「Inspiration Life」では、さまざまな分野で活躍されている方のご自宅を訪ね、ルームツアーのように空間を巡りながらお話を伺います。

今回は、lessandのディレクターとして、様々な空間づくりを手掛ける、伊集院香織さんのご自宅へ。仕事と暮らしがゆるやかにつながる、 日常を見せていただきました。

クライアントの魅力を引き出す、ディレクターとしての仕事

――lessandでの仕事についてお話しいただけますか?

lessandは店舗やホテルなどの内装を中心としたインテリアデザインの会社です。

ファッションブランドの店舗デザインやポップアップの空間づくり、空間に合わせた什器のデザインなどを多く手掛けていますね。

最近では、伊勢神宮の近くに来年春オープン予定のホテルがあり、その1階ロビーの内装デザインを担当しています。

私はディレクターとして、プロジェクトがスムーズに進むようにクライアントとのやり取りをしたり、いただいた要望をどう空間に落とし込むかをデザイナーと一緒に考えたりしています。そのほか、会社全体のプロジェクトを見ながら、最近はブランディングや新規事業の企画にも携わっています。

――内装の一環で、ラックなどの什器も手がけられているんですね。

ファッションブランドの短期のポップアップでは、空間に合わせて什器を一から製作することも多いんです。ただ、短期間のために作って、会期が終わったら壊してしまうということもあって。そこは以前から少し課題に感じていました。

それなら、過度に装飾をしなくても、置くだけで空間が完成するようなデザイン性のある什器があってもいいんじゃないかと。ひとつの空間のためだけに作って壊すのではなく、長く使いながら、いろいろな空間に展開していけた方が、よりサステナブルでもあります。

そういった現場で感じていた課題から、自社でデザイナーズ什器をつくり、レンタルという形で展開する新しい事業を立ち上げることになりました。来年の春のスタートに向けて、今まさに準備を進めています。

Lessandで手掛けるラック。来年春ローンチ予定のデザイナーズ什器ブランド「L&」の試作品。
ジャケットとシャツはERI UMEMOTO

――lessandに参加されるまでの経緯も伺いたいです。

 lessandに入る前は、ファッションブランドで長く働いていました。もともとブランドのコアに関わる仕事がしたいという思いが強くて、そのためにはまず現場に入ることが一番の近道だと思い、4年制大学を中退してファッションブランドに入りました。

店舗スタッフとして経験を積んだ後、当時まだ社内になかったVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の役割を立ち上げ、本社で全店舗のVMDを担当するようになりました。

 VMDは店舗のディスプレイや視覚的な戦略を考える仕事で、空間をどう見せるかを常に考えていました。店頭のマネキンのスタイリングやレイアウトを変えるだけで売上が大きく変わる経験もあり、視覚的なコントロールの力を実感しました。

ブランドが拡大していくタイミングでは、新店舗のデザインにも関わり、デザイン会社と一緒に「ブランドをどう空間に落とし込むか」を考えていました。今の仕事とは逆の立場ですね。

次のステップを考えた時に「もっと幅広い空間づくりに携わりたい」と思い、フリーランスに。不動産会社関連のインテリアコーディネートや、セレクトショップのVMDなどをしていましたが、一人だとスケールに限界があると感じていました。

その頃、友人の紹介で今の代表と知り合いました。これまでの経験を活かしながら、新しい領域にも挑戦できそうだと感じ、lessandにジョインしました。

代表は韓国生まれで建築を、私はファッションやVMDをバックグラウンドに持っています。お互い違う視点があるからこそ、デザインの幅を広げられるのもlessandの特徴かなと思っています。

――お仕事をされる上で、大切にしていることは何ですか?

クライアントの要望を隅々まで汲み取ることを大切にしています。その要望をただ形にするだけではなく、そのブランドが持っている魅力や可能性を最大限に引き出して、想像の少し上をいく提案ができるように意識しています。空間を通して、そのブランドらしさをどう伝えるかという、ブランディングの視点も大切にしています。

あとは、デザインとして素敵でも、実際にそこで働く人や訪れるお客様にとって使いづらければ、いい空間とは言えないと思っていて。私はもともとアパレルブランド側にいたので、例えばラックの配置ひとつでも、デザインとしては成立していても、実際には動線が悪くなってしまう、といったことに気づける部分があります。

デザイン性と使いやすさ、その両方を成立させるのは難しいですが、実際に使う人にとって心地よいところまで考えられる空間づくりを、これからも大切にしたいと思っています。

――お仕事で新しいことをする時のインスピレーションは、どこから得ていますか?

もともと海外旅行が好きで、学生の頃は、お金を貯めてはヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアなど、いろいろな国を一人で旅していました。

今の時代、ネットでリサーチもできますし、情報はたくさん入るのですが、空間に関しては本物を見る事が重要だと思っています。自分の目で見て、感じて、それを一つずつ分解して「これはこうだから素敵に見えるんだな」と考える。

インスピレーションというより、そのプロセスをずっと続けてきたことで、自分の中の引き出しが増えていきました。

これからも海外に限らず、いろんな場所を見に行きたいですね。

本当にいいと思ったものを長く使う

――今回のお家を選んだ際のポイントはどこですか?

