Complicated Watch

2018.05.02

精悍で優雅なパンテールの貌が
移ろいゆく時のように現れては消える

“王の宝石商にして宝石商の王”であるハイジュエリー&ウォッチメイカーのカルティエ。パンテール(豹)は、その最も有名なデザインモチーフだ。時計に限っただけでも、野生味あふれるパンテールの姿をゴールドとダイヤモンドで立体的に表現した贅沢なシークレットウォッチや、自動巻きローターのボールと戯れるモデルなど、これまで数々の名作が生まれてきた。そしてこの春、このモチーフを持つ驚きのアートウォッチが誕生した。その名は「リベラシオン デュヌ パンテール ウォッチ」。精悍なパンテールの顔が、文字盤に現れては消える腕時計だ。

 

Vol.11

『CARTIER  ROTONDE DE CARTIER REVRATION D’UNE PATHTERE WATCH』

ロトンド ドゥ カルティエ レヴェラシオン ドュヌ パンテール ウォッチ

 

独創的で華麗な製品が続々

加速するカルティエのクリエーション

 

1847年にルイ・フランソワ・カルティエが師のジュエリー工房を引き継いで創業したカルティエは、これまで171年の歴史の中で、ジュエリーでもウォッチでも歴史に残る偉大なクリエーションを成し遂げてきた。

 

こうしたクリエーションの歴史を改めて確認して感銘を受けるのはその継続性だ。いつの時代も過去のアイコンやモチーフ、技術に常に新しい光を当て、時代に先駆けた新しいクリエーションにつなげる。過去のクリエーションの価値を理解し、軽佻浮薄に過去のものを簡単に否定したり捨て去ったりすることはない。過去にこの連載でご紹介したミステリークロック、ミステリーウォッチもその好例。製品ひとつだけにスポットを当てても壮大で魅力的なストーリィが立ち現れる。

 

その一方で、時計でもジュエリーでも、新しい技術や技法の開発に積極的だ。毎年1月にジュネーブで開催されるS.I.H.H.(国際高級時計展)では、常に人を感動させる新しい技術、技法を採用した複雑ウォッチやハイジュエリーウォッチが披露される。

 

 

 

 

今回は特にハイジュエリーウォッチの分野で印象的な最近のクリエーションを辿り、さらに今年2018年に発表された感動的な新作をご紹介しよう。

 

 

“震えるダイヤモンド”が生む至高の煌めき

ハチドリと戯れるパンテールの親子

 

ここ2、3年のハイジュエリーウォッチの中でまずご紹介したいのが、2015年のS.I.H.H.で発表されたこの「バロン ブルー ドゥ カルティエ セルティ ビブラン ウォッチ」だ。

 

 

バロン ブルー ドゥ カルティエ セルティ ビブラン ウォッチ
手巻き。ケース径42mm。ブリリアントカットダイヤモンドをセッティングしたホワイトゴールドケース&ブレスレット。20個の限定製造(すでに完売)。

 

 

20本のみ製作されたこのハイジュエリーモデルは、文字盤上に6つの同心円状に整然とセッティングされた最高品質のブリリアントカットダイヤモンドが、5年の歳月をかけて開発された新しい技法でセットされている。

 

そして驚くべきことに着けた腕を動かすとこのダイヤモンドが整然と並んだまま、だがごくわずかに「ふるふる」と震え、そのたびにダイヤモンドのひとつひとつがキラキラと煌めくのである。

 

ホワイトゴールド製のケースやブレスレットにもダイヤモンド、つまり合計で15.66カラットものダイヤモンドが華麗な煌めきのハーモニーを奏でるのである。これは女性はもちろん、美しいものを愛する男性にもぜひ知って欲しい、未来に語り継ぐ価値のある画期的なクリエーションだ。

 

続いてご紹介したい、記憶に留めて頂きたいもうひとつのクリエーションが、カルティエの永遠のモチーフのひとつ、2016年の「パンテール エ コリブリ オンデマンド パワーリザーブ ウォッチ」。

 

 

パンテール エ コリブリ オンデマンド パワーリザーブ ウォッチ
手巻き。ケース径42.75mm。ブリリアントカットダイヤモンドをセッティングしたホワイトゴールドケース。

 

 

この腕時計の文字盤上には、ダイヤモンドとブラックラッカーで描かれた一頭の気高く美しいパンテールが、黄金の翼を持つコリブリ(ハチドリ)に寄り添われながら身体を伸ばして寛いでいる。

 

そしてリュウズ上のボタンを押すと、予想もしなかったドラマが始まる。パンテールの懐からゴールドの子どものパンテールが姿を現し、コリブリを追い払ってしまうのだ。しかもこのコリブリは、時計のエネルギー源であるゼンマイの残量を表示するパワーリザーブインジケーターの機能も兼ねている。ボタンを押したときのその高さで、ゼンマイの残量を現すのである。

 

これも、どんな人にもぜひ知ってほしい、語り継ぐ価値のあるカルティエの画期的なクリエーションだ。

 

 

パンテールの貌で、移ろい行く

無常の時の流れと神秘を表現

 

 

 

そして2018年のS.I.H.H.でも、ハイジュエリーの歴史でこれまでに例のない画期的なコンセプト、技法を備えたカルティエの画期的なクリエーションがまたひとつ披露された。今回ご紹介する「レベラシオン ドュヌ パンテール ウォッチ」である。

 

 

 

 

腕に着けてこの腕時計を動かすと、無数の細かなゴールド製のビーズが文字盤上にいくつも現れ、さらに精悍なパンテールの貌が浮かび上がる。

しかし無数のゴールド製ビーズで構成されたこの貌は、ほんの少し腕を動かすだけではかなく流れ去ってしまう。

腕を動かすたびに、この哲学的で優雅なドラマが文字盤の上で上演されるのだ。

 

 

 

 

移ろいゆく時のはかなさ、無常さを表現したこのモデルの魅力を、あなたにもぜひ知ってほしいと思う。

ジュエリーウォッチの分野で、時を超えて語り継ぐ価値のあるカルティエの画期的なクリエーションが、今年もまたひとつ誕生した。

 

 

 

 

カルティエ

レベラシオン ドュヌ パンテール ウォッチ(ブラックダイヤル)

文字盤上を流れるゴールド製の微少なビーズとパンテールのモチーフを刻んだサファイアクリスタル製の文字盤が作り出す、「休むことのない時のドラマ」を備えたハイジュエリーウォッチ。/手巻き/ブリリアントカットダイヤモンドをセッティングした18Kピンクゴールドケース/ブラックラッカーダイヤル/ピンクゴールド製の動くビーズ/ケース径37mm/ケース厚6mm/レザーストラップ/シースルーバック/日常生活防水/約42時間パワーリザーブ/世界限定10本/年内発売予定/11,500,000円(税抜)/12,420,000円(税込)

※グリーンダイヤル、レッドダイヤルは各世界100本限定。

 

問い合わせ先

カルティエ カスタマーセンター TEL.0120-301-757

cartier.jp

 

(取材&文&写真・渋谷ヤスヒト)

 

PROFILE 渋谷ヤスヒト

ジャーナリスト、エディター、メディアプロデューサー。モノ情報誌編集部員時代の1995年から現在まで、スイス2大時計フェアや国内外のあらゆる時計ブランドの取材を一貫して続ける腕時計のエキスパート。他にもクルマ、カメラ、家電、IT機器、ファッション、トラベル、食まで、国内外のあらゆるモノとコト作りの現場取材を続けている。