この連載では、暮らしの中で知っておくとちょっと得する知識や、今さら周囲の人には聞きづらい疑問などについて、毎回その道のプロから教わります。

今回は、金融コミュニティー「きんゆう女子。」の方に、住宅ローン控除について解説いただきました。


理想の住まいを手に入れることは、自分らしい暮らしを彩る大きな一歩。住まい選びの味方となるのが「住宅ローン控除」です。2026年、この制度は大きな転換期を迎え、物件の質が減税額を左右する時代へと変わります。 今回は、これから住まい選びをする人や初めて住宅ローン控除を受ける方に向けて、住宅ローン控除の最新ルールとスマートな確定申告の手順をお伝えします。

2026年からの住宅ローン控除、何が変わる?

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、ローンを組んでマイホームを購入した方の税負担を軽減し、暮らしのゆとりを支える制度です。近年は、単なる減税措置から、次世代にふさわしい住まいを国が後押しする仕組みへと進化を遂げています。

住宅ローン控除の基本構造

住宅ローン控除は、年末のローン残高に応じて最大13年間にわたって所得税と住民税の減税を受けられる制度です。所得税は確定申告または年末調整の後に現金で還付され、住民税は次の6月以降に納める金額が減ります。

1年間に納めた所得税額よりも控除できる金額の方が大きい場合、引ききれなかった分が翌年度の住民税から最大9.75万円まで差し引かれる仕組みです。

所得税と住民税を合わせると、年間で数十万円、13年間で合計約300万円もの節税が実現できる可能性もあります。控除を受けるための手続き方法については後述しますが、まずは2026年に大きく変わる住宅ローン控除の最新情報を確認しましょう。

借入限度額は段階的に引き下げ

2026年度の税制改正により、住宅ローン控除の適用期限は2030年末まで5年間延長されました。これから物件探しを始める方や、完成が2026年以降になる新築マンションを検討中の方にとっても、非常に喜ばしいニュースです。

しかし、控除の対象となるローンの上限金額(借入限度額)は、入居時期が遅くなるほど段階的に引き下げられるスケジュールです。

住宅ローン控除の基準は、契約日ではなく入居日(住民票の移動日)です。入居が1日遅れて年をまたぐだけで翌年のルールが適用され、トータルの節税額が減ってしまうケースもあります。

キーワードは「省エネ性能」

これからの住まい選びにおいて重要になるのが「省エネ性能」です。2026年以降、新築住宅でも省エネ適合基準を満たさない物件は、住宅ローン控除の対象から外れます。

かつては新築であれば一律だった控除も、断熱性能やエネルギー消費量で大きく変わる時代。ZEH水準・長期優良住宅などの高性能な家を選ぶメリットは、冬暖かく夏涼しい快適な暮らしだけではありません。住宅ローン控除をフル活用して実質的な購入コストを抑えるための、合理的な投資と言えるでしょう。

住まいの種別で変わる控除の条件

住まいの選択肢が多様化する中で、物件の種別によって控除の枠の広さが異なります。デザイン性と機能性、そして税制メリット。見極め方を探ります。

物件種別に寄らず共通の要件

住宅ローン控除を受けるには、所得や床面積の条件があります。以下の条件は、物件の種別にかかわらず共通です。

  • 合計所得金額が 2,000万円以下であること
    子育て世帯等の借入限度額の上乗せを受ける場合は1,000万円以下
  • 床面積50㎡以上
    合計所得金額が1,000万円以下の年は、40㎡以上50㎡未満の物件も対象
  • 1982(昭和57)年1月1日以降に建築されたもの(新耐震基準適合)
    これ以前の建築でも、新耐震基準と同等と証明できれば対象
  • 災害レッドゾーンに建つ新築(一定の要件を満たす建替え等は除く)ではないこと

子育て世帯等は、借入限度額が上乗せされる優遇措置があります。入居した年の12月31日時点で18歳以下の子がいる、または夫婦のどちらかが39歳以下の世帯が対象です。控除を受けようとする方の所得が1,000万円以下の年のみ適用できます。

【新築物件】省エネ性能が必須の時代へ

新築住宅では、2026年以降、省エネ適合基準を満たさない物件は住宅ローン控除の対象外(控除額0円)です。高性能な住宅ほど借入限度額が大きく優遇されます。

住宅の区分 借入限度額 控除率 控除期間
 認定住宅(長期優良・低炭素)  4,500万円(5,000万円) 0.7% 13年
 ZEH水準  3,500万円(4,500万円) 0.7% 13年
 省エネ基準適合(2026年・2027年入居)  2,000万円(3,000万円) 0.7% 13年
 省エネ基準適合(2028~2030年入居)  一般世帯は対象外(子育て世帯等は3,000万円) 0.7% 13年
 その他の住宅  対象外

