世界のワインめぐり

2018.06.25

ニューヨーカーの避暑地
ハドソンバレーでゆったり過ごす休日

ニューヨーク州でワインが作られているのをご存知だろうか?

 

洗練された大都会のイメージが強いニューヨーク州だが、広大な州内にはワイン造りに適した土地も多く実はカリフォルニア州、ワシントン州に次ぎ、ワインの生産量は全米で第3位。ワイン造りの歴史も西海岸より古く、飲めばそのクオリティの高さに驚く人も多い。

 

夏は蒸し暑く、冬は厳しい寒さが特徴のニューヨーク。マンハッタンに住む友人から「靴底が溶けるほど暑いよ」と忠告を受けるほど暑い夏が今年もやってくる。

 

ニューヨーカーがマンハッタンの夏の暑さから逃れ、避暑地として向かう場所の一つがハドソンバレーだ。ハドソンバレーはニューヨーク州のワイン生産地として名高く、アメリカ国内のワイン作りにおいて最も古い歴史を持ち、 そのルーツは1600年代にまでさかのぼる。

 

今回より、「世界のワインめぐり」と題し、各地の個性的なワイナリーやワインの魅力をお届けしたい。第1回目は、都会の喧騒から逃れ大自然に囲まれた川のほとりでゆっくりとワインテイスティングを楽しむことができる、ニューヨーカーの憩いの場「ハドソンバレー」へ ワインテイスティングの旅へ出かけた。

 

 

ニューヨーク州の主なワイン生産地ハドソンバレーのワイン畑

 

 

アメリカ最古の歴史を持つ

「ブラザーフッド ワイナリー」

 

約200年の歴史を持つ貫禄のあるセラー

 

 

 

 

まず訪れたのはアメリカ最古のワイナリーであり、ひときわ知名度の高い「ブラザーフッド ワイナリー」(Brotherhood Winery)。

フランスからの移民であったジョン・ジャック氏(John Jaques)が1839年に「ブルーミング・グローヴ・ワイナリー」(Blooming Grove Winery)という名で創業し、最初のビンテージワインを販売。 その後2人の息子がワイナリーを継承し、さらに事業を拡大した。

1920年代には禁酒法が施行され、多くのワイナリーが閉鎖に追い込まれる中で合法の医療用ワイン、キリスト教の聖餐用ワインを製造することで経営を持ちこたえたのだという。現在は「ブラザーフッド ワイナリー」と改名し、ワインの生産を続けている。

 

セラー見学がなく、試飲のみの訪問スタイルを受け付けるワイナリーも多くある中で、ワインツーリズムに力を注ぐここでは、地下セラーの見学ツアーに参加することができ、アメリカ最古のワイナリーの歴史から生産過程まで詳しい説明が受けられる。手作業で掘られたという地下のセラーには創業当時の写真や使用された道具が保管、展示され、ずらりと熟成樽が並ぶ姿は圧巻だ。

 

見学の後は約7種類の自社ワインを試飲。なかでもホワイトハウスのワインリストにも選定されているリースリングは是非試飲しておきたい。また、セラー見学の他にも伝統的なぶどうの足踏み体験など、季節ごとに魅力的なイベントも行われており、併設された店にはニューヨークのお土産にぴったりのワインも販売されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

セラー見学後は施設内 のレストランで食事が可能。ワインリストには自社ワイン以外も豊富にそろう

 

 

ブラザーフッド ワイナリー(BROTHERHOOD WINERY)
100 Brotherhood Plaza Dr, Washingtonville, NY 10992
電話:(845)496-3661
ウェブサイト:http://www.brotherhood-winery.com

 

肩の力を抜いて楽しめる

アットホームな「ホワイトクリフ ワイナリー」

 

 

 

