実用時計に、あえて無垢を選ぶ贅沢
ロレックスと聞いてどんなイメージを連想するだろうか。
私の所感では「受け継げるもの」「多くの人から支持される究極の実用時計」というイメージを持っている人が多いように感じている。
オイスターケースの名前の通り〈牡蠣の殻のように堅牢で頑丈なケース〉や、現在では搭載するすべてが自社生産だというムーブメント。
「オイスターケース」「パーペチュアル」「デイトジャスト」をはじめとした、600を超える特許。
もちろん進化は止まることなく、「アカシア」と呼ばれるスイスの本社では日々デザインや研究、開発が行われていて、毎年春に発表される新作では、マニアたちの期待を軽やかに裏切り、常に新鮮な感動と熱狂を与えてくれる。
知れば知るほどに、華やかなイメージと同じくらい、実用ツールとしての潔さを突き詰めたブランド。
だからこそ、永く世界中の人々に愛され続けているのだと納得せずにはいられない。
だけど数年前に私がロレックスで出会った運命の一本は、質実剛健さに加えて、圧倒的な優美さを兼ね備えた一本だった。
かつて、いわゆる「プロフェッショナルモデル」を求めて店舗を巡っていた時期、不意に惹かれて目を留めたのは、ショーケースの中で静かな輝きを放っていた「レディ デイトジャスト」の26mmモデル。
自分の肌にじんわりと溶け込みながらも、強烈な存在感を放つ18Kエバーローズゴールド。そしてエバーローズゴールドの延長線上に馴染んだ文字盤と、そこにあしらわれた10ポイントのダイヤモンド。
実用時計としての揺るぎないロジックの上に、惜しみなく重ねられたラグジュアリーな要素のバランスに、私はいとも容易く心を奪われてしまった。

年齢の先入観を鮮やかに裏切る、肌馴染みの良さ
それまで「無垢のロレックス」といえば、50代や60代といった人生の経験を十分に重ねた大人にこそ似合うものであり、当時の自分にはまだ少し早いに決まっているという先入観があった。
金無垢特有の重厚感は自分の手元では不格好に浮いてしまうのではないか?という懸念もあった。
しかし、実際に腕に乗せてみた瞬間の驚きは、今でも忘れられない。
18Kエバーローズゴールドの柔らかな色合いが私の肌の色を魅力的に見せてくれるような、思いの外主張しすぎず手首を華やがせてくれるような、心強ささえ感じさせてくれるものだったのだから。
「自分にはまだ早い」という思い込みは単なる妄想に過ぎず、本当に良いものは今この時、そしてこれからの人生において、心地よく頼もしいパートナーになり得ることを、その時計は華麗に証明してくれた。

「人生の快適さを担保する保険」という思考
それでも、やはり無垢の時計は決してお買い得と言える金額ではない。
購入を前にして、私は数日間迷い、葛藤していた。
そんな私の背中を押してくれたのは、当時職場で際立ったセンスを持つ上司の一言だった。
「これから先、何十年と愛用する一生ものだと考えたら、月々の費用に換算すればわずかな金額でしょ? 日々の装いや品位を支えてくれる『おしゃれさを担保するための保険』だと思ったら、むしろ安いものじゃない?」
その言葉を前にして、あっけないほど簡単に私の決意は固まった。
単なる贅沢品としての散財ではなく、人生や暮らしの質を高め、美意識を保つための「投資」であり「担保」なのだと捉え直した瞬間、迷いは綺麗に消え去っていた。

妥協のない選択が、暮らしの景色を美しく整える
この時に得た感覚は、現在の私の暮らしや住まいに対する価値観にも深く根を下ろしている。
インテリアや家具、日々の生活を彩る道具を選ぶとき、私は「本当に自分が心惹かれるか」「これが快適な人生を担保してくれるか」という基準を大切にしている。
たとえ少し背伸びが必要な選択だったとしても、妥協せずに「心から欲しい」と思えるものを選び取ることで、日々の暮らしの景色は間違いなく豊かで心地よいものに変わっていくから。
実際、エバーローズゴールドのレディ デイトジャストを身につけるたびに、あの時自分のフィーリングを信じて選んだ決断が間違っていなかったことを確信して、自分自身を褒めたくなる。
妥協のない選択を重ねていくことこそが、私自身の人生をすこやかに、そして美しく整えてくれるのだと、この小さな時計はいつもかたわらで教えてくれている。

プロフィール
前田紀至子(@ki45m)
エディター、ライター。新潮社『nicola』専属モデル、光文社『JJ』編集部を経て独立。 現在は各国の政府や航空会社より依頼を受けての旅記事や、 ビューティ、ライフスタイルに関する記事を中心に、雑誌やウェブサイトに寄稿。
