借入限度額の()内の金額は、子育て世帯等の借入限度額の上乗せを受ける場合の金額です。

新築の場合、物件価格そのものは中古より高くなる傾向にあります。しかし、長期的な節税効果とメンテナンスコストの低さを加味すると、10年、20年後に家計のゆとりにつながるとも言えるでしょう。

【リノベ済】中古でも新築並みの控除

「利便性の高い都心で、自分らしい空間を」と願う層に支持されるリノベーション済物件(買取再販住宅)。改正後の制度では、省エネ基準を満たすと新築同様の借入限度額で、13年間の控除が受けられます。

住宅の区分 借入限度額 控除率 控除期間
 認定住宅(長期優良・低炭素)  4,500万円(5,000万円) 0.7% 13年
 ZEH水準  3,500万円(4,500万円) 0.7% 13年
 省エネ基準適合(2026年〜2030年入居)  一般世帯は「その他の住宅」扱い(子育て世帯等は3,000万円) 0.7% 13年
 その他の住宅  2,000万円 0.7% 10年

 

新築と大きく異なるのが、省エネ基準に適合しない住宅も控除対象となる点です。ただし、控除期間は10年間となります。

高品質なリノベ済み物件は、中古物件ならではの価格優位性を保ちつつ、新築に準ずる税制メリットを享受できる、バランスの取れた選択肢です。

宅建業者が取得してからリノベーション工事を行って再販売している住宅が対象で、単なる壁紙の張り替えや設備交換などは含まれません。

【リノベ済以外の中古物件】高性能なら控除期間13年に

売主が個人の物件や、不動産会社がリノベーションを施さずに販売する物件でも、一定の性能があれば控除期間は新築同様の13年間です。ただし、新築やリノベ済と比べて借入限度額が少なくなります。

住宅の区分 借入限度額 控除率 控除期間
 認定住宅(長期優良・低炭素)  3,500万円(4,500万円) 0.7% 13年
 ZEH水準  3,500万円(4,500万円) 0.7% 13年
 省エネ基準適合  2,000万円(3,000万円) 0.7% 13年
 その他の住宅  2,000万円 0.7% 10年

 

売主が不動産会社でも、必ずしも控除の枠が大きいわけではないことに注意しましょう。検討中の物件が「増改築等工事証明書」が発行される規模のリノベーションを行っているか、事前に確認すると安心です。

初めてでも迷わない!確定申告の必要書類と申請手順

住宅ローン控除を受ける1年目は確定申告が必須です。会社員は年末調整をすれば確定申告が不要な方も多いため、初めての確定申告がハードルに感じる方もいるでしょう。しかし、e-Taxの普及により手続きは従来より格段にラクになっています。

1月中に集めておきたい重要書類リスト

まずは住宅ローン控除の申請に必要な書類を事前に集めておきましょう。

書類の名称 取得方法
 登記事項証明書(土地・建物両方)  全国の法務局の窓口または「登記・供託オンライン申請システム」からオンライン請求
 売買契約書・工事請負契約書の写し  物件購入時、または工事契約時に不動産会社や施工会社から受け取った原本のコピー
 住宅の省エネ性能を証明する書類  住宅省エネルギー性能証明書、または建設住宅性能評価書の写し
物件の引き渡し時に不動産会社やハウスメーカーから受領
 増改築等工事証明書  売主(不動産会社)に発行依頼
※リノベーション済物件(買取再販住宅)の場合
 住宅借入金等特別控除用年末残高証明書  融資を受けた金融機関から郵送(10月〜12月頃)
※マイナポータル連携が可能な場合も
 源泉徴収票  勤務先(12月〜1月頃)
※マイナポータル連携が可能な場合も

リノベ済み物件の場合、物件価格の中に工事費用が含まれているため、基本的には売買契約書の金額が計算のベースになります。買取再販住宅としての優遇措置を受けるために、増改築等工事証明書を準備しましょう。

中古物件を自分でリフォームした場合、物件購入代金と入居前のリフォーム工事費用を合算して申請できます。物件の売買契約書と、リフォームの工事請負契約書の両方が必要です。

