この連載では、暮らしの中で知っておくとちょっと得する知識や、今さら周囲の人には聞きづらい疑問などについて、毎回その道のプロから教わります。

今回は、1979年に創業し、現在は銀座に2店舗を構える呉服店「銀座もとじ」の店主 泉二啓太さんから、夏着物と浴衣についてのあれこれを教えていただきます。


夏着物と浴衣の違いは? どちらを選ぶ?

浴衣は、もともとはお風呂上りに着る湯帷子(ゆかたびら)が原型とされています。そのため、素肌の上から直接着用し、足元も裸足に下駄というスタイルが基本です。夏祭りや花火大会などのリラックスしたシーンでの着用にぴったりです。

一方、夏着物は、肌襦袢・長襦袢の上に重ねて着るもので、足元は足袋に雪駄や草履を合わせます。日常的な外出にはもちろんのこと、ホテルやレストランなど、フォーマルな場所へのお出かけにも適しています。

素材はさまざまありますが、浴衣は木綿や麻、夏着物は麻や絹が用いられるのが一般的。もし、浴衣と夏着物、どちらを購入しようか迷ったら、どちらにも使用できる素材・柄の着物をおすすめします。見分けるのが難しい場合もあるので、お店の方にアドバイスをもらうと良いでしょう。

夏着物と浴衣の着こなしテクニック

・夏着物・浴衣と帯の組み合わせの考え方は?

基本的には着物や浴衣に使われている色と同系色の帯を選ぶと、柄や素材が違っても統一感のあるコーディネートに仕上がります。着物の柄と帯の柄が似ている場合は、柄のサイズ感に差をつけると、バランスがよくなります。

浴衣なら自然素材の帯を取り入れるとより季節感と洒落感が際立ちます。

夏着物であれば、帯締めも同系色でまとめ、ポイントとなる帯留は夏らしさを演出するガラス素材にすると涼感もありながら、様々な色に合わせやすいのでおすすめです。

柄があまり目立たない帯であれば、着物と違う色を選んでもコーディネートのポイントにもなり、おしゃれな着こなしに。

同じ着物でも、帯が変われば印象もがらっと変化します。帯をいくつかそろえておくと、着こなしの幅が広がります。

左は大胆なチェック柄の帯だが、同系色のためまとまりが出る。右は涼しげな芭蕉の帯の組み合わせ。着物と似た柄だが、大きさに差があるので、バランスよく見える。
着物171,000円(左)帯93,000円、三分紐11,000円、帯留28,600円 (右)帯33,000円

・浴衣や夏着物をパートナーと楽しむペアコーディネート

パートナーと浴衣や夏着物でお出かけするのも特別感が増して良いものです。男女で合わせる場合も、まずは浴衣の色合いを合わせれば、程よくリンクして見えます。男性用着物の帯も同じ色が使われているものを合わせると統一感が生まれます。男性用の帯は、幅が狭いので大胆な柄を選んでも良いアクセントになります。

同系色の着物でそろえ、柄も絞りのもので統一感を演出。男性用の帯は沖縄伝統のミンサー柄がほどよいアクセントに。
(左)帯34,100円(右)浴衣204,000円、帯45,000円

また、ペアコーディネートのアイデアとして、同じ作家さんの着物でそろえるというのもひとつの方法です。さらに帯を同じ素材のものにすると、さりげない大人のおそろいコーディネートになります。

泉二さんの着物に合わせたコーディネート。着物は人間国宝の染職人 松原伸生氏による作品で、泉二さんの帯は藤布、女性用の帯は科(しな)布を使った自然布(しぜんふ)で統一。 (右)着物698,000円 帯250,000円

・大人の夏和服にあう小物

宝石のようにカラフルなもの、すっきりとシンプルなものなど見ているだけでも心が躍る帯留

夏着物を楽しむなら、ぜひ取り入れたいのが帯留。ガラスのような透明感のあるものや爽やかな白などは、涼しげな雰囲気を演出できます。

また、かごバッグやパナマ素材の草履など、夏らしさを感じさせるアイテムを取り入れることで、季節の和装の魅力がさらに際立ちます。洋服のコーディネートと同じ感覚で、自分らしい小物選びを楽しんでください。

夏着物を涼しく着るためには?

夏着物には、麻素材など涼しい肌着や襦袢を着用していただくのが一番です。脇や帯にあたる部分など、汗のかきやすい箇所に汗取りパットがついているものなど、機能性が高い商品もあるので、ご自身に合ったものを選んでください。

吸湿性、放湿性に優れた麻を使用した肌襦袢 20,900円

夏着物・浴衣は自然素材を存分に楽しんで

藤や麻、芭蕉など、夏は自然の素材の魅力を存分に楽しめる時期です。着物や帯に用いられる自然素材は、日本各地で古くから伝わる技術を守りながら、今なお手作業で繊維から丁寧に作られているものが数多くあります。作り手への想いも馳せながら、ぜひ夏の和装を満喫してください。

写真/古本麻由未 取材・文/SUMAU編集部

プロフィール紹介:泉二啓太(もとじ・けいた )さん

1984年生まれ。「銀座もとじ」二代目。 高校卒業後、ロンドンの大学でファッションを学ぶ。 卒業後パリへ渡り、2008年に帰国。 2009年から「銀座もとじ」に入社。 2022年9月、代表取締役社長に就任。  

「着物をワードローブの一つの選択肢に」「着物に関わる仕事が憧れられる職業に」。 その夢を叶えるため、店舗での接客をはじめ、日本全国の産地・作家を自ら訪れオリジナル商品の開発や、お客様参加型の着物づくりの企画運営、次世代に向けて日本の手仕事や着物の魅力を伝えるワークショップを開催するなど、着物文化を国内外に広める活動を精力的に行っている。 

Instagram:@ keitamotoji

銀座もとじ

1979年創業。東京・銀座に女性の「織り」と「染め」の着物専門店「銀座もとじ 和織・和染」と、2002年に日本初・男性の着物専門店としてオープンした「銀座もとじ 男のきもの」の2店舗を展開。
人間国宝による作品や重要無形文化財をはじめ、日本全国から集めた選りすぐりの着物や帯(染織品)を通して、日本の手仕事の素晴らしさを紹介しています。世界初・雄だけの純国産蚕品種「プラチナボーイ」の絹糸を使った生産履歴の明確な“顔の見えるものづくり”や、蚕から誂える体験型プロジェクト「プラチナボーイ物語」、作り手との出会いを育む展示企画を継続的に実施しています。

HP: http://www.motoji.co.jp/

Instagram:@ginza_motoji

※掲載した商品はすべて税込み。情報は2025年5月取材時のもの

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