デザインインフォメーション

2017.09.04

日本人建築家の設計した住宅に焦点を当てた
「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」

清家清設計《斎藤助教授の家》1952の原寸大模型(一部) 写真:木奥惠三

世界で高く評価されている、日本人建築家の設計した住宅建築に焦点を当てた展覧会「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」が、東京・竹橋の東京国立近代美術館で開催中だ。圧倒的な量の模型や図面、写真や映像などを通して日本の家の特殊性を浮き上がらせる本展覧会は、昨秋からローマ、ロンドンと巡回し、いよいよ本国に上陸。伝説的な名作住宅の原寸大模型も展示され、見ごたえのある内容となっている。

 

(左)丹下健三 住居(1953)写真提供:内田道子
(右)西沢立衛 森山邸(2005)Ⓒ ホンマタカシ

 

 

歴代の熱量の高い住宅作品を

テーマで捉えて一挙に展示

 

「建築界のノーベル賞」といわれるプリツカー賞の受賞者を数多く輩出する日本は、世界的に注目されている。

 

そして、日本ではこうした著名な建築家も多くの住宅建築を手がけてきたことが、やはり驚きを持って見られている。というのは、欧米の国では建築家の手掛ける設計は公共施設が中心で、日本のように個人住宅も手掛けることが少ないためだ。

 

そして戦後の日本の建築家は個人住宅の設計を通して家族の暮らし、さらには都市や社会を見つめ、膨大な情熱を注いで珠玉の住宅を数々と生み出した。本展覧会では、日本の建築家56組による75件の住宅建築が、400点を超える模型、図面、写真、映像などを通して紹介される。

 

会場に入って最初のコーナーで紹介されるのは、戦後日本の住宅建築を取り巻く状況と、建築家との関わりについて。「持ち家政策」のなかで建築家が大量生産のためのプロトタイプに取り組むものの、次第に住宅が一大産業となるにつれて建築家との隔たりが大きくなることが、貴重な映像を交えて解説される。

 

(左)藤本壮介 House NA(2011) Ⓒ Iwan Baan
(右)伊東豊雄 中野本町の家 / White U(1976) 写真:多木浩二

 

代わりに目立ってきたのが、建築家が手掛ける個性的な個人住宅だ。これらの住宅は本展覧会で、1940年代、50年代というように時系列でまとめられず、テーマで分類されている。

 

「プロトタイプと大量生産」「土のようなコンクリート」「家族を批判する」など13のテーマに分けて展示することで、日本の住宅建築の特徴を浮かび上がらせているのだ。こうした分類によって、例えば伝統的な家屋と1950年代の家、2000年代の家が同じテーマで関係づけられることになる。

 

テーマ分類や構成のために、チーフアドバイザーとして迎えられたのはアトリエ・ワンの塚本由晴氏。自ら住宅を多く手がけ、建築家による住宅に造詣も深い塚本氏は、系譜ではなく、家同士の関係性のなかで生まれる「批評空間」に着目し、テーマを掘り下げていったという。会場デザインも、ローマ展に続いてアトリエ・ワンが担当している。

 

こうして紹介される住宅を見ていると、私たちの暮らしは時代背景の影響を受けながらも、変わらない要素があることがわかる。そして、建築家たちは過去の事例を参照しながら発展させてきたことが感じられる。歴史とテーマをクロスオーバーしながら日本の住宅の特徴を捉えられることが、この展覧会で得られる最大のメリットだ。

 

清家清設計《斎藤助教授の家》1952の原寸大模型(一部) 写真:木奥惠三
日本の伝統とモダニズムを融合した名建築。惜しくも取り壊されてしまったが、竣工当時のみずみずしい姿が蘇った。

 

清家清設計《斎藤助教授の家》1952の原寸大模型(一部) 写真:木奥惠三
今回の展示では建物に使われた材料や素材が忠実に再現され、設計図書に指定されていた色までも再現されている。

 

 

実物大のリアルな模型で

住宅を見て触って体感する

 

テーマに沿って、大小さまざまな模型など展示物を見ていくと、会場後半には〈斎藤助教授の家〉(1952年)という住宅の「実物大模型」が現れる。

 

この住宅は日本を代表する現代建築家の清家清が手がけたが、近年惜しくも取り壊されたもの。バウハウスの創設者、ヴァルター・グロピウスに「日本建築の伝統と近代技術との幸福な結婚」と高く評価され、清家氏が自国の事務所に招待されたという逸話も残っている伝説の住宅だ。

 

展示される建築模型というと白い模型が多い中で、今回の展示では建物に使われた材料や素材が忠実に再現されている。設計図書に指定されていた色も再現されており、竣工当時のみずみずしい姿を見ることができる。

 

実際に空間の中に身を置き、木やレンガの肌合いを触って確かめ、復原された棚の使い勝手や椅子の座り心地を確かめられる、貴重な機会である。水平に広がるプランや外に向かって開放的な雰囲気も味わうことができ、モダニズムの美学と日本的な伝統美との融合を感じることができるはずだ。

 

(左)2016 年11月に開催されたローマのMAXXI 国立21世紀美術館での展示風景 Ⓒ シモーナ・フェラーリ 写真提供:アトリエ・ワン
(右)藤森照信 ニラハウス(1997)Ⓒ 増田彰久

 

夏休みは過ぎたとはいえ、キュレーターや建築家によるトークイベントやギャラリートーク、シンポジウムなど、会期終了までイベントも引き続き多く予定されている。

 

そのほかにも緩衝材「プチプチ」で工作するワークコーナー「プチプチ・ガーデン」、最小限の家といえるテントを美術館の敷地で張って過ごす「アーバンキャンプ」などは、子どもも一緒に参加して楽しめるだろう。すでに若手建築家ワークショップでつくられた「夏の小屋」も、自由に体験できる。

 

日本の建築家による多様な住宅を、多角的に見ることのできる本展覧会。合わせて制作されたカタログでも、挙げられたテーマに沿って比較しながら住宅を概観できる。現代にも通じるこれらのテーマについて、私たちも思い巡らせてみよう。そして、これらのテーマの延長線上に、これからも革新的な住宅が生まれていくことに、大きな期待を寄せたい。

 

(取材・文/加藤 純)

 

(左)石山修武 開拓者の家(1986)Ⓒ 石山修武
(右)池辺陽 住宅No.76(1965)Ⓒ 大橋富夫

 

日本の家 1945年以降の建築と暮らし

会期:2017年7月19日(水)~10月29日(日)

会場:東京国立近代美術館 1階 企画展ギャラリー

開館時間:10:00~17:00(金・土曜は21:00まで) 入館は閉館30分前まで

休館日:月曜日(9/18、10/9は開館)・9/19(火)、10/10(火)

観覧料:一般1200円、大学生800円、各種割引有り ※高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料

住所:東京都千代田区北の丸公園3-1

問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

http://www.momat.go.jp/am/exhibition/the-japanese-house/

関連記事一覧