友人が訪ねて来たら連れて行きたいお気に入りの飲食店が誰にでもひとつはあります。街の人々に愛され、みんなが通い続けるレストランこそ、胸をはって紹介したい“わが街の味”。この連載では、そんな街で人気のレストランを紹介してます。今月は都会の中のエアポケットのような高級住宅街・白金台。ハイエンドなレストランも多いこのエリアで、東京で数少ない本格インドネシアレストラン「CABE 目黒店」を紹介します。
紹介する街●白金台
【インドネシア料理】 CABE 目黒店
初めて出会う料理もなぜか懐かしい
インドネシアレストラン
「インドネシアは多民族で、たくさんの島があり、宗教も多彩です。
それぞれの地域で食べている料理も違うんですよ」
と教えてくれたのは、『CABE』のオーナー大平さん夫妻。インドネシア・ジャワ島に留学経験を持つ大平正樹さんは、2002年に武蔵小山にインドネシアレストランを開いた。ほどなくして2005年には大鳥神社近くに『CABE 目黒店』をオープン、そして2016年に現在の場所へ移転している。
店のメニーはインドネシアでもポピュラーな料理が基本といい、その代表として運ばれてきたのがうっすら黄色に染まったスープ「ソトアヤム」だった。インドネシア語でソトはスープ、アヤムは鶏肉の意味。ターメリックを効かせているので香りはカレーに似ているが、スパイシーというよりも穏やかな味わい。春雨が入っているのでボリュームもたっぷり。さっぱりと飽きない美味しさがあり、現地ではご飯のおかずとして食べられているという。
茹で卵、細く割いたチキン、春雨などが入っているチキンスープ。2～3人のとりわけ用。一人用のミニサイズ440円もあり。
もうひとつ現れたのは、定食のようにご飯とおかずが一皿に盛り付けられた『ナシパダン』。
この料理のルーツはインドネシア・スマトラ島のパダン地方というが、今ではインドネシア全土で広く食べられているという。
「キャッサバの葉の煮ものが入っていないと、
ナシパダンとはいえないそうですよ。
以前は現地からキャッサバの葉を入手するのに苦労していましたが、
今は日本でもキャッサバが作られるようになりました」という。
野菜の炒め物やルンダン、ジャックフルーツのカレー煮などバランスのいい5種類のおかずとご飯、えびせん付き。激辛の自家製ソースを後から足してもOK
他にも、竹の子のような食感のジャックフルーツのカレー煮や最近は日本でも認知度が上がってきたルンダン（牛肉のスパイス煮）などが添えられている。日本人には馴染みのない食材も少なくないが、甘辛い味付けはどこか懐かしくさえある。もちろん本場はかなり辛いというが、その辺を加減すれば日本人にはむしろ馴染みやすい料理といえる。
「タイやベトナムなどと違って、パクチーなどのハーブをあまり使いません。
どちらかというとマレーシア料理に似ているかもしれませんね」と大平さん。
『CABE 目黒店』のシェフを務めるのは、インドネシア人のスタミさんだ。日本人のご主人が好むインドネシア料理を中心にメニューを組み立てたというから、本格的でありながら、日本人に愛されるメニューが揃っている。
「故郷の味を懐かしくなって「あれが食べたい」なんて
リクエストをいただくので、実はマニアックな料理もあるんですよ」。
なるほど、それでどんどんメニューが増えた結果、壁にかけられた大きな黒板に料理名がぎっしり並ぶことになったのだろう。
高級住宅街として知られる白金台には、ハイエンドなフレンチやイタリアンレストランが集まっている。その一方で、周囲には各国の大使館が点在する国際色豊かな場所でもある。『CABE 目黒店』は白金台の駅から歩いて12分。緑豊かな東京都庭園美術館と交差点を挟んではす向かいに位置する。
ここにはかつて東京のインドネシアレストランの草分け『せでるはな』があった。それだけに日本のインドネシア料理を語る上でも思い出深い場所となっている。インドネシア大使館もすぐ近くとあって、大使館御用達のレストランでもあるのだ。
アジアのようにゆったりした空気が流れ、どこかノスタルジックな雰囲気を持つ『CABE 目黒店』。初めて食べるのになぜか懐かしいインドネシア料理とともに、ここで過ごす時間もまた味わい深いものになってくれそうだ。
CABE 目黒店
チャベ めぐろてん
住所：東京都品川区上大崎3-5-4 第１田中ビル２F
電話：03-6432-5748
営業時間：11：30～19：00 （ランチは14：30まで）
テイクアウト：11：30～20：30
※2021年9月30日までの営業時間です。
定休日： 日曜・祝日
※掲載価格は税込価格です（2021年9月現在）
