WHISKY CHASER
バーでこそ飲みたい
美味しい水割り
春から初夏にかけて、ウイスキーの飲み方でおすすめしたいのが水割り。ストレートほど重くなく、軽快に飲めるところがその魅力。作り方によってもずいぶん味わいが変わるため、今回はBar Woodyの田中さんに美味しい水割りの作り方を教わった。
今夜ウイスキーがあったらなら◇第10夜
知っておきたい
水割りのルール
誰もが知っている、そして一度は飲んだことがあるウイスキーの“水割り”。
しかし、バーにあるような上質なウイスキーならばストレートで飲むべき。
そう信じているウイスキー好きも多いはず。
そんな思い込みを吹き飛ばしてくれたのは、
Bar Woodyのオーナーバーテンダー田中雅博さんだ。
「水割りはきちんと作れば美味しいんですよ」。
確かに、水割りをカクテルと捉えてみるとバーテンダーが作れば美味しくできないはずがない。
ではどんなウイスキーを水割りで飲めばいいのだろう?
田中さんによれば、水割りにむかないのはシェリー樽の熟成感が強く出ているウイスキーという。
「シェリー樽の熟成感が強いと、
水で割った時に樽の渋さが強調されてしまうからです」
もちろん、何十年ものという高価なヴィンテージウイスキーも、そのままストレートで飲む方が間違いはない。しかし、それ以外のウイスキーならば、水割りでも美味しく飲めるというのだ。
水割りといっても、実は作り方はいろいろあるという。そこで田中さんに美味しい水割りの作り方を教えてもらった。
美味しい水割り1 『山崎12年』
氷が入ったスタンダードな水割り
氷を入れて水で割るいわゆるスタンダードな水割りは、幅広いウイスキーに応用できる。
今回は香りが華やかで味わいもまろやかな山崎12年を使った。
ポイントは最初にウイスキーを氷とよく混ぜてなじませて冷やすこと。氷と冷たい水、ウイスキーの温度が一定に揃うことで美味しさがより引き立つという。また、水を入れたら混ぜないで、最後にウイスキーを少しフロートすると飲むときに香りが立ち上る。
美味しい水割り2 『白州12年』
香りを引き出す特別な水割り
次に紹介するのは、田中さんが先輩バーテンダーの伊藤学さんから、かつて直伝されたという作り方。これはBar Woodyのスペシャルでもある。
この水割りは他の銘柄にはあまり向かないそうで、白州だけにおすすめだ。
ワインのデキャンタ―ジュの要領で、スワリング(グラスを動かして中のウイスキーを回す)して香りを開かせて楽しむもので、白州の若葉やリンゴのような香りがあってこそといえる。グラスは口の狭いものを使うと香りがより立ち上る
美味しい水割り3 『ロイヤルロッホナガー12年』
氷を入れない水割り、トワイスアップ
ウイスキーのプロであるブレンダーは、樽の中の原酒をテイスティングするときに水で割る。アルコール度数60度の原酒を半分の30度になるように水で割り、より味や香りを引き出すためだ。それを応用したのが2倍に薄めるという意味を持つ「トワイスアップ」という飲み方。通常のウイスキーは約40度ぐらいのものが多いので、ウイスキー30mlに対して10mlの水を加えて30度にするといい。
「水で割るけれど、水っぽくならないように作ることが美味しい水割りの条件ですね」
と田中さん。
使うウイスキーは常温で構わないが、夏場など部屋の気温が高い場合は、ウイスキーを冷蔵時に入れるのもいいそう。ただし冷えすぎると辛みが立つので、冷凍庫には入れない方がいい。
先にウイスキーを開かせて、水と一体になるようになじませる。このひと手間でいつもとは違うバーの水割りになる。自宅でもぜひチャレンジしてみたい。
Bar Woody
音楽好きの田中さんが選んだブルースが静かに流れているここは、今年2018年に20年目を迎えた。シングルモルトウイスキーからカクテルまでオールマイティに楽しめるが、3種類楽しめる水割りや自家ブレンドのウイスキーのソーダ割など、ここだけのウイスキーの楽しみも多い。静かにお酒を楽しむため、4人以上での利用は不可。
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-10-8 山崎ビル3F
電話:0422-22-0860
営業時間:15:00-23:00(LO.22:30)
定休日:不定休
予算:ウイスキー、カクテルともに900円~
※掲載価格は税別価格です(2018年4月現在)
(取材&文・岡本ジュン 写真・貝塚隆)
PROFILE 岡本ジュン
“おいしい料理とお酒には逆らわない”がモットーの食いしん坊ライター&編集者。出版社勤務を経てフリーに。「食べること」をテーマに、レストラン、レシピ、お酒、生産者、旅などのジャンルで15年以上に渡って執筆。長年の修業(?)が役に立ち、胃袋と肝臓には自信あり。http://www.7q7.jp/