毎年のことながら、梅雨の時期になると梅雨明けからの暑さを思いずっしりと重たい気持ちになる。しかも今年は、例年より暑くなるのではないかとも言われている。どうやらスーパーエルニーニョで、なんとフランスではすでに44度を記録したとかいうニュースも記憶に新しい。日本では6月の段階ですでに台風が発生した。ヨーロッパの猛暑も確かに辛いが、日本の夏は湿度も伴っているのでまた一層堪えるものがある。
とはいえ、暑さを除けば夏は楽しみが目白押しだ。京都の人と結婚したからか、それ以来、7月の祇園祭が気になるようになった。
祇園祭は別名、鱧祭りとも言う。梅雨の雨を飲んで美味しくなるとされる鱧は、栄養満点で体力が奪われがちな暑い季節には抜群。京都で熱射病になりかけた高校時代、鱧を食べていたら違ったかもしれないと今になってみると思う。厳ついお顔で噛み付いたら離さない「咬む(はむ)」からハモと呼ばれるようになったそうだ。
鱧の体には硬くて細い小骨がたくさんあるため、皮を切り離さないように等間隔に骨を切り手間をかける必要がある。綺麗に骨切りされた鱧がお椀の中で美しく開く牡丹鱧や、ボコボコ波打つような鱧のお寿司、また骨のフライも美味である。個人的には、むちっとした食感で食べ応えがあるのに、淡白で思いの外あっさりいただける天ぷらが好み。今回はタルタルソースと胡瓜の酢の物を一皿にまとめてみた。
タルタルソースとは、マヨネーズにゆで卵、玉ねぎやピクルスなどを合わせたソースのこと。レムラードソースとも似ている。タルタルソースの起源は遊牧騎馬民族のタタール人だと言われている。彼らは生の馬肉を細かく刻み、香辛料と合わせたタルタルステーキを食べていた。ちなみにこれはハンバーグの起源でもあるのだが、細かく刻むことにポイントがあるのだろう。のちにフランス革命の際に行き場を失った料理人がロシア人貴族の元で働くことになり、その際に彼らが好んだ魚料理に冷たいマヨネーズベースのソースを合わせたのだが、これがとってもよく合った。さぁ名前は……細かく刻んだ食材たち! あぁ、タタール風だからタルタルソース(西洋人はギリシア神話のタルタロスに言い慣れていたため)、という塩梅ではないだろうか。


器は呉須赤絵(ごすあかえ)花鳥文中皿だ。中国の明末から清初め頃に福建省南部の漳州窯で焼かれた輸出向けの色絵。以前ご紹介した呉須染付と同じ時代のものなのだが、ゆるっとした筆致に共通する雰囲気は見られるものの、こちらは器一面に赤と緑の2色で所狭しと絵が描かれている。白地を丁寧に作り、その上からベンガラで存在感のある尾長鳥が描かれる。色が禿げやすく取扱いには気を遣う必要があるので使用頻度は多くはないが、眺めているだけで元気の出る器の1つだ。
鱧の天ぷら

―材料(4人分)
- 鱧(骨切り済みのもの) 200g
- 天ぷら粉 50g
- 米油 適宜
タルタルソース
- 卵 2個
- 玉ねぎ 10g
- マヨネーズ 50g
- ケイパー 2g
- ピクルス 15g
- 塩 2g
- はちみつ 3g
- レモン汁 2g
- マスタード 1g
胡瓜の酢の物
- 胡瓜 1本
- 米酢 25g
- 出汁 25g
- 薄口醤油 3g
- みりん 3g
- 塩 1g


1、胡瓜を薄切りにする。分量外の塩を直接かけて全体に馴染ませ、少し経ったら出てきた水気を絞る。
2、胡瓜用の合わせ酢を作る。米酢25g、出汁25g、薄口醤油3g、みりん3g、塩1gを合わせておく。

3、タルタルソースを作る。常温に戻した卵2つを、殻ごと沸騰した湯に入れて12分。水にとり、殻をむいて、小さなみじん切りにする。玉ねぎはみじん切りにして水に10分程度さらし、水気をしっかり切っておく。分量のマヨネーズ50g、ケイパー2g、ピクルス15g、塩2g、はちみつ3g、レモン汁2g、マスタード1g、卵と玉ねぎを合わせて冷蔵庫で冷やしておく。
4、骨切り済みの鱧を5cm幅に切る。

5、天ぷら粉50gに水(あれば炭酸水を使うとカリッとする)75mlを混ぜて、鱧をくぐらせて、分量外の米油で160~180度程度でさっくりと揚げる。
6、1の胡瓜に2の合わせ酢をかけて馴染ませておく。
7、器に鱧、タルタルソース、胡瓜の順番にのせる。



料理家 千 麻子
学習院大学文学部哲学科および経済学部経営学科を卒業し、同大学史料館に勤めた。また美味しいもの好きが高じて美食の街、リヨンのポールボキューズ料理学校をはじめ、国内外問わず料理を学び、フランスではミシュラン3つ星のレストランの厨房でも研鑽を積む。
Instagram:@asako_sen














