Complicated Watch

2017.08.09

可憐な小鳥が腕時計の中で
優雅に美しく踊りさえずる

腕時計はもはや「時を知る道具」ではない。あなたの時間を豊かに彩り、輝かせ、ドラマチックなものに変える、美しく感動的なアート作品だ。名門時計メゾンは現在、この認識の下、かつてない美しさとメカニズムを持つ芸術的な腕時計の製作に取り組んでいる。第2回となる今月は、知る人ぞ知る伝説のブランド「ジャケ・ドロー」の超絶作品をご紹介しよう。

 

Vol.2

『JAQUET DROZ AUTOMATES COLLECTION THE CHARMING BIRD』           

ジャケ・ドロー オートマタ コレクション チャーミング・バード

 

王侯貴族を魅了した伝説のブランド

ジャケ・ドロー

 

あなたは「シンギングバード ボックス」をご存じだろうか。もしあなたがオルゴール好きなら、どこかでご覧になったことがあるかもしれない。ケース横のボタンを押すと魔法のように突然小さな小鳥が飛び出し、上下左右に小さな身体を動かしながら美しい声でさえずり、再び魔法のように姿を消す。また、小さな鳥かごの中央に小鳥が留まり、さえずるタイプのものもある。スイスの老舗オルゴールメーカー「リュージュ」を代表する製品のひとつとしてご存じの方もいらっしゃるだろう。

 

機械仕掛けとはいえ、見た目はまるで生きている小鳥そのまま。しかも、さえずる声はとても機械とは思えない優しくて自然なもの。だから、18世紀にこの「シンギングバード」が登場したとき、人々は驚愕し絶賛した。

 

当時は百科事典が誕生し、科学的な世界観が確立されつつある時代。「シンギングバード」は生物を機械仕掛けで再現した、まさに科学的な思考に基づく画期的な発明品であり、その評判は一気に世界中に拡がった。腕に覚えのある時計師たちは競ってこの「シンギングバード」の製作に取り組み、さまざまなタイプのシンギングバードやシンギングバードを内蔵した美術工芸品が製作された。そしてヨーロッパの王侯貴族や富豪たち、さらに数千キロの距離を隔てたインドのマハラジャや中国・清王朝の皇帝までがコレクションや贈答品として競って買い求めたのである。

 

ジャケ・ドローが1785年頃、中国市場向けに製作したシンギングバード機構を搭載した懐中時計。ゴールドケースにエナメル装飾が施され、さらにルビーとパールがセッティングされている。

 

1780年頃、2羽がデュエットでさえずるシンギングバードを搭載した鳥かご型の時計。鳥かごの底が時計のダイヤルになっている。また6つのメロディーを奏で、12のテンポを備えた音楽機構も搭載している。

 

こちらは現在、オルゴール・ブランドとして名高いスイス・リュージュ社が製作・販売するシンギングバード ボックス「Bynance」。シースルーケースのため、小鳥をさえずらせる空気を作る「ふいご」(正面左)が動くのも鑑賞できる。ふだんは小鳥は蓋の下に隠されている。シースルーでないタイプもある。ケースサイズは横118×奥行73×高さ42mm。1,300,000円(税抜)/1,404,000円(税込)

 

こちらは2羽の小鳥が鳥かごの中で仲良く歌う「Volie’ere de la Cour」。本物の鳥の羽根を1枚1枚手作業で植え付けて作られた小鳥が、美しい声で交互にさえずる。サイズは直径165×高さ300mm。750,000円(税抜)/810,000円(税込)

 

問い合わせ

リュージュ販売 03-5155-6104

www.reuge.co.jp