イタリアのバレンタインデーは一年で最も薔薇が売れる。

2月14日、イタリアに好きな人へチョコレートを贈る習慣はないが、恋人、夫婦同士でプレゼントを交換したり食事をしたり「愛を確かめ合う日」として親しまれている。そしてなんといってもバレンタインデーの食事にワインは欠かせない。

今回は北イタリア、ワインの宝庫かつチョコレートの街としても知られるトリノからチョコレートと相性の良いスイートワインをご紹介しよう。


スイーツとワイン、ペアリングの基本

ヨーロッパでは定番の「甘いスイーツ」と「甘いワイン」の組み合わせはペアリングの基本である。「甘いもの」に「甘いワイン」を合わせる概念は、イタリアでワインの勉強をするまで馴染みがなかったのだが、こちらイタリアでも食後のデザートには必ずと言っていいほど甘口ワイン、または食後酒を勧められる。


チョコレートの風味を生かす失敗しないペアリングのヒント

チョコレートはスイーツの中でも例外で、単純に「甘いもの」と「甘いもの」をあわせたら良いかといえばそうでもない。甘いものを食べた後に酸味のあるものを飲むとすっぱく感じ、心地よい甘みの余韻は消え、不快な後味がのこる。私達の味覚は強い「甘み」を感じた後には、「甘み」に対して鈍感になり、「酸味や苦味」を強く感じる。チョコレートの甘みは、ワインの甘みや果実味を隠し、酸味を際立たせ、水のような印象にしてしまうのだ。

これを避けるためにチョコレートと同じくらい甘いワインと合わせると、チョコレートとワインの甘さの両方が引き立てられ、おいしく感じられる。これは「甘いワインが苦手」という人にもおすすめの組み合わせで、甘いものと合わせることでお互いの甘さが緩和されワインも飲みやすくなるというわけだ。

ペアリングのポイントはチョコレートの素材、香り、コクと同調したワインを選ぶことだ。チョコレートを食べて、ワインを口に含んだ後にチョコレートとワインのどちらも美味しく感じられるものが相性の良い組み合わせといえる。


イタリアのレストランにてチョコ+ワインのペアリング

美しい広場を眺めながらチョコレートペアリングの取材の様子。

チョコレートの街トリノでソムリエの友人と共にチョコレートとのペアリングを試みた。

合わせたのはブラックチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、チョコレートチップクッキーの4つで、これらと合わせて頂きたいスイートワインをご紹介したい。


ブラックチョコレート

ナッツ入りのダークチョコレートとリチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ

ダークチョコレートには、チョコレートの甘さと苦味を中和し引き立ててくれるマルサラ(Marsala)、リチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ(Recioto della Valpolicella)バローロキナート(Barolo chinato)などのワインがおすすだ。フルーツやリキュール、ナッツ風味のチョコレートにはベルモットなどフレーバーを含むワインとの相性が良い。

相性のよいワイン例:

・バローロキナート(Barolo Chinato)
・ポートワイン(Port-style Red Wines)

・ヴィンサント(Vin Santo del Chianti)
・マルサラ(Marsala)


ミルクチョコレート

苦味のないミルクチョコレートには甘口のパッシートワインやスパークリングワインをあわせたい。発泡ワインのランブルスコやブラケットと合わせることで口の中に残るチョコレートのもったりした後味を炭酸がすっきりと洗い流してくれる。

相性のよいワイン例:

・ランブルスコ(Lambrusco di Sorbara)

・ブラケット(Brachetto)
・リチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ(Recioto della Valpolicella)

・ポートワイン(Port-style Red Wines)

・バニュルス(Banyulus)


ホワイトチョコレート

イタリアトスカーナ州発祥のスイートワイン ヴィン・サント。

ホワイトチョコレートにあわせる場合、ヴィン・サントまたはモスカート・パッシートなどの甘口の白ワインをあわせたい。甘いベースにビスケットやタルトの一部がある場合、甘口のスパークリングタイプとの相性も良い。フルーツやジャムを含むチョコレートと合わせるなら、アロマティックな赤ワイン、発泡タイプのブラケット(Brachetto)が最適だ。

相性のよいワイン例:

・ヴィン・サント(Vin Santo del Chianti)

・モスカート・ダスティ(Moscato d’Asti)

・アイスワイン(Ice Wine)

・ブラケット(Brachetto)


チョコレートチップクッキー

チョコレートの甘さにクッキーのバターの芳香的な香りが加わったチョコレートチップクッキーにはリチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ(Recioto della Valpolicella)やランブルスコ(Lambrusco di Sorbara)などと合わせて。タンニンのまろやかになったフルボディの赤ワインとの組み合わせは新しいスイーツの楽しみ方を広げてくれるかもしれない。

相性のよいワイン例:

・リチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ(Recioto della Valpolicella)

・ランブルスコ(Lambrusco di Sorbara)

・ブラケット(Brachetto)

・アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ(Amarone della Valpolicella)


以上チョコレートとワインのペアリングについてご紹介したが、大切なのは個々がどう感じるかである。それぞれの持つ要素とワインの特徴を踏まえて最終的には自分の感覚に従う。今年のバレンタインデーはチョコレートとワインのあま〜い駆け引きをお楽しみあれ。

(ペアリング取材協力:AISイタリアソムリエ協会認定ソムリエ 佐藤百合里さん)

マリーニ あゆみ

Ayumi Marini

福岡県出身。イタリアソムリエ協会認定ソムリエ・元客室乗務員。モデル、IT企業、留学など経験後、結婚を機にイタリアへ移る。ワインの宝庫ピエモンテとトスカーナでワインを学びプライベートワイナリー訪問のコーディネートを行う 。現在はアメリカ在住。旅とワインのブログではおすすめワイナリーや旅の様子を発信中。https://asmwine.com/

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