デザインインフォメーション

2016.05.10

MIYAKE ISSEY展
三宅一生の仕事

〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

国内外で最も名を知られている衣服デザイナーのうちの一人、三宅一生。常に革新的で個性的な衣服を、きっと目にしたことがあるだろう。彼のこれまでの精力的な活動の集大成を見せる「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」が、六本木の国立新美術館で開催中で、連日多くの人が押し寄せている。エネルギッシュなパワーの源泉や制作過程に触れることのできる内容で、幅広くオススメできる展覧会である。

 

上:21ヶ国のユニフォームが展示された「仮想オリンピック」。下:三宅一生氏の代表作であり手法の一つ「プリーツ」による多種多様な作品を展示。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

上:21ヶ国国のユニフォームが展示された「仮想オリンピック」。下:三宅一生氏の代表作であり手法の一つ「プリーツ」による多種多様な作品を展示。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

 

約45年間にわたる三宅一生氏の多彩な活動を一挙に紹介

各種クリエイターとのコラボレーションも見どころ

 

自身の名を冠した「ISSEY MIYAKE」や「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」などのブランドで知られる、三宅一生氏。

 

本展覧会では、活動の初期から最新プロジェクトまでの仕事を通して、三宅氏の考え方やデザインアプローチが紹介される。大きく3つの部屋に分かれて展示される衣服は百数十点に及び、オブジェ展示や映像作品の上映など、盛りだくさんの内容となっている。

 

ルーム Aではファッションショーのランウェイのように細長く延びる空間に、三宅氏の原点ともいえる1970年代の衣服が展示される。刺青の図柄を用いたジャンプスーツ「タトゥ」に始まり、1枚の布からつくられ身体にはおる「コクーン・コート」など、12の衣服が整然と並ぶ。

 

一つひとつは今見ても斬新で活き活きとしており、そばに近寄って見ていると私たちに雄弁に語りかけてくるかのようだ。そして、個性的な衣服が場の雰囲気をつくるという面白い体験ができる。

 

ここで浮き彫りにされるのは、三宅氏の服づくりの根底にある「1枚の布から服をつくる」というコンセプトや、服を着る人の身体によって生じる反応、また素材のリサーチや開発に対する飽くなき姿勢である。それは現在に至るまで三宅氏に通底する思想であり、一貫したデザインアプローチとなっている。

 

刺青の図柄を用いたジャンプスーツ「タトゥ」。1970年に死去したジミ・ヘンドリックスとジャニス・ジョプリンへのオマージュ。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

刺青の図柄を用いたジャンプスーツ「タトゥ」。1970年に死去したジミ・ヘンドリックスとジャニス・ジョプリンへのオマージュ。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

 

 

続くルーム Bは壁の一角が一面光る、真っ白な空間。荘厳さをも感じる抽象的な空間に、ステージのようなスペースが設けられている。ここでは1980年代の三宅氏の中心的な課題となった、身体に焦点を合わせた服のシリーズが紹介される。

 

「ボディ」と呼ばれる、胴体部のみを覆うなめらかなフォルムの衣服は、どこか未来的。ここにも、繊維強化プラスティックや合成樹脂、ラタンなどの素材や各種技術への探求が見られる。

 

ルーム AとBの空間デザインを手掛けたのは、三宅氏と20年来の付き合いという吉岡徳仁氏。衣服が着せられている「グリッド・ ボディ」は、本展のために新たに製作されたもの。

 

三宅氏の「1枚の布」に応答して、「1枚の板」からレーザーで切りだされた365のパーツで構成されている。ルーム AとBとでは展示内容に合わせて、ボール紙と透明樹脂とで使い分けられた。どちらも、三宅氏が創作する衣服と身体との関係をいっそう強調するものとなっている。

 

ISSEY MIYAKE, Tatoo, Spring/ Summer 1971, 1970  Photo: Hiroshi Iwasaki

ISSEY MIYAKE, Tatoo, Spring/ Summer 1971, 1970 Photo: Hiroshi Iwasaki

ISSEY MIYAKE, Linen Jumpsuits, Spring/ Summer 1976, 1975  Photo: Hiroshi Iwasaki

ISSEY MIYAKE, Linen Jumpsuits, Spring/ Summer 1976, 1975 Photo: Hiroshi Iwasaki

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ISSEY MIYAKE, Blade of Grass Pleats, Spring/ Summer 1990, 1989  Photo: Hiroshi Iwasaki

ISSEY MIYAKE, Blade of Grass Pleats, Spring/ Summer 1990, 1989 Photo: Hiroshi Iwasaki

1325. ISSEY MIYAKE, Square Wool, Vol.4, 2015  Photo: Hiroshi Iwasaki

1325. ISSEY MIYAKE, Square Wool, Vol.4, 2015 Photo: Hiroshi Iwasaki

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボディ」と呼ばれる、胴体部のみを覆うなめらかなフォルムの衣服は、どこか未来的。衣服が着せられている「グリッド・ ボディ」は、展覧会のために新たに製作された。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

「ボディ」と呼ばれる、胴体部のみを覆うなめらかなフォルムの衣服は、どこか未来的。衣服が着せられている「グリッド・ ボディ」は、展覧会のために新たに製作された。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

 

博覧会のように楽しく、ワクワクさせる展示

伝統と革新、未来を感じさせる衣服の制作過程に迫る

 

ルーム Cは、今回の展示室のなかで最大のもの。広い空間に、三宅氏の衣服が有機的に並べられた光景は圧巻だ。いくつかのテーマごとにまとめられたコーナーは、お互いに影響し合って刺激的な雰囲気となっている。

 

三宅氏の多彩な世界観をよく表しているのが、「プリーツアイランド」と題された「島」。三宅氏の代表作であり手法の一つ「プリーツ」による多種多様な作品が並び、どこかの無人島で独自に進化した生物たちによる物語が生まれているようだ。

 

そして本邦初公開となるのが、「仮想オリンピック」という展示。三宅氏は、バルセロナ・オリンピックに合わせて、リトアニアの代表選手団公式ユニフォームを制作したことがあった。そこから派生させて作成した、21カ国のユニフォームがずらりと展示されている。

 

初めてといえば、三宅氏独自の「製品プリーツ」の制作過程を展示するのも初の試み。生地を服のかたちに裁断縫製してから布に襞(ひだ)を付ける加工を行う機械が、会場に運び込まれた。どのようにひだが付けられるかについては脇のディスプレイで動画により紹介され、規則的な機械の音が会場に鳴り響く。

 

プリーツのシリーズでは、世界的なグラフィック・デザイナーの故・田中一光氏の作品をモチーフとした衣服の制作プロセスも展示。平面から立体へと変化していく様子も、興味深い。なお、ルーム Cの会場デザインは、グラフィック・デザイナーの佐藤卓氏による。制作過程を鮮やかに見せる展示は、佐藤氏のお家芸だ。

 

衣服の素材についても解説をつけて展示。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

衣服の素材についても解説をつけて展示。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

 

世界的なグラフィック・デザイナーの故・田中一光氏の作品をモチーフとした衣服「IKKO TANAKA ISSEY MIYAKE」の制作プロセスも展示。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

世界的なグラフィック・デザイナーの故・田中一光氏の作品をモチーフとした衣服「IKKO TANAKA ISSEY MIYAKE」の制作プロセスも展示。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

 

三宅氏が藤原大氏と共に開発した「A-POC」の展示では、衣服ができる様をロールを宙に持ち上げてダイナミックに再現。コンピュータプログラムにより、1本の糸から一体成型で服が生み出される過程を、直感的に理解できるようにしている。

 

「衣類はどんな素材からでもつくることができる」。そう信じている三宅氏が活用してきた素材も、実作と共に示される。世界中の伝統的な素材を新たな方法で用いる一方で、現代的な生地の活用も追求。それぞれの素材の風合いや背景への知識を深めながら、見ることができる。

 

2010年に発表された「132 5. ISSEY MIYAKE」は、工学アルゴリズムを応用した折りの構造で、幾何学的なかたちに折りたたむことができる衣服。「陰翳 IN-EI ISSEY MIYAKE」として照明器具にも展開している様子からは、三宅氏のデザインの現在進行形と未来を垣間見ることができる。

 

この「132 5. ISSEY MIYAKE」の展示では、最後に2分の1のスケールで3種類の衣服とトルソーが用意されていて、映像に従って実際に着付けを体験可能。何度やっても驚くこと必至だ。展示を堪能した後には、映像ディレクターの中村勇吾氏が手掛けたインスタレーションや、数本のフィルム作品が待っている。

 

展示全体を通して感じるのは、三宅氏が本当に衣服デザインの巨人であり、偉大な発明家であるということだ。

 

装飾的で時代に流される「デザイン」にとらわれず、ジャンルを横断した革新的なアイデアを実現し続ける。その強力なバイタリティから、時代を超越する名作がこれからも生まれるに違いない。

 

(文・加藤 純)

 

「A-POC」の展示では、衣服ができる様をロールを宙に持ち上げてダイナミックに再現。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

「A-POC」の展示では、衣服ができる様をロールを宙に持ち上げてダイナミックに再現。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

 

「132 5. ISSEY MIYAKE」の展示では、最後に2分の1のスケールで3種類の衣服とトルソーが用意され、映像に従って実際に着付けも体験可能。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

「132 5. ISSEY MIYAKE」の展示では、最後に2分の1のスケールで3種類の衣服とトルソーが用意され、映像に従って実際に着付けも体験可能。〈国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景/撮影:吉村昌也〉

 

三宅一生(みやけ・いっせい)

衣服デザイナー。1938年広島県生まれ。1970年三宅デザイン事務所設立。1973年よりパリコレクションに参加。「1枚の布」のコンセプトを基に伝統的な技と最先端の技術を応用しながら独自の服づくりを行う。2010年文化勲章受章。

 

MIYAKE ISSEY EXHIBITION: The Work of Miyake Issey,  Main Visual

MIYAKE ISSEY EXHIBITION: The Work of Miyake Issey, Main Visual

MIYAKE ISSEY展:三宅一生の仕事

会期:2016年3月16日(水)~6月13日(月)

会場:国立新美術館 企画展示室2E

休館日:火曜日

時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで) 

   ※入場は閉館の30分前まで

料金:一般1300円、大学生800円

   ※2016年5月18日(水)は「国際博物館の日」につき入場無料

住所:東京都港区六本木7-22-2

電話:03-5777-8600 (ハローダイヤル)

http://2016.miyakeissey.org/

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