古代ローマ時代の寵児であるカエサルやマルクス・アントニウスを魅了したクレオパトラ。彼女はその場で交わされるあらゆる言語を使いこなし、政治・経済・哲学・天文学・医学と幅広い知識の持ち主だったという。クレオパトラは知性に加え、美しい容貌だった。そんな彼女の好物はイチジクだったそうだ。

古代エジプトではイチジクは不老不死の果物と考えられていたが、その頃は現代のように、「アントシアニンが豊富!」とか「食物繊維がたっぷりで」みたいな具体的なことは解明されていなかっただろうから、要するに体に良い影響をもたらす感じがするという人々の経験の積み重ねでそのようなポジションに位置するようになったのだろう。

イチジクは漢字で「無花果」と書く。花の無い果物と書くが、実際のところ、花は無いのではなく内側にあって、切り開いた時の美しさはジオードのようだといつも思う。

内側に花ということで、話はちょっと変わるが腸内フローラという言葉はご存知だろうか? 私たち人間の体は約37兆個の細胞で構成されており、腸には体内の8割の菌が集まっていて、その数は100兆個を超えるそうだ。まさに腸内にある花畑である。その種類や多様性は人それぞれで誰一人として全く同じ人はいない。でも例えば長寿で有名な地域の方たちの腸内フローラを見ると、共通して長寿菌と考えられるものが多く存在したり、痩せ型の人を調べると痩せ菌がいたりする。その違いはどこからくるかと言えば、もちろん生まれ持ったものもあるが、後天的なところで言うと食生活が大きな影響を与えている。腸内細菌は人が食べたものを餌にしているのだから。細菌たちが腸内に住んでいるからといっても、必ずしも自分の体の味方をしてくれているわけではない。例えば食物繊維が不足すると、菌たちが腸壁を覆うムチン層を分解して食べてしまい、体の炎症の原因になる。赤ずきんちゃんのおばあちゃんだと思っていたら、突然狼になっていた、みたいな話だ。なんと恐ろしいこと…というわけで腸内細菌のみなさんが健康をサポートしたくなるような食事をしようと最近は特に意識をしている。

そこでお気に入りのサラダを作ろうと考えたのが今日ご紹介する一品だ。イチジクは言わずもがな、アブラナ科のケールは野菜の王様と呼ばれるほど栄養価が高くスーパーフードとして注目を集めている。またカマンベールチーズは乳酸菌などの微生物たちの働きによって作られているし、舞茸はそれ特有の免疫細胞を活性化させるMDフラクションや、血糖値コントロールに一役買ってくれるMXフラクションなど独自の嬉しい効能がある。これらを組み合わせていただくと、食べ応え抜群で、満足度が高く、そして何より腸内細菌たちが喜んでいる気がするのだ。イチジクの美味しい季節、しばらくこのサラダを楽しみたいと思う。

器はアスティエ・ド・ヴィラットのもの。初めてアスティエの食器を手に入れたのは、5〜6年ほど前だろうか、セレクトショップで母が求めてくれたもの。丸型でシンプルな皿なのだが、お菓子を盛るのにとても重宝している。そして料理にも合うものを買い足したいと思っていたところ、昨年表参道に旗艦店ができたことをきっかけに足を運ぶようになった。

アスティエは1996年にパリ郊外で誕生したライフスタイルブランド。ゆるやかな時間の流れ、歴史を感じるのに、思ったほど古くからあるブランドでは無いことに驚く。創業者のブノワ・アスティエ・ド・ヴィラット氏とイヴァン・ペリコリ氏はパリ国立高等美術学校で学んだ芸術家だ。19世紀の伝統的な器のデザインに重きを置き、型を使った手作業に特徴がある。全く同じ型の器でも、厚みや釉薬のかかり方が異なり、時には同一のものと思えないほどである。そこに温かみがあり、また完璧ではないところに魅力を感じるのは、人間と同じなのではないだろうか。エスパドンの繊細なフランス料理も良いが、思いっきり果物だけでも映える。ちょっとしたピンチョスみたいなものと合わせると愛らしく、しまいには何も乗せなくてもとびきり可愛い。ということでお店に行くたびについつい買い物をしてしまうので、そろそろ自制したい…!

イチジクとカマンベールチーズのサラダ

―材料(2人分)

  • イチジク 3個
  • カマンベールチーズ 3分の1個
  • ケール 2〜3枚
  • 舞茸 1パック
  • にんにく 1片
  • アンチョビフィレ 1枚
  • 塩 適宜 
  • 白胡椒 適宜

<赤ワインヴィネガードレッシング>

  • 赤ワインヴィネガー 10ml
  • オリーブオイル 70ml
  • 塩 2g
  • 砂糖 2g

1、ドレッシングを作る。赤ワインヴィネガー10ml、塩2g、砂糖2gを合わせ、オリーブオイルを加えながらしっかり撹拌する。

2、舞茸の炒め物を作る。舞茸は親指くらいのサイズに切り分ける。にんにく1片をみじん切りに、アンチョビは包丁でペースト状になるまで細かくたたく。分量外のオイルをフライパンで温め、舞茸をソテーし、途中で分量外の塩を1つまみ。しんなりしてきたらにんにくとアンチョビを加えて全体的に混ぜる。にんにくに火が入った段階で火を止める。

3、ケールはよく洗ってから水気を拭き取る。一口大に手でちぎる。

4、イチジク(今回はとよみつひめを使用)は皮を包丁でむいてからくし切りに。カマンベールチーズもくし形に切る。

5、ケール、イチジク、舞茸を器に入れて、上からドレッシングを適量まわしかけて全体的に混ぜる。最後に上から白胡椒をかける。

料理家 千 麻子

学習院大学文学部哲学科および経済学部経営学科を卒業し、同大学史料館に勤めた。また美味しいもの好きが高じて美食の街、リヨンのポールボキューズ料理学校をはじめ、国内外問わず料理を学び、フランスではミシュラン3つ星のレストランの厨房でも研鑽を積む。

Instagram:@asako_sen

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