「小岩井農場」の風景。「Azuma Farm Koiwai」があるのはこの敷地内の中央部、写真では広すぎて特定が難しいが、広さは(東京ドーム約640個分に相当)約3,000ヘクタール、約900万坪。名前の「小岩井」は、三菱を支え日本鉄道会社副社長であった小野義眞、三菱の創業者、岩崎彌太郎の長男、三菱社社長である岩崎久彌、明治政府の鉄道庁(当時は鉄道局)長官、井上勝という錚々たる創業者の人物名から頭文字をとった。

古くから日本の大型農場を牽引してきた岩手県の小岩井農場敷地内に、‘Farm Life’ を体感できるリゾート「Azuma Farm Koiwai」が誕生しました。農場の敷地内とはいえ想像を遥かに超える広い敷地を占有するリゾートです。小岩井農場自体は雫石と滝沢にまたがるほど広い敷地を有していますが、「Azuma Farm Koiwai」はその中央部に広がるなだらかな台地に造られ、リゾートの周囲を深い森が囲んでいます。傍らに聳える雄大な岩手山は息遣いが聞こえそうなほどに近く感じ、その懐に抱かれているような安心感と、この美しい山に見守られる印象のリゾートです。

2026年4月23日、東北に桜の満開時期がやってきた春爛漫の頃、「Azuma Farm Koiwai」がドアを開けました。春になり、街中や川辺には桜や他の花々が咲き乱れ、草原や森の緑も新緑が眩しいこの時期。これまで日本にはなかったタイプの‘Farm Life’を体感できるリゾートとして、8ヘクタールの牧草地にヴィラタイプの客室を伴い誕生した「Azuma Farm Koiwai」です。客室は「Forest Villa」が22棟、「Garden Villa」が2棟、全24棟のスモールラグジュアリーリゾートのスタートです。

敷地の主である小岩井農場には、古くから日本の大規模農場を牽引してきた多くのストーリーが秘められています。そして今尚、その存在は日本全国でも知らない人のいないほどの名声を保ち、農場に点在する建物のうち、上丸牛舎構内に建つ明治41年から昭和10年に建設された4棟の現役の牛舎、日本最古と言われる2基のサイロなど、農場全体では 21棟 が重要文化財に指定されています。

農場も森も生き生きと活力に満ち、今では信じられないことですが、この敷地はかつて火山灰に覆われ荒廃した土地だったといいます。明治期から始まった農地改良を経て、岩手山の麓で火山灰に覆われていた不毛の原野が、130年以上の歳月をかけて多様な生命が息づく森へと再生されました。‘元気で美しい森’と思っていた周辺の森は、なんと、人の手が入り、1本1本を手作業で植林した長年の努力が実った結果だと言うのですから、人々の尽力と智慧を巡らせ続け、未来を鑑みて続けられた大作業に敬意を表するしかありません。今は立派な森として、農場を守る防風林としても、また杉、アカマツ、カラマツなど木材を産出する‘活きる森’としても本格的な山林事業へと発展を遂げてきた歴史があるのです。

開業の数日前、背景には岩手山の春の姿、ゲストを迎えるリゾートの玄関前でスタッフが勢ぞろい。印象的な丸太は小岩井の森で育った樹齢100年以上のアカマツの木。
レセプションとラウンジエリア。オールウッドの印象が温かみと緊張感をほぐしてくれる。デスクの後ろに飾られているのは地元の雫石在、ご夫妻で活動する工芸職人作、山ブドウの木の皮で作られた作品。

コンセプトは「A Down To Earth Farm Stay

(大地を感じるファームステイ)

