WHISKY CHASER

2018.04.11

バーでこそ飲みたい
美味しい水割り

春から初夏にかけて、ウイスキーの飲み方でおすすめしたいのが水割り。ストレートほど重くなく、軽快に飲めるところがその魅力。作り方によってもずいぶん味わいが変わるため、今回はBar Woodyの田中さんに美味しい水割りの作り方を教わった。

 

今夜ウイスキーがあったらなら◇第10夜

 

知っておきたい

水割りのルール

 

誰もが知っている、そして一度は飲んだことがあるウイスキーの“水割り”。

しかし、バーにあるような上質なウイスキーならばストレートで飲むべき。

そう信じているウイスキー好きも多いはず。

 

そんな思い込みを吹き飛ばしてくれたのは、

Bar Woodyのオーナーバーテンダー田中雅博さんだ。

 

「水割りはきちんと作れば美味しいんですよ」。

 

確かに、水割りをカクテルと捉えてみるとバーテンダーが作れば美味しくできないはずがない。

 

 

ではどんなウイスキーを水割りで飲めばいいのだろう?

田中さんによれば、水割りにむかないのはシェリー樽の熟成感が強く出ているウイスキーという。

 

「シェリー樽の熟成感が強いと、

水で割った時に樽の渋さが強調されてしまうからです」

 

もちろん、何十年ものという高価なヴィンテージウイスキーも、そのままストレートで飲む方が間違いはない。しかし、それ以外のウイスキーならば、水割りでも美味しく飲めるというのだ。

 

水割りといっても、実は作り方はいろいろあるという。そこで田中さんに美味しい水割りの作り方を教えてもらった。

 

美味しい水割り1 『山崎12年』

氷が入ったスタンダードな水割り

 

飲みごたえのある山崎12年の水割り1,600円

 

氷を入れて水で割るいわゆるスタンダードな水割りは、幅広いウイスキーに応用できる。

今回は香りが華やかで味わいもまろやかな山崎12年を使った。

 

ポイントは最初にウイスキーを氷とよく混ぜてなじませて冷やすこと。氷と冷たい水、ウイスキーの温度が一定に揃うことで美味しさがより引き立つという。また、水を入れたら混ぜないで、最後にウイスキーを少しフロートすると飲むときに香りが立ち上る。

 

(1) グラスに氷を入れてウイスキー30mlを注ぐ(左)。 (2)ステアしてウイスキーを冷たくする(右)

 

(3)40mlの冷水を加える(混ぜない)(左)。 (4)上から少量のウイスキーをフロートする(右)

 

美味しい水割り2 『白州12年』

香りを引き出す特別な水割り

 

白州のすがすがしい香りを味わう。水と一体化した優しい飲み口。
白州12年水割り1,600円

 

次に紹介するのは、田中さんが先輩バーテンダーの伊藤学さんから、かつて直伝されたという作り方。これはBar Woodyのスペシャルでもある。

 

この水割りは他の銘柄にはあまり向かないそうで、白州だけにおすすめだ。

ワインのデキャンタ―ジュの要領で、スワリング(グラスを動かして中のウイスキーを回す)して香りを開かせて楽しむもので、白州の若葉やリンゴのような香りがあってこそといえる。グラスは口の狭いものを使うと香りがより立ち上る

 

(1) デキャンターにウイスキーを30ml注ぐ(左)。
(2) 香りが開くようにスワリングして空気を含ませる(右)

 

(3) 冷たい水を40ml加える(左)。 (4) スワリングして水となじませる(右)

 

(5) 氷の入ったグラスに注ぎ、よくステアしてなじませて冷やす(左)
(6) 上に少量のウイスキーをフロートする(右)

 

 

美味しい水割り3 『ロイヤルロッホナガー12年』

氷を入れない水割り、トワイスアップ

 

甘さが広がるロイヤルロッホナガー12年のトワイスアップ1,300円

 

ウイスキーのプロであるブレンダーは、樽の中の原酒をテイスティングするときに水で割る。アルコール度数60度の原酒を半分の30度になるように水で割り、より味や香りを引き出すためだ。それを応用したのが2倍に薄めるという意味を持つ「トワイスアップ」という飲み方。通常のウイスキーは約40度ぐらいのものが多いので、ウイスキー30mlに対して10mlの水を加えて30度にするといい。

 

(1) グラスにウイスキーを注ぐ(左)。(2) グラスをスワリングして開かせる(右)

 

(3) 常温の水を注ぐ(左)。 (4) スワリングしてなじませる(右)

 

「水で割るけれど、水っぽくならないように作ることが美味しい水割りの条件ですね」

と田中さん。

 

使うウイスキーは常温で構わないが、夏場など部屋の気温が高い場合は、ウイスキーを冷蔵時に入れるのもいいそう。ただし冷えすぎると辛みが立つので、冷凍庫には入れない方がいい。

 

先にウイスキーを開かせて、水と一体になるようになじませる。このひと手間でいつもとは違うバーの水割りになる。自宅でもぜひチャレンジしてみたい。

 

田中さんの柔らかな接客がゆっくりくつろげる

 

左から、限定品の「ハイランドクイーン マジェスティ シングルカスク 23年(Bowmore)」、「ザ・ジョン・ミルロイ・セレクション(Longmorn)」、蒸留所のみで販売する「富士御殿場蒸溜所 Blender’s Choice シングルモルトウイスキー」

 

中身は田中さんがソーダ割のためにブレンドしたウイスキー。
ソーダに負けないスモーキーでしっかりとした味わい。

 

Bar Woody

 

音楽好きの田中さんが選んだブルースが静かに流れているここは、今年2018年に20年目を迎えた。シングルモルトウイスキーからカクテルまでオールマイティに楽しめるが、3種類楽しめる水割りや自家ブレンドのウイスキーのソーダ割など、ここだけのウイスキーの楽しみも多い。静かにお酒を楽しむため、4人以上での利用は不可。

 

住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-10-8 山崎ビル3F

電話:0422-22-0860

営業時間:15:00-23:00(LO.22:30)

定休日:不定休

予算:ウイスキー、カクテルともに900円~

http://www.bar-woody.com

 

※掲載価格は税別価格です(2018年4月現在)

 

             (取材&文・岡本ジュン 写真・貝塚隆)

 

PROFILE  岡本ジュン

“おいしい料理とお酒には逆らわない”がモットーの食いしん坊ライター&編集者。出版社勤務を経てフリーに。「食べること」をテーマに、レストラン、レシピ、お酒、生産者、旅などのジャンルで15年以上に渡って執筆。長年の修業(?)が役に立ち、胃袋と肝臓には自信あり。http://www.7q7.jp/