まず、正方形に近い間取りを探していました。日本は縦長の間取りが多いので、この形は珍しいんです。 あとは自然光が好きなので、窓はできるだけ大きいこと。

初めて見た時、一人で住むには少し贅沢なくらいゆったりしていて、心地いい空間だなと感じました。

――6年間で6度の引っ越しをされたとお聞きしました。

事務所の近くに住むとか、今より広い部屋に住もうという目的ができたりして、人生の変化に合わせていくなかで自然と引っ越し回数が多くなっていきました。

私自身、環境を変えることはすごくポジティブな行為だと思っています。意図的ではなかったけれど、 引っ越すたびに新しい出会いがあったり、仕事につながったり、人脈が変わったりして、人生が良い方向に進んでいると感じます。

現代アーティスト・HARUNA SHIKATAの作品

――お部屋づくりで意識されていることはありますか?

できるだけ物を増やさないようにしていることがまずひとつ。

それから、家具は大きなものを選んでいます。シンプルに、海外の部屋づくりが好きなんですよね。もちろん海外は部屋自体が広いというのもあるんですが、家具のスケールも大きい。細かいものをちょこちょこ置くより、大きいものをメリハリよく配置する方が、自分の感覚に合っていると思います。

また、一度買った家具は長く使います。何度も引っ越ししているのに手放したものはほとんどありません。一目惚れタイプで、家具はブランドや価格に関係なく、本当にいいと思ったものを選びたい。だから、高価なものでも、一生添い遂げるつもりで買っています。

Willowのインセンス

――フレグランスアイテムが多くありますが香りもこだわりがありますか?

香りものはすごく好きです。朝起きたら必ずお香を焚きますし、寝る前にはルームスプレーでリラックスしています。

香り単体で「これが好き」というより、インテリアと同じように、その空間にどんな香りがあると心地いいかを考えることが多いです。香りも空間の雰囲気をつくる要素のひとつ、という感覚に近いかもしれません。

今はライフスタイルブランド「Willow」の香りがとても気に入っていて、家でもよく使っています。日によって香りを変えることもありますが、家に帰った時に好きな香りが残っていると、自然と落ち着きます。

写真中央がWillowのディフューザー

整理整頓しすぎないのが心地いい

――家を快適な空間にするために大切にしていることは?

綺麗に整理整頓するのは苦手なので、ワンアクションで片付けられるというのが、自分の性格に合っているのでそれは心がけていますね。きっちり整いすぎているよりも、少し生活感がある方が落ち着くんです。

デスクにカゴを置いておけば中にポンと入れるだけで片付くので、見せる収納としての小物入れをいくつか置いています。鏡の裏には掃除道具やメイクアイテムを置いていてサッと取り出せるようにしています。

ラックも同じで、外出する時にすぐ取れるように置いておく。帰ってきたらすぐに掛けられるようにしておけば、クローゼットを開ける必要もない。

快適で機能的で、なおかつおしゃれに見えるように、生活の中でいろいろ発想を巡らせています。

――このお部屋でどう過ごしていますか?

朝の光がたっぷり入る時間がとても気持ちよくて、自然光を浴びながら仕事をしたり、育てている緑に水をあげたり。外の景色も少し見えるので、日中はここで仕事をしながら過ごすのが好きですね。

全面に絨毯を敷いているので、仕事が終わったらソファにもたれながら絨毯の上に座ってリラックスしたりします。 友達を呼んで、ご飯を食べたりワインを飲んだり、そんなちょっとしたホームパーティーをすることも。

 夜寝る時は、メインの照明ではなく柔らかい光だけをつけます。好きな家具や空間を眺めながら眠れるのが好きなんです。寝室が別になるとその空間が見えなくなるので、ゆるく生活のすべてがつながっているワンルームの良さを感じています。

――お仕事の空間づくりとご自宅で、共通している部分はありますか?

本当にいいと思ったものにしか反応しないところかもしれません。 デザインの仕事は答えがないので、社内のミーティングでも「これはいいのか悪いのか」「可愛いのか可愛くないのか」という議題になります。でも案外それをスパッと言うのって難しいんですよね。

だからこそ、自分の直感を信じることを大事にしています。仕事でもプライベートでも、そこだけはぶれないようにしていまね。

伊集院香織(いじゅういん・かおり)さん

アパレルブランド「Ameri VINTAGE」に6年間勤務。VMDとして店舗づくりやブランドの世界観づくりに携わる。その後、約3年間フリーランスとして、空間づくりやブランドのブランディングに携わる。2025年夏よりlessandに参画し、現在はディレクターとしてプロジェクトを担当するほか、経営や新規事業にも携わっている。

Instagram:@__k.ao__ri.__

Share

LINK

  • ピアース石神井公園
×
ページトップへ ページトップへ