で味わう和牛と黒豚の天地蒸し」でしょうか。二段せいろに黒豚、和牛、旬の野菜が並び、迫力満点。大いに盛り上がる食事タイムとなるでしょう。
一方、南九州でも指折りのパワースポットと言われる霧島では、2024年の新たなる‘ご当地楽’も始まりました。幾つかの提案のうち「天孫降臨ENBU」は、日本の建国とその歴史の始まりを、鳴り物の神楽鈴と太鼓を使い、迫力のある‘舞’を演じます。「アマテラスオオミカミから命を受けた孫神ニニギノミコトが高天原から地上に降り立ち、この国を豊かに、平和に治められていく」という伝承物語を披露するスタッフの舞は感動的です。もうひとつは通年行われている「霧島神水峡での開運ウォーキング」です。集中力を高める呼吸法や歩き方のレクチャーを受け、霧島神水峡を歩きます。自身の邪念を祓い、清々しい気持ちでウォーキングすることで前向きの気持ちが高まると言います。
さて、霧島の名産品と言えば、有名な焼酎もありますが、実は‘日本茶’です。この地域では霧が深く温度の寒暖差が激しい土地柄から、甘みが強く、薫り高い滋味豊かな日本茶‘霧島茶’が生まれます。宿内でも旨味・香・技を堪能できる日本茶三昧が提供されています。個人的に日本茶愛好家のため嬉しい滞在となりました。霧島連山の山麓に位置するお茶農家「ヘンタ製茶」では、一面の茶畑で霧島連山を眺めながら新茶摘み体験が行われます。標高200〜300メートルの茶畑で、無農薬または有機栽培で育つヘンタ製茶の霧島茶。その新茶の摘み方を教えてもらいながら、茶葉の新芽を自分の手で摘み取り、摘んだ新芽を釜炒りします。出来上がりはその場で飲んでも、お土産としても持ち帰れます。
楽しいことが山ほど詰まった「界 霧島」の滞在は、1泊では到底足りません。霧島神宮の見学、霧島連山の霊峰、高千穂の峰など、行きたい周辺を周ることも含めれば、ゆったりと2泊3日の旅はいかがでしょう。
取材・文/せきねきょうこ
Photo/界 霧島
せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数。
Instagram: @ksekine_official
DATA
界 霧島
鹿児島県霧島市霧島田口字霧島山2583-21