住まう人の人生を高め、街の価値となるために、こだわりが息づく独創のレジデンスデザインを追求し続けるモリモト。そのマンションを形づくるもの、ひとつひとつもまた、厳選された品質をまとい、住まう人がふれるたびに、深い満足と静かな高揚を感じられるような美意識を宿している。この連載では、モリモトのマンションと共にあるブランドやアーティストのクラフトマンシップに触れる。
自然と建築が調和する「パラッツォ・モルテーニ東京」
モリモトが贈るマンションのエントランスには、イタリアを代表する総合インテリアブランド「Molteni&C(モルテーニ)」の家具が配されている。建築の静謐な構えにモルテーニの家具が寄り添うことで生まれる空間は、モリモトが大切にしてきた美の基準を、より確かなものにしている。
そのインテリアのルーツや哲学を知るため、東京・南青山にあるフラッグシップストア「パラッツォ・モルテーニ東京」を案内してもらった。

パラッツォ・モルテーニ東京は、モルテーニのクリエイティブディレクターであるヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンがデザインした日本初の建築物で、地下1階・地上3階の全4フロア、総面積は1,000平方メートルを超える。
「京都・桂離宮からインスピレーションを受け、障子や梁のライン、その奥に広がる庭の風景……。建築の構成要素と自然が溶け合う、内と外の途切れない繋がりをこの建物でも表現しています」(モルテーニマネジメント本部・ブランドプロモーション担当。以下、同)。
ブランドの哲学である“自然・建築・インテリアのシームレスな調和”を、建築そのものに落とし込んでいるのだという。

フロアごとに変化があるのも特徴だ。1階は、モルテーニが世界中のデザイナーと協業して生み出す新作コレクションを軸に構成したブランドの顔とも言えるエントランスエリア。
地下1階に広がるのは「SALA GRANDE(大広間)」と呼ばれる、リビングと3つのキッチンからなるダイナミックな空間。キッチンエリアとリビングがゆるやかにつながり、大人数のゲストを迎える想定で、豊かな時間を包み込むような設計になっている。

2階は、住空間の中で考えられる用途を回遊しながら体験できるフロア。ぐるりと歩くだけで、ウエルカムスペース、リビングから、キッチン、ウォークインクローゼット、寝室へと朝から夜までの暮らしの流れがそのまま空間として立ち上がる構成になっている。
3階に広がるのは、ヴァン・ドゥイセンが自らの理想とする住まいを表現するフロア。160平方メートルもの広さを持つ最上級のプライベートエリアであり、ヴァン・ドゥイセンの世界観がダイレクトに体現された、邸宅としての完成形がここにある。

パラッツォ・モルテーニ東京はいわゆる“ショールーム”とは一線を画す。
「パラッツォとはイタリア語で邸宅の意味です。その名の通り、モルテーニの思想を余すことなく感じ取るための世界そのものとしてつくられています。キッチンには食器も用意し、コンロやオーブンもすべて実際に使用いただけます」。

実際に触れて感じられるのは、プロダクト自体が美しいのはもちろんのこと、使う人のライフスタイルまでも変化させるのがモルテーニのインテリアだということ。
会話が自然と生まれるソファの配置、そして、所作が美しくなるウォークインクローゼットの機構。忙しさの中で無造作になりがちな日常の動きさえも、上質な体験に変えてしまう。

要所に配置されているのが、モルテーニの「ヘリテージコレクション」の家具だ。ジオ・ポンティの復刻チェアやテーブルが展開されている。
「ヘリテージコレクションには、 時代を超えて愛されるアイコニックなデザインが数多くあります。美しさだけでなく、 人間工学に基づいた座り心地なども追求されており、モルテーニが長年培ってきたデザイン文化やクラフツマンシップを現代へ継承する、象徴的なコレクションです」。
90年を超えて受け継がれるものづくりの精神
ここでモルテーニの歴史を振り返りたい。
モルテーニは1934年、イタリア北部の家具産地ブリアンツァ地方、ジュッサーノで誕生した。アンジェロとジュゼッピーナ・モルテーニ夫妻が営んだ小さな家具工房は、卓越した木工技術と誠実なものづくりで評判を呼び、1947年には60名を超える職人を抱える工場へと成長。建築家やデザイナーとの協働を通じてモダンデザインへと領域を広げ、職人の手仕事と工業生産を融合させながら発展した。
創業から大切にしているのは、家具を単体のプロダクトとしてではなく、暮らしや空間を構成する一部として捉える姿勢だ。人がどのような空間で、どのような時間を過ごすのかを考え、家具だけでなく、キッチンやシステム収納、ワードローブ、ウォールパネルやドアなどのインテリアエレメントに至るまで、空間全体を構成し、一貫した思想のもとで展開している。

