手土産に込められているのは、贈る相手に喜んで欲しいという優しい気持ち。それが、贈り手が住む街の逸品であれば、手土産としていっそう特別なものになるはず。
ここでは、大切なあの人の笑顔が浮かぶような、ささやかで愛らしい手みやげをご紹介します。
伝統を継ぐフランス菓子が彩る日々
白山周辺は、大学などが点在する文教エリアであり、江戸の大名屋敷から続く高級住宅街。近くには小石川植物園などの豊かな自然も残っています。
そんな白山に店を構える『エリティエ』は、フランスの街角にあるパティスリーを思わせる、瀟洒な外観が目印。かわいらしい木製の扉を入ると、焼き菓子とバターのおいしそうな香りに包まれます。

くるりと見渡すと、ショーケースには繊細な生ケーキ、クロワッサンなどのパン、たくさんのサブレ、フィナンシェやマドレーヌといったフール・モワルー(柔らかい焼き菓子)など、多彩なお菓子が店内を埋め尽くしています。それらが棚にお行儀よく並ぶ姿はかわいらしく、あれもこれも食べてみたいと目移り必須です。
看板商品は、奥のコーナーでカラフルな存在感を発している10種類あるマカロン。甘みや香りが濃厚な、名産地イタリア・シシリー産のアーモンドを使っています。

「お菓子の世界も医学のようにどんどん進化しています。伝統的なレシピは大切ですが、それだけでなく、現代的な要素も柔軟に取り入れて、よりおいしいものを作っていきたい」そう話すのは店主の藤田智幸さん。

マカロンはフランボワーズ、レモン、ピスタチオ、キャラメル・サレ、バニラ、チョコレート、アプリコット、お茶、ごま、カシスの10種類。6個入りは2087円
藤田さんのマカロンのおいしさの秘密は、試行錯誤の末に辿り着いた“引き算”の美学にあります。かつてはドライフルーツを加えるなど、様々なアレンジを試したそうですが、今はごくシンプルに、コック(皮の部分)とガナッシュ、それぞれのクオリティを研ぎ澄ますことに注力しています。目指しているのは、飽きのこない味、そして、ついもう一つと手が伸びるようなマカロンです。

一番人気は「ピスタチオ」。口に含んだ瞬間にピスタチオの瑞々しい香りが鼻へと抜け、豊かなコクが広がります。ガナッシュとコックが一体となったハーモニーこそ、この店のマカロンの魅力のひとつ。また、カカオ分66%のチョコレートを使用したチョコレート味など、こだわりの素材を使いつつも、どのフレーバーも誰もが食べやすい絶妙なバランスに仕上げられています。

シンプルなマカロンのほか、藤田さんが得意とする「焼き菓子」もおすすめ。その力量は自慢の『ガレット・フォンダン』を食べてみればわかります。このお菓子は、ミキサーなどの機械を使わず、すべて熟練の手ごねによる作業で作られています。手でこねることで生地に余分な空気が入らず、しっかりと密に詰まった仕上がりになるのです。口の中でほろりと崩れる食感は、唯一無二のもの。

しっかりと厚みのあるサブレは、噛めばしっとり、ホロリ、サクサク。軽やかにバターが香る。
藤田さんのキャリアの始まりは、少し意外な「客船の料理人」から。フレンチの厨房で料理人としての修行を重ねる中で、やがてデザートを作る楽しさに魅了されていったといいます。そこで本格的に洋菓子の道へと進む決心をしたのです。
『エリティエ』という店名に込められているのは「引き継ぐもの」という意味。フランス菓子の古き良き伝統を何よりも大事に守りながらも、日々進化を恐れず、
「お菓子の持つ楽しさや面白さを伝えたい」という思いを胸に店を続けてきました。
職人の実直な手仕事が宿るパティスリーが、日常の風景に深く根を張っている。そんな当たり前のような光景こそが、この街で暮らす人にとっての贅沢であり、白山の街の豊かさを象徴しているのかもしれません。

フランス菓子 エリティエ
住所:東京都文京区白山2-29-6
電話:03-3868-0512
営業時間:11:00~19:00
定休日:火曜
https://www.instagram.com/heritier_japan/
※掲載価格は税込み価格です(2026年7月現在)
取材・文 岡本ジュン 写真・豊田朋子














