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2017.11.22

焙煎からドリップまですべておまかせ
究極の全自動コーヒーマシン

秋が刻一刻と深まりを見せ、趣味をじっくり楽しむなど、長い夜をまったりのんびり過ごすにもちょうどいい季節。そんな秋の夜長にぜひ楽しんでほしいのが、ミル、ドリップだけでなく、焙煎機能まで備えたコーヒーマシンだ。

 

“熱とその制御”のエキスパートが

手掛けた“全部入り”

 

サードウェーブコーヒーが牽引したコーヒーブームも一段落、豆や淹れ方にこだわったコーヒーのおいしさは誰もが知るまでになった。そして今、注目を集めているのが、専門店の味を家庭で再現できるプロスペックの道具やコーヒーマシン。外で覚えたあのおいしさを自宅でも味わいたい、という声の高まりを受け、挽きたての味わいが楽しめるミル付きモデルやハンドドリップさながらの“蒸らし”機能にこだわるモデルなど、ハイスペックマシンが続々登場。高価格帯ながらも、売れ行きは好調のようだ。

 

そんななか、ミル(豆挽き)・ドリップ(抽出)機能に止まらず、なんと焙煎機能も備えて自動化したコーヒーマシンが誕生。それが、「カフェロイド」だ。

 

開発したのは、長野県・安曇野に本社・工場を構える、日本電熱(株)。創業から71年、“熱とその制御”を事業の核として業界をリードしてきた専門メーカー。まさに温度管理が重要な“焙煎”はお手のもの、というわけなのである。

 

 

日本電熱(株)は、日本で初めてシーズーヒーターを開発したメーカーでもある。

 

 

「当社は創業以来、シーズーヒーターや遠赤外線ヒーターなど各種ヒーター開発、製造を主力して、蒸気発生装置、IH加熱反応釜などを扱ってきました。コーヒーメーカーやホットプレートなど家電製品の自社開発や、家電メーカーへOEM供給をしていたこともあるのですが、2005年に一旦撤退。またいつか挑戦してみたいという思いを抱えつつ、昨今の市場動向やコーヒー愛好家の増加を加味して今なら、と、再参入を果たすことになりました」(同社営業部・荒木 類さん)

 

焙煎、ミル、ドリップ…

すべての工程を「見える化」

 

ミル、ドリップのみならず、生豆の焙煎機能までを一台に凝縮し、すべての工程を自動化した家庭用メーカーは世界初。しかも、主要工程に関わるパーツを正面に配置し、焙煎からドリップまでの全行程を実際に正面から見て取れるというのも、このマシンのすごいところ。

 

薄緑色の生豆が高温で熱され、えも言われぬ香りとともにだんだんと香ばしい色に変わっていったかと思うと、その下の透明カップに豆が落ちて粉砕され、ドリッパーへ。その後、ゆっくりとドリッパーの台が回転しながら、コーヒードームめがけ、湯がぽとぽとと落ちていく。粉がドーム状に膨らんでいく様子、そしてサーバーへとコーヒー液が抽出されていく様子……その変化をつぶさに見られるのはとてもエキサイティングな体験だ。

 

「各工程を可視化したのも、大きなポイントです。ハンドドリップの醍醐味のひとつにバリスタの手技がありますが、機械でも同じように、生豆からコーヒーに変わる工程を目の当たりできるのって、すごくうれしいし、楽しいと思うんです。ちょっとした遊び心で、ドリップ時、本体内側に設置されたLEDが3色に点灯する演出も取り入れているんですよ」(前出・荒木さん)

 

 

LEDカラーは、レッド、ブルー、グリーン含め、全6パターン。

 

 

もちろん、究極の一杯を抽出するため、各工程にも一家言アリ。次にそのこだわりぶりについて、順を追って紹介していこう。

 

ハンドドリップを超える

技とアイデアが随所に

 

この「カフェロイド」、焙煎からドリップまでの全行程は自動化されているが、「焙煎のみ」「ミル+ドリップ」「ドリップのみ」というように、必要とする工程のみを設定することも可能。つまり、市販のコーヒー豆(焙煎済み)やコーヒー粉も利用できるというわけだ。

 

まずは、右上のタッチパネルから希望の工程を選択する。「焙煎」「ミル」「ドリップ」の工程は、それぞれイラストでアイコン化されているので、直感的な操作が可能だ。さらに焙煎度合や、挽き具などの組み合わせも選べるが、こちらはあらかじめ18種類のレシピがプリセットされているので、最初はそこから選ぶのがおすすめ。ただし、もちろんマニュアル設定もでき、それがこのマシンの魅力のひとつでもあるため、慣れてきたら、ぜひ自分好