友人が訪ねて来たら連れて行きたいお気に入りの店が誰にでもひとつはあります。街の人々に愛される店こそ、胸をはって紹介したい“わが街の味”。この連載では、そんな街で人気のお店を紹介しています。今月の街は品川区・荏原町。活気ある商店街に生まれた小さな洋食バルです。
紹介する街●荏原町
【洋食バル ちょーと亭】
洋食とワイン、小粋な前菜を
シックな空間で昼から楽しむ
東急大井町線・荏原町。下町の風情と落ち着いた住宅街が共存するこの街に、2025年、一軒の洋食バルが誕生した。店名は『洋食バル ちょーと亭』。ちょっと不思議な響きの店名は、店主の岩碕歩実さんが愛する、飼い猫の名前からとったものだとか。シックなカラーでまとめられた店内は、ランチでも落ち着いた雰囲気が漂い、ゆったりした時間が過ごせる空間になった。

岩碕さんがこの街にたどり着き、洋食屋をはじめたのは、実は本人にも想定外のことだった。イタリアンやフレンチを経験し、パティシエとしての顔も持つ彼女が、自分の店を持とうと考えたとき、なかなかいい物件に巡り合えなかった。そこで、時間を無駄にしたくないと、まずは飯田橋で間借り営業を始めたのだった。
トライアルのつもりだったという飯田橋では、自身が好物というオムライスやハンバーグなどを出すことに決めた。

「実はとくに洋食店をやるつもりはなかったんです。ランチ営業ということもあって、定食で出せるメニューにしようくらいに考えていたんです」と岩碕さんは笑う。
それがいつしか「美味しい洋食屋がある」と評判を呼ぶように。その時になって、意図せず、洋食店としてスタートしたことに、ハタと気づいたのだった。

間借り営業をする傍ら、物件探しは難航し続けた。結局、1年近く探し続けて、導かれるように辿り着いたのは、間借り店のある飯田橋からは遠く離れたこの荏原町だった。店を開くにあたっては、飯田橋からの自然な流れに身を任せ、彼女は「洋食バル」というスタイルを見出したという。

トマトとブッラータチーズのカプレーゼ、鶏レバーのクロスティーニ、ホワイトアスパラ生ハムのせ、カポナータ。彩りもきれいな盛り合わせはワインと一緒に。
実際に店を構えてみると、街のバラエティ豊かな魅力に驚かされたという。品川区らしい洗練された暮らしの中に、昔ながらの温かな人情が息づいている。そんなこの街特有の「楽しさ」と、しなやかな空気は、彼女の作る料理との相性も抜群であった。

分厚い豚ロースは、じっくりと低温で火を入れているので柔らかい。甘辛い絶品ソースもご飯を呼ぶ。
メニューは「トンテキ」、「ハンバーグ」、「オムライス」などの王道の洋食に、イタリアンやフレンチのエッセンスを加えた前菜、パティシエとしての腕の見せどころのデザートまで。
修行時代に培ったイタリアンやフレンチの技法を活かしたおつまみは、岩碕さんがセレクトしているワインとの相性も抜群だ。平日のランチからゆったりとグラスを傾ける姿が見られるのも、この街らしいどこかのんびりした光景だ。

はきはきと明るく接客をこなす岩碕さん。
「いつかは大好きな焼き菓子も店頭に並べられたら」と夢を語る。その表情には、未来への期待があふれている。
至福のランチタイムから、ワインと会話に花が咲くディナータイムまで。女性店主が一人で切り盛りする、小さな店には、今日もおいしそうなオムライスやハンバーグの香りが流れる。その飾らない居心地の良さが、訪れる人の心を解きほぐし、温めてくれるのだ。

ちょーと亭
ちょーとてい
住所:東京都品川区中延5-7-4 魚染ビル 202
電話:03-6426-9803
営業時間:月曜17:30〜23:00(LO22:00)、水曜~日曜・祝日11:30〜15:30(LO15:00)、17:30〜23:00(LO22:00) ※月曜ランチは祝日の場合のみ営業
定休日:火曜
Instagram:@cciototei
※掲載価格は税込価格です(2026年4月現在)
取材・文 岡本ジュン 写真・マツナガ ナオコ












