おもてなし料理

2018.08.03

涼しげな食卓を作る青磁の器と
猛暑を乗りきるおもてなし料理

今回より、豊田麻子さんと生井理恵さんによる交互連載「おもてなし料理」を開始。豊田さんは器の魅力も存分に味わえる料理を、生井さんは季節感溢れる野菜の料理をご紹介いただきます。

 

昨年10月、サザビーズ香港のオークションで、中国磁器として世界最高額の約42億円で落札されたやきものをご存知だろうか?

11世紀後半から12世紀初頭のたった20年という短い期間に、宮中のための器を焼いた汝窯(じょよう)の青磁で、筆を洗うための器だった。汝窯青磁で現存するものは70点ほどしかないという貴重さから、世界中の注目が集まったのだ。雨上がりの青い空のように澄み、一部ピンクがかった神々しさに魅せられ、かつて作家の川端康成も汝窯の青磁を所有していた。

 

青磁は、今からさかのぼること3400年前、つまり紀元前1400年頃の中国で誕生した。なるほど、中国4千年の歴史とはよく言ったものだ。翡翠のような高貴な色彩の青磁は唐代の皇帝に愛され、民間での使用を禁止されたことから、秘色と呼ばれた時代もあったほど。私はその生い立ちを知る前から、展覧会で青磁に出会うと必ず足を止め、見入ってしまっていた。無邪気で清らかな砧青磁もいいし、掘りがあって深い森のような耀州窯の青磁も素敵。総じて気品と、静かな主張があって、その堂々たる存在感に屈服していたのだと思う。

 

残念なことに長い歴史の中で異民族との戦いが繰り返され、やきものは原型を保つことが難しかった。したがって後世に地中から掘り起こされることが多い。そのような背景で、発掘されたのではなく、来歴が明らかな世界最古のやきものが、日本に存在している。法隆寺献納宝物の青磁盤口四耳瓶(せいじばんこうしじこ)である。そう、まぎれもなく青磁なのだ。734年に光明皇后が法隆寺に丁子香を奉納する際に使った容器で、唐の時代に誕生した。大陸と日本を結びつける世界最古のやきものの伝世品が1000年以上前からすでにこの国にあるとは、青磁との並ならぬ縁を感じる。

 

さて、古い時代の話が続いたが、今回は現代の青磁に、この季節ならではの料理を盛りつけよう。

 

 

 

【冷やしトマトの丸ごとサラダ】

冷やしトマトの丸ごとサラダは、つけ汁につけおくだけなので、つくりおきをおすすめしたい。夏が旬のトマトは、食欲のないときこそ喉を通りやすいので夏バテ対策にも効果的。また、最後に残ったトマト汁と甘いジュレを一緒に流し込むと、さっぱりとした優しい味で気分もリフレッシュできる。この暑い夏を、さわやかな一皿で乗り切りたいものだ。

 

材料(4人分)

・トマト 4個

・白だし 50ml

・水  100ml

・みりん 50ml

・水 70ml

・砂糖 10g

・ゼラチン 1枚(1.5g)

 

 

1、トマトの下処理をする。トマトのヘタをくり抜き、お尻側に庖丁で十文字の切れ目を入れる。お湯をたっぷり沸かし、トマトを10秒ほど入れる。

 

氷水にトマトを入れ、十文字の部分から皮をはがす。きれいにはがれない場合は、再度お湯に入れるとはがれやすくなる。

 

 

2、トマトのつけ汁をつくる。ジップロックに白だし50mlと水100mlを合わせる。ここへ湯剝きしたトマトを入れて一晩冷蔵庫で休ませる。つけ時間が長いほうが味が染み込んで柔らかくなる。

 

 

3、ジュレをつくる。事前にゼラチン1枚を氷水で戻しておく。みりん50ml、水70ml、砂糖10gを鍋に入れ60度になるまで加熱。ここへゼラチンを溶かし、容器に入れて冷やし固める。

 

 

固まったジュレはスプーンでクラッシュして使う。

 

 

4、器にトマトを盛り、ジュレをかけてできあがり。トマトは事前に6等分にカットしておくと食べやすい。お好みで花穂紫蘇をかけてどうぞ。

 

ところで、ひとえに青磁といっても青から緑の色調に幅がある。今回は好みの青磁に出会えるとっておきのお店を紹介しよう。

創業1894年 有田焼の老舗窯元 深川製磁の隠れ家的コンセプトショップFUKAGAWA-SEIJI The House。有田では稀な自社内で生地、釉薬、絵具の調合から仕上げに至る迄一貫して行っていることから、豊富なバリエーションの青磁に出会うことができる。都会の喧噪を忘れさせる清らかで広々とした空間には、日々を彩るヒントがたくさん詰まっていた。ぜひ自分らしい器探しに訪れてみてはいかがだろう。

 

FUKAGAWA-SEIJI The House六本木

住所:‪東京都港区六本木3-15-11

‪TEL:03-3589-5516

営業時間:‪11:00~19:00

定休日:火曜日

https://www.facebook.com/FukagawaSeiji.TheHouse

 

飛青磁 左よりアルテ・プレートとアルテ・ウァン

 

 

料理人 豊田麻子

美術史を専攻し、都内の博物館に勤務。その後美味しいもの好きが高じてフランス随一の美食の街、リヨンのInstitut Paul Bocuseで料理を学び、ミシュラン三ツ星レストラン L’assiette champenoiseの厨房で研鑽を積む。

地方を旅しながら歴史と文化を肌で感じ、心に残った食べものを再現することが愉しみ。

Blog: https://ameblo.jp/asako-toyoda/

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