源泉徴収票は、社内ポータルから自分でダウンロードする会社も増えています。e-Taxでマイナポータル連携を行う場合はデータを自動取得できるため、紙での用意が不要です。

忙しい方こそスマホでe-Taxがスマート

確定申告をするために、税務署や申告会場に出向く必要も、手書きで申請書類を作成する必要もありません。

特に注目すべきは、マイナポータル連携による自動化です。 勤務先から発行される源泉徴収票や、銀行のローン残高証明書、さらにはふるさと納税の寄付実績まで。これまで手入力が必要だった数字が、マイナンバーと紐付けられて自動的に申告書に反映されます。

手元にある証明書を撮影して数字を反映することもできるため、申告書作成時は数字に間違いがないかのチェックが主な作業です。

ふるさと納税「ワンストップ特例」の失効に注意

意外な落とし穴が「ふるさと納税」との兼ね合いです。ワンストップ特例は寄附先が5箇所までの場合は確定申告が不要になる制度ですが、確定申告を行うとワンストップ特例の申請が無効になります。

自治体に書類を送ったから大丈夫と過信せず、確定申告の入力画面で改めて寄附金受領証明書の数字を入力しましょう。この一手間を忘れると、寄附金控除が反映されず、期待した節税効果が得られなくなってしまいます。

還付までのスケジュール

還付申告は1月から受付開始されます。e-Taxを利用した場合、申告から3週間から1ヵ月程度で指定口座に入金されるスケジュールです。早く還付を受けたい場合は、本格的な確定申告シーズンとなる2月16日〜3月15日を避け、1月中〜2月初旬の申告をおすすめします。

2年目以降をラクにする心得

初年度の確定申告さえ乗り越えれば、2年目からは勤務先の年末調整で住宅ローン控除が受けられます。入居2年目(確定申告をした年)の10月下旬から11月頃の秋頃に、税務署から控除を受けられる全期間分の控除証明書が届きます。

確定申告時に電子交付を希望してデータで保管するか、届いた時にすぐスキャンして原本は定位置に置くなど、なくさない工夫をしましょう。

後悔しないための住宅ローン控除活用アドバイス

最後に、住宅ローン控除を正しく使い倒すための一歩踏み込んだアドバイスをお伝えします。

住宅取得資金の援助を受けたなら「物件価格 - 贈与額」が控除対象

両親や祖父母から住宅取得資金の援助を受けた場合、省エネ等住宅なら1,000万円まで、それ以外の住宅は500万円までの贈与が非課税となります。

資金援助を受けた場合、住宅ローン控除の対象となる借入金額は、物件価格から贈与額を引いた金額が上限です。援助を受けた資金をローンの頭金に入れない方も多いですが、その分住宅ローン控除の枠は少し減る点に注意しましょう。

繰り上げ返済は14年目まで待つのが正解?

住宅ローンの金利が控除率(0.7%)を下回る場合、早急な繰り上げ返済は必ずしも正解ではありません。控除期間中はあえてローン残高を維持して控除をフルに受け、控除期間が終了した14年目(控除期間10年の場合は11年目)に一括返済する方が、手元に残る現金が多くなるためです。目先のローン完済よりも、長期的なトータルの収支で判断するのがおすすめです。

ペアローンなら控除枠が2倍に

世帯年収が合算で1,000万円を超えるなら、ペアローンの活用が有効です。1人で高額なローンを組んだ場合、所得税額と住民税の控除上限(9.75万円)を合わせても控除額が余ってしまうケースがあります。

そのような場合は、2人でローンを分担してそれぞれの控除枠を使い切ると、世帯全体での還付額が大きくなるでしょう。共働きというライフスタイルを、税制面でも強みに変える戦略です。

まとめ

2026年は住宅ローン控除の大きな転換期です。制度の延長や中古住宅への優遇拡充といったポジティブな変化がある一方で、省エネ性能による格差はこれまで以上に明確になります。

最新の税制を味方につけ、資産価値と心地よさを兼ね備えた一軒を選ぶことが、理想の住まいでの暮らしを金銭的なゆとりで支える備えとなるでしょう。

ライター/anomiki
士業・金融メディアを中心に執筆するライター。行政書士試験合格・2 級 FP 技能士。総合士業
事務所グループのマーケティング職や、自治体の税務担当を経て独立。法律やお金の知識をわか
りやすく伝え、読者の方が一歩踏みだすきっかけとなるべく活動しています。

Share

LINK

  • ピアース石神井公園
  • ディアナコート永福町翠景
×
ページトップへ ページトップへ