友人が訪ねて来たら連れて行きたいお気に入りの店が誰にでもひとつはあります。街の人々に愛される店こそ、胸をはって紹介したい“わが街の味”。この連載では、そんな街で人気のお店を紹介しています。今月の街は恵比寿。大人がいきつけにしたい美食の街・恵比寿で20年の歴史を持つ、鮨の名店をご紹介します。

紹介する街●恵比寿

【鮨】 

熟練の職人が手がける
まぐろから始まるおまかせコース

外観は店名の文字が躍る飴色のひょうたんと花を生けたくぐり戸が並ぶ奥ゆかしいたたずまい。扉を入ると、木曽檜を使った一枚板のカウンターが迎えてくれる。奥には坪庭があり、椅子にかけるとそれと向き合う形になっている。そう、ここ『鮨 伊佐野』は季節で変わる坪庭を眺めながら、握り鮨をいただくというという最高のロケーションなのだ。

きめ細かい無垢のカウンター。年代を感じさせないほど美しく手入れがされている。

 コースはおまかせで27500円~。内容は季節ごとに変わるが、シグネチャーとなるのは、まぐろの握りが最初にスッと出されること。鮨の華とも呼べるまぐろをコースの最初に出すのは珍しいが、選び抜いたまぐろをまずは味わって欲しいという思いからだ。

「これはお客様の様子を見て始めたことでした。コースの中盤で出すと、お腹がいっぱいになってしまうこともあります。それではせっかくのまぐろをおいしく味わえないのではないかと考えました」と店主の佐野拳利さんはいう。

150㎏ほどの最上級のまぐろを選んでいる。

これが実に理にかなっていた。舌がまっさらなうちにまずまぐろを味わうと、深い旨みの隅々までをしっかりととらえることができる。そして自然とこれから始まるコースへの期待も高まるのだ。

小さな茶わん蒸しは定番。いくらの時期はいくらがびっしり乗っている。

コースは握りが7~8貫。そのほかに刺身や茶わん蒸しなど握り以外のものが合間にさしはさまれ、緩急をつけた流れが繰り広げられる。最後は玉子とお味噌汁、デザートで締めくくられる。お腹に余裕があれば、お好みで握りや巻物などを追加することも可能だ。

ふぐ用の包丁で薄造りにした鯛や平目などの白身の刺身。

「魚本来の味を楽しんで欲しい」と熟成などはあえてさせないスタイルだが、佐野さん好みを熟知した、長い付き合いの豊洲の店から届く吟味された魚はどれも上質だ。

お酒は鮨に合う時季の日本酒が充実。お猪口は江戸切子や薩摩切子など、美しい日本のガラス器の中から選べる。

丁寧な仕事ぶりを眺めるのも楽しい。

面白いのは魚だけでなく、野菜の握りもあること。

「うちのシャリはあっさりしているので野菜にも合うんですよ」と佐野さんは笑う。

常連のなかには、単品の野菜の握りを楽しみにしている人もいるというほどだ。

旬の時は松茸を握ることも。サッとあぶってあり、温かいうちに食べる。

佐野さんがこの店を開店してちょうど20年。長く通う常連も多く、

「お馴染みの方はもう好みがわかっていますから、

なるべくお好きなものを出すようにしています」という佐野さん。

同じおまかせコースでも、通えば通うほど、好みを反映して構成するというから、通うほどに味わいが増し、いきつけにしたくなる店なのだ。

趣ある坪庭をてがけるのは自由が丘『品品』。季節によって設えを変えている。

繁華な恵比寿の駅前とは打って変わり、恵比寿ガーデンプレイスのおひざ元にある静かな立地の『鮨 伊佐野』。住宅街にある鮨店のような落ち着いた雰囲気と、都会の一流店のような洗練された鮨と料理という両方のいいところを併せ持つのはいかにも恵比寿らしい。

鮨 伊佐野

すし いさの

住所:渋谷区恵比寿3-9-17 アテナ1F

電話:03-5447-2031

営業時間:18:00~23:00(LO 22:30)

定休日: 日曜、祝日

※掲載価格は税込価格です(2024年10月現在)


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