イタリアのブランドデザイナーの間では「モルテーニの技術をもってすれば、不可能が可能になる」と語られることがある。その背景には、90年以上にわたり受け継がれてきた職人の知識と技術、そして継続的な研究開発によって磨き続けてきた高度なものづくりがある。その姿勢を象徴するのが、毎年売上の4%(約30~40億円)を研究開発に投資していることだ。家具ブランドとしては異例ともいえる規模で、機構や生産技術の革新を積み重ねてきた結果、現在では100を超える国際特許を取得している。
「研究開発への投資は、デザイナーの複雑な発想や、お客様一人ひとりの住まいに合わせた細かな要望を、安定した品質で実現するための基盤です。また、モルテーニグループには、オフィス空間を手がけるUniForや、キッチンブランドのDadaなど、それぞれの分野で培われた専門性があります。そうした知見も生かしながら空間全体を提案できることが、『モルテーニなら実現できる』と言っていただける理由の一つだと考えています」
創業以来、ファミリー企業として一貫した思想を守り続けてきたことも、ものづくりを支えている。 そのぶれない思想のもとでの積み重ねが、伝統と革新を両立させ、ひとりひとりの暮らしに寄り添うオーダーメイドに近い空間づくりを実現している。
モリモトが描くデザインとモルテーニの哲学

モルテーニは、イタリア建築界の巨匠ジオ・ポンティが1940〜50年代に客船のために手がけた家具デザインを、アーカイブをもとに復刻し、現代によみがえらせている。 国境を越えて航行する客船では、各国の法規制をクリアしなければならず、家具や内装にも防火性や耐久性など厳しい基準が求められる。美しさだけでは成立しない高度な設計領域だ。そうした思想を今に伝えるプロダクトの一つが、モルテーニが復刻した〈D151.4〉である。

オーシャンライナー4隻とクルーズ船2隻のためにアームチェアのデザインを依頼されたジオ・ポンティは、それぞれの船のインテリアに合わせて細部にバリエーションを持たせながら、D.151.4を展開。船上で使用するため、ゆったりとしたプロポーションで揺れのある環境でも安定した座り心地を実現している。
その椅子と同じものが「ピアース四谷Hills」にある。その風格は、空間に静かな重心を与え、エントランスをより優雅に導いている。

もうひとつ、「ディアナコート永福町」のエントランス、ソファの中央に置かれた、コーヒーテーブルにも注目してほしい。

これは、ニコラ・ガリツィアがデザインした DOMINO NEXTコレクションのもの。モルテーニは、各国の建築家やデザイナーとの協業を重ねながらも、ブランドとしての世界観に揺らぎはない。
その背景には、家具を単体ではなく、建築や暮らしを構成する要素として捉える共通の思想がある。 DOMINO NEXTも、 その思想を体現するコレクションの一つだ。
シンプルなフォルムと厳選された素材によって周囲の家具と自然に呼応し、多様な空間に静かに溶け込む。
「ディアナコート永福町」のエントランスに配されたコーヒーテーブルも、DOMINO NEXTコレクションの一例だ。主張しすぎず、しかし確かな存在感で周囲の家具と調和する。
モリモトが考えるデザインとは、暮らしを豊かにする、人生になくてはならないもの。特別なものではなく、生活のいたるところで感じられる美意識だ。住まいと暮らしをデザインするモリモトは、その思想においてモルテーニの哲学と深く共鳴しているのではないか。
モルテーニが創業から90年を超えて守り続けてきた哲学は、邸宅の入口や共用空間で自然に響き合い、住まう人の毎日を静かに、そして確かに豊かにしていく。

パラッツォ・モルテーニ東京
所在地:東京都港区南青山5-16-10
営業時間:11:00~18:00(予約制)
定休日:水曜・祝日
HP:https://www.molteni.it/ja/jp/landing/japan-flagship-store















