The Food Crafter

2018.01.31

野菜も食器も
一緒くたに愛したい

神楽坂の静かな路地に面したギャラリーのようなショップには、器と野菜と調味料が並んでいる。食べるという大切な行為を、楽しみながら日々を過ごせたら。そんな気持ちをかきたててくれる小さなショップを紹介。

 

眺めているだけで

料理がしたくなる空間

 

初めてこの店を訪れた時、店内は潔いほどすっきり、広々としていた。オープン当初のことだ。広い空間には陽だまりのように明るい日差しが落ちていて、江藤夫妻とそのお母さまの3人がニコニコと気持ちよく迎えてくれた。

 

テーマは器と野菜。ギャラリーのような空間には、作家の器とともに野菜や調味料などが違和感なく並んでいる。料理好きにとっては眺めるだけでも楽しい場所だ。

 

長年、雑貨や器の開発やプロデュースにかかわってきた店主の江藤智津子さんは、『器は料理の髄を引き出す需要な存在』と考えている。人生の次のステップとして、今度は自分の好きなものに少し寄せた方向へと進むことを決めてこの店を開いた。

 

 

 

 

「自分が好きなものがベースですが、普段に使いたくなるもの、

その中でもシンプルなだけでなく、使うことで楽しくなる器を選んでいます。

その器があるから、ちょっと頑張って料理をしようと思ってもらえたらいいですね」

 

開店から3年目を迎え、店内は棚が増えて賑やかに商品が並んでいる。ちょうど、『マグ&スープの器展』という企画展の最中で、シンプルではあるが、ワンポイントの絵付けが効いているもの、テクスチャーに特徴があるものなど、個性豊かな器が楽しげ並ぶ。

 

 

左/真っ白な器にアクセントのブルーラインがきれいな器は作家・町田裕也さんのもの。右/たくさんのスープ皿も個性いろいろ。

 

 

日本の伝統調味料に加え

アジアの調味料も

 

驚いたのは食品の棚で、以前からあった新潟・笹川流れの塩の量り売りや醤油などの定番に加えて、かなりアイテム数が充実を見せていた。醤油や味噌、オイルなどのほか、オイスターソースや豆板醤、ナンプラーまで幅広く多彩にある。アジアの調味料は、ナチュラルなものを探してもなかなか出会わないのでこれはうれしい。

 

 

料理のこともいろいろ教えてくれる江藤さん

 

 

「お弁当で使うので調味料をいろいろと探しているうちに、どんどん増えたというか…」

 

ちょっとはにかむように微笑む江藤さん。E-toでは実はお弁当も販売している。その調理のために調味料が必要になるという訳。お弁当のごはんは玄米、おかずは店で扱っている有機や自然農法の野菜をふんだんに使っている。ただし肉も魚もOK。ビーガンやマクロビといったカテゴリーではなく、健康的で美味しいお弁当は知る人ぞ知る人気商品のひとつだ。予約で購入する人も多く、お昼頃にはすべて売り切れてしまう。

 

 

素朴だが味わい深い旬の野菜や果物が並んでいる。発送も可能だ。

 

 

「野菜は有機栽培や自然農法のものです。でも安全だからいいという訳ではなく、

その中でも美味しいと思えるものを選ぶようにしています」

 

ゆったりと語る江藤さん。無添加やナチュラルにこだわるあまり、美味しさを忘れて行き過ぎているものは避けているという。

 

「決め手は美味しさ」ときっぱり。

 

 

店頭の木箱に並ぶ果物はフォトジェニックで思わず買いたくなる。

 

 

あちこちから届く野菜や果物は

リピーターの多い人気商品

 

そもそも江藤さんが野菜の農家さんと縁を持ったのは前職がきっかけ。器や雑貨の開発やバイヤーを手掛けていたので、器の撮影に使うための野菜を探すようになったからだ。そこで出会った野菜は、無農薬はもちろん、時には有機肥料も使わない自然農法のものもあり、甘みを強調したり、酸味や苦みを抑えて食べやすくするということを一切しない、あるがままの味わい。現在は長野、徳島、関西方面から新鮮な野菜が届けられている。

 

定番のキャベツやじゃがいも、ニンジンなどに加えて洋野菜があるのも頼もしい。必要なものだけよりも、そうした洋野菜があることでより料理を楽しんで欲しいという気持ちが込められている。エントランスの木箱に並んだ果物は、ピカピカというよりもちょっとゴツゴツしていたり、素朴な風貌だがそれがいかにも美味しそうだ。

 

 

あると便利な美味しい缶詰。塩は量り売りで。

 

 

「一人暮らしの人や働く主婦は時間がない時もありますよね。

そいうときに助かるものも置いてあげたい」

 

温めるだけのスープやカレー粉、袋麺、缶詰などもカバーしている。それらもしっかりと吟味され、添加物などのない安心なもの、かつ江藤さんがこれなら美味しいと思ったものがセレクトされている。

 

E―toでは、食べること、料理すること、それにかかわる器、野菜、調味料がすべて同じスタンスにある。そこから“料理は楽しい”というメッセージを訪れる人に届けているのだ。

 

 

 

住所: 東京都新宿区矢来町138 ムカサ第一ビル101

電話:03-6457-5009

営業時間:11:30~19:00

定休日:月(祝日は営業)

 

※掲載価格は税別価格です(2018年1月現在)

 

  (取材&文・岡本ジュン 撮影・くまぞう)

PROFILE  岡本ジュン

“おいしい料理とお酒には逆らわない”がモットーの食いしん坊ライター&編集者。出版社勤務を経てフリーに。「食べること」をテーマに、レストラン、レシピ、旅行などのジャンルで15年以上に渡って執筆。長年の修業(?)が役に立ち、胃袋と肝臓には自信あり。http://www.7q7.jp/