パリとアート

2018.06.18

未体験のインタラクティブアートをパリで。
チームラボ、フランス人を虜にする。

Vue de l'exposition, teamLab : Au-delà des limites, 2018, Grande Halle de La Villette, Paris

 

暗闇に浮かび上がる壮大な滝、そのまわりに繰り広げられる四季の花、美しく舞っていく蝶。水の流れは私たちの存在を感じて形を変え、別のせせらぎをつくる。そして季節が変わっていく・・・。

 

 

日本をはじめ世界各地でデジタルアートの限りない可能性に挑み、人々を未知の体験へといざなう「チームラボ」。パリで5月中旬から始まった大規模な展覧会がフランスで注目を集めている。場所は、運河と緑の美しい風景の中に国立高等音楽学校や、交響楽団フィルハーモニー・ド・パリの拠点となるコンサートホールなど多彩な文化施設が点在する「ラ・ヴィレット」地区。その施設群の中心「グランド・ホール」約2,000㎡の巨大スペースに、外からは想像のつかないデジタルアート空間が広がっている。

 

 

 

 

「チームラボ」はプログラマ・エンジニア、数学者、建築家、アニメーター、絵師など多彩なスペシャリストから構成される日本発のウルトラテクノロジスト集団。日本ではすでによく知られた存在だが、フランスでは展覧会のオープンにあわせて数々のメディアでも紹介され、いまや子供から大人まで週末を中心に数多くの観客が訪れ、未体験の光景に驚きの声をあげる。

 

 

テーマは「Au-delà des limites(境界のない世界)」。その言葉通り、7つの作品からなるチームラボのアートは、それぞれの作品のあいだにはっきりした境界がない。互いが影響を受け合いながら混ざり合い、しかもひとつのところに留まらず自ら動きだし、人々と関係を持ちながら変化し、見る人と映し出されるアートのあいだの境界がない新しい関係をつくっていく。

 

 

Vue de l’exposition, teamLab : Au-delà des limites, 2018, Grande Halle de La Villette, Paris

 

 

あらかじめ記録された映像を再生するのではなくて、映し出されているのはコンピュータプログラムによってリアルタイムで描かれ続ける光の表現。観客のふるまいに反応してつねに変化していくので、二度と同じ絵を見ることはできないという。

 

 

エントランスを入って最初に出会う作品は『グラフィティネイチャー 山と谷』。ここには作業スペースがあり、観客は動物や花など下絵にそって思い思いにパステルで色と模様をつくっていく。それをスキャンしてしばらくすると、自分の描いた生きものが作品の一部として入り込み、新しい自然の世界が生まれる。

 

 

 

 

訪れたのが平日で子供が少なかったせいもあるが、さすがはフランス人、大人たちも含めまさに老若男女が躊躇なく参加していて、自分の絵が映し出されると「Super !」「Cool !」と声をあげて写真を撮る姿が印象的だ。

 

 

壁で囲まれた空間の中に入ると、日本古来の装束を思わせる出で立ちで楽器を奏でたり踊ったりする無数の半透明の人々。この作品は『秩序がなくてもピースは成り立つ Dancing People and Animals Beyond Borders』。

 

 

Vue de l’exposition, teamLab : Au-delà des limites, 2018, Grande Halle de La Villette, Paris

 

 

一瞬、さまざまな音が絡み合ってひとつの音楽を奏でているように感じるが、ここにはオーケストラのような指揮者はなく、中心も基準もなく、人々はそれぞれ自立して近くの人が奏でる音の影響を受けて動いているらしい。

 

しかも来場者が来ると、それに気づいて反応して演奏を止める。しばらくするとまた楽器を奏ではじめる。一瞬、調和が壊れるが、観客がいなくなる時間がつづくと全体の音にまた調和が生まれていく。時おり登場人物はこの囲まれた空間を抜け出して、外を歩いて行き、また戻ってくる。このすべてが同時進行のプログラムによって変化していくというのだが、その仕組みを考えるより先に、この予想のつかない展開と、自分の動きに反応する世界につい引きこまれていってしまう。

 

 

チームラボのアートと一体になる究極の作品が、展示スペースのいちばん奥に配置された壮大なインスタレーションだ。『憑依する滝 Au-delà des limites』ほかいくつかの作品が組み合わされ、空間全体を満たす。

 

 

Vue de l’exposition, teamLab : Au-delà des limites, 2018, Grande Halle de La Villette, Paris

 

 

滝の水は線ではなく、ほんものの水のように無数の粒子の連続体でできていて、粒子の間に起こる相互作用まで計算して表現されているという。人が作品にふれると、まるで水をさえぎる岩のように水の流れが変わる。そのまわりでは、自然の中では一年でめぐる四季の花々の移り変わりが、一時間のサイクルで繰りかえされる。花たちもまた、人々がじっとしていると多く生まれ、人が花にふれたりその上を歩くといっせいに散っていく。

 

触って花が増えれば単純にうれしいのかもしれないが、咲く花はやがて枯れていくもの。私たちの存在で植物の命も変わっていったりと、どこか人と自然の関係まで問いかけるような作品。それだけに、自分が作品の一部になって静かにしているときに生まれていく花や蝶の姿には、体験してはじめてわかる密かな感動がある。

 

 

 

 

感想を聞いたフランス人の観客も「ここにしばらくじっとして次から次に現れる季節を見ていると、この展覧会の良さがわかってくる」と話していた。ここへ来た人々はみな自然に座り、寝ころがり、中にはすっかり横になって空間とひとつになった時間を楽しむ人もいる。頭で理解するのでなく、五感でふれて、自分がそこに溶け込み、一緒に創りだすアートは、フランス人の心もつかんだようだ。

 

 

 

 

6月21日には、東京・お台場にデジタルアートを常設した美術館「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM EPSON teamLab Borderless」が誕生する。デジタル時代の新しいアートの試みに期待が高まる。

 

 

teamLab : Au-delà des limites チームラボ 境界のない世界

2018年9月9日(日)まで

Grande Halle de La Villette

211 Avenue Jean Jaurès, 75019 パリ、フランス

火~日 10:00 – 19:00 (金・土は22:00まで)

月曜休館

当日券:一般 14.90€、26歳以下 12.90€ ほか

ウェブサイト https://lavillette.com

 

 

杉浦岳史/ライター、アートオーガナイザー

コピーライターとして広告業界に携わりながら新境地を求めて渡仏。パリでアートマネジメント、美術史を学ぶ高等専門学校IESA現代アート部門を修了。ギャラリーでの勤務経験を経て、2013年より Art Bridge Paris – Tokyo を主宰。現在は広告、アートの分野におけるライター、キュレーター、コーディネーター、日仏通訳として幅広く活動。