 アカマツ、檜、杉、タモなど小岩井の森に育つ天然木にこだわったヴィラ造りを実行したのは、建築・意匠デザインを担当した三浦史朗氏です。三浦氏は京都を拠点に伝統的な日本建築を手がけてきた‘六角屋’の代表として、細やかな感性と匠の手腕で知られています。その三浦氏が初めて挑んだ本格的リゾート「Azuma Farm Koiwai」について、「樹齢100年以上のアカマツ100本を使い切る…と決めたんです」と意気込みを聞かせてくれました。客室のヴィラ内は寄棟造りの天井が高く開放的であり、それぞれのヴィラの障子の窓からは、森や牧草地、山々など、ヴィラの建つ向きによって違う景色が望めます。

Forest Villa 01内部。デイベッドもあり、バスルームはかなり広くゆったりと過ごせる部屋。寄棟造りの高い天井が美しい空間。65㎡。
Garden Villa 01内部。森の奥に佇む、2棟だけのヴィラ。ウッドデッキに佇めば自然との一体感を感じる。87㎡。

食事はオールデイダイニングが1か所、そしてディナーの営業となる炭火焼きダイニング「OKIBI」があり、いずれも‘Farm Life’らしく、飾らないダイナミックな食事が提供されます。ディナーの際には前菜から始まりますが、ワゴンで運ばれる前菜は、数々の料理のどれをどれだけ選んでも好きなだけ…、ここでも気取らない食事が始まります。

他に、プライベートサウナ棟「Forest Springs」が3棟造られました。何とも広く贅沢なサウナ棟の中には、風呂、サウナ、水風呂、シャワー、デイベッド、薪ストーブなど設えの贅沢さには驚かされました。地域初のラグジュアリーリゾートとしてアクティビティも揃い、乗馬やサイクリング、街の散策や市場巡り、自身で体験ができる伝統工芸品づくりなどもでき、様々に発展を遂げてきた岩手県盛岡市の文化伝統の奥深さを知る旅となりました。

さらに、今回のプロジェクトには、AMANの創始者であるエイドリアン・ゼッカ氏の名前も並んでいます。瀬戸内の生口島にできたリゾート旅館「AZUMI SETODA」が日本でのゼッカ氏の希望をかなえた1軒目であり、ここ小岩井農場では、ゼッカ氏悲願の2軒目の誕生となりました。それらリゾート運営の「株式会社Naru Developments」代表であり創業者でもある早瀬文智氏は、ゼッカ氏と長い時を経て仕事を共にし、ゼッカ氏と哲学を共有する経営者でもあるのです。シンプルでエレガント、上質の素材選びから唯一無二のリゾート造りを成した早瀬氏は、すでに次のリゾート構想に向かっているようです。

朝食7:00 – 9:30(最終着席)、夕食17:30 – 19:30(最終着席)が提供される「ダイニング」。東北の豊かで力強い食材で四季を感じる食体験。
ディナータイムの楽しみはワゴンで提供される前菜から。地元食材で構成される新鮮食材から、好きなものを好きなだけ!
岩手県を中心に広がる豊かな食材、小岩井農場周辺からの山の幸、三陸沖で揚がる海の幸など数々揃う食材をFarm Lifeらしいダイナミックな料理で提供。
サウナ「Forest Springs」の内観。薪サウナ、水風呂、暖炉、リラクシングチェア、デイベッドが備わる89㎡のプライベートサウナ棟が3棟。2時間/55,000円(税込)
大自然の中で自然と遊ぶ数々のアクティビティ、東北の文化や景色を巡る旅、盛岡の伝統工芸に触れる、南部鉄器のクラフトツアー、さらに人気のホースバックライディングや近隣のネイチャーツアーも。季節に応じて数々の楽しみもある。

取材・文/せきねきょうこ

Photo: AZUMA FARM Koiwai

せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数。

http://www.kyokosekine.com

Instagram: @ksekine_official

DATA

AZUMA FARM Koiwai

岩手県岩手郡雫石町丸谷地68-77

📞 050-4561-5181

https://azumafarms.com/ja/

Share

LINK

  • ピアース石神井公園
×
ページトップへ ページトップへ