次に訪れたのは自然の中にこぢんまりと佇む「ホワイトクリフ ワイナリー」(White Cliff Winery)。ぶどう栽培からワインの生産に到るまで、創業者が一から手がけたという家族経営のワイナリーだ。建物に入るとすぐに試飲カウンターがあり、 気さくなスタッフの説明を聞きながら試飲ができる。隣で試飲する人々との距離も近く、気づけば会話が生まれるアットホームな空間が広がっていた 。

 

多数の賞を受賞している白ワインの中で 気になったのはカナダのアイスワインに使用されるヴィダル・ブランの白ワインだ。すっきり軽い飲み口が心地よい。

「ホワイトクリフ ワイナリー」では、他にもテーブルワインとして活躍しそうな気取らないワインが豊富に揃う。また、リースリングはアメリカで最も重要な国際ワインイベントの一つ、サンフランシスコ・インターナショナル・ワインコンペティションでダブルゴールド賞(審査員全員が金と評価したものに贈られる)を受賞している。

 

 

 

 

晴れた日にはテラス席で景色を楽しみながらワインテイスティングが楽しめる

 

 

ホワイトクリフ ワイナリー(White Cliff Winery)
331 Mckinstry Rd, Gardiner, NY 12525
電話: (845) 255-4613
ウェブサイト:http://www.whitecliffwine.com/

 

ニューヨーク州ご当地 ハードサイダー

「ウォーウィックバレー ワイナリー」

 

 

 

ハードサイダーはリンゴ以外にも梨や、長期熟成のものなど豊富な種類が揃う

 

 

最後に向かったのはワイナリーとハードサイダー醸造所を構える「ウォーウィックバレー ワイナリー」(Warwick Valley Winery)。ここではワインの他にご当地ハードサイダーが楽しめる。

ハードサイダー(フランスではシードルと呼ばれる)とは、リンゴを発酵させて造った発泡酒で、ほんのり甘いリンゴの風味と爽快な炭酸の喉越しは夏の暑い日にぴったりだ。近年、 人気が再燃し ニューヨークでも注目を集めている。

 

カジュアルなレストランが併設された店内では音楽の生演奏など、 ワインテイスティング以外の要素も充実しているので一味違った気分を楽しむことができる。ワインやサイダーと合わせて自家製釜で焼いたピザも是非お試し頂きたい。

 

 

テイスティングはワイナリーの自家製釜で焼いたピザと共に

 

 

ウォーウィックバレー ワイナリー(Warwick Valley Winery)

114 Little York Rd, Warwick, NY 10990

電話: (845) 258-4858

ウェブサイト:http://www.wvwinery.com/

 

 

自然とアートが調和する場所 

「ストーム キング アートセンター」

 

約61万坪の広大な敷地内の作品は徒歩以外にもレンタルバイクや敷地内トラムなどで見学が可能

 

 

 

 

ハドソンバレーへの旅の途中に立ち寄った「ストーム キング アートセンター」(Storm King Art Center)は大自然そのものがアートになった野外美術館だ。1960年に創立され、約61万坪の広大な敷地内にはおよそ100人以上の著名なアーティストによる彫刻作品が展示されている。

ゆっくりとハドソンバレーに滞在できる時間があれば 旅の途中に立ち寄ってみてはいかがだろう。澄んだ空気の中でアート鑑賞と美味しいワインを楽しんだ後はリフレッシュした気分で毎日のルーティーンワークへ戻れることだろう。

 

ストーム キング アートセンター(Storm King Art Center)
1 Museum Rd, New Windsor, NY 12553
電話 (845) 534-3115
ウェブサイトhttp://stormking.org/

 

 

マリーニ あゆみ
Ayumi Marini

 

福岡県出身。イタリアソムリエ協会認定ソムリエ・元客室乗務員。モデル、IT企業、留学など経験後、結婚を機にイタリアへ移る。ワインの宝庫ピエモンテとトスカーナでワインを学びプライベートワイナリー訪問のコーディネートを行う 。現在はアメリカ在住。旅とワインのブログではおすすめワイナリーや旅の様子を発信中。https://asmwine.com/