The Food Crafter

2019.05.15

澄みきった空のような
クリアなお茶割り専門店

お茶ブームがヒ―トアップする中で、日本茶や中国茶の専門店も増えている。しかし、ここまで振り切った専門店はなかなかない。それがお茶にこだわったお茶割りの専門店、酎ハイスタンド練屋だ。

小さなスタンドが秘めた

ハイブローなコンセプト

 

酎ハイスタンド 練屋は、ビルの一角にある極狭スペースを利用した立ち飲み。それもお茶割りの専門店だ。小さな看板はあるものの、ちょっと奥まっているので、うっかりすると通り過ぎてしまいそうだ。

 

黒板に書かれたメニューには、お茶割りが500円、おつまみは200円、300円が主流。これだけみれば庶民的な店なのだが、その実とてもハイブローな一面を持っている。そのギャップについついみんなが引き込まれてしまう。

 

カウンターのみの小さな店舗。

 

空前のサワーブームで、いまや個性的なレモンサワーやハイサワー、ハイボールなどにもたくさんの新しいレシピが生まれている。どこも練りに練ったレシピを掲げ、それを飲み比べるのはとても楽しいにちがいない。しかし練屋の店主、水野さんは考えた。 本当においしいお茶割りってなんだろう?

「追求していくうちに、どんなに工夫したレシピを考え出してもそもそものお茶が美味しくなければそれ以上のものができないと気づいたんです」

 

そう、お茶のポテンシャルこそが最も重要な味のキーポイントだったのだ。そこで、まずはお茶の研究からスタートしたという。あちこちのつてを頼り、日本国内のお茶から中国茶まで手を尽くして探し、そして味わった。

 

左が東方美人ハイ、右が凍頂烏龍ハイ各500えん。見た目の色もずいぶん違う

 

この店のお茶割りの中でも看板メニューは台湾茶を使った2種類。凍頂烏龍ハイは、半発酵の烏龍茶を使っているので、とてもクリアできれいな味わい。スッーと体の中に染み入るような透明感がある。もうひとつの東方美人ハイは、紅茶のような深いコクがふわりと口の中に広がる。

 

 

この他にも、緑茶、抹茶、烏龍茶とその日のオススメが2種類ほど、ジンをお茶割りにしたグリーンジンやレモンサワーもある。面白いのは玄米茶ハイだ。洋上に浮かぶアルプスと言われるほど、標高の高い山が連なる屋久島は良質なお茶の産地。その中でも農薬や肥料を使わない自然栽培のお茶を使って、低温抽出している。

 

 

店主・水野さんが

お茶割りにたどり着いたわけ

 

そもそも水野さんはなぜお茶割りにたどり着いたのか?

 

「レモンサワーのようにほぼ同じ材料を使っても味に変化をつけやすいドリンクと違って

お茶割りは、割り材となるお茶が同じである限りは味の上昇変化の幅に限界があると思いました。

逆に考えると、良い茶葉からお茶を自分で淹れることで多岐に渡る変化を演出することができます。そこで考え出したのがお茶割りの専門店でした」

 

 

これは前職で食品メーカーのコンサルティングに関わっていた時にお茶割りの研究したことがきっかけだったという。

 

お茶割りの研究に熱心な水野さん。

 

水野さんは、プロ仕様の高級な輸入食材を扱う専門商社で働いていたときに、様々な仕事を手掛けるようになっていったという。それと同時に食に対しての興味もどんどん深まり、気になるお店を片っ端から食べ歩くまでになっていった。

 

「お茶割りは、ただお茶として美味しいというだけではだめで、お酒と合わせた相性が重要です。そのためには淹れる時の温度、それを冷やした時の味の変化などを計算して作ります」

 

ちょっとした淹れ方の違いで、お茶の味は目まぐるしく変化する。さらにそれを冷まし、お酒と合わせて味わいを調整する。その試みは、真面目にやろうとすると無限に組み合わせがありそうで、少し考えただけでもひるんでしまいそうだ。しかし、研究家肌の水野さんにとってはそれほど苦にならないようなのだ。だからこそ、この至福のお茶割りが生まれたのだろう。

 

ドライでスイスイ飲める味を追求したレモンサワー500円と鶏肉の烏龍茶煮200円。

 

時々は台湾に出かけてお茶を探すこともあるという。さらに国内でもこまめにいいものを探す努力を続けている。そうやって出会ったお茶は日替わりのお茶割りとして登場する。その度に試行錯誤を繰り返すのだ。

 

「お茶の香りは温かいうちに一番膨らみがあり、冷やせば香りの膨らみは落ち着きます。

その代わりに立ち上がってくる旨みがあったり、余韻があったりするので、

こればかりは実際に試してみるしかないんです」

 

水野さんは淡々と、しかしちょっとうれしそうに語る。

 

「お茶は健康的な飲み物というイメージがあるおかげなのか、うちのお茶割りは、飲み過ぎてしまっても罪悪感がないという方も少なくないんですよ」

 

雑味のないきれいな味わい、飲んだあとに立ち上る気品のある香り。たしかしに、水野さんが作るお茶割りには、「罪悪感がない」という言葉がとても似あうかもしれない。

 

目指すはお茶割り専門店としてのブランド確立。それをクリアしたら、レシピを確立して他の店にも普及させたいという気持ちもある。

 

そのゴールデンレシピの登場はもう少し先になりそうだが、まずはこのお茶割りを飲んで欲しい。

きっとお茶割りのイメージが驚くほど変わるはずだから。

 

 

酎ハイスタンド 練屋

ちゅうハイスタンド れんや

 

TEL/03-6875-6539

住所/東京都練馬区豊玉北6-14-2(目白通り側)

営業時間/17:00~23:00(LO22:30)※平日は18時からになることもあり

定休日/日、祝月 ※不定休あり

 

※掲載価格は税込価格です(2019年5月現在)

 

 

取材&文・岡本ジュン 撮影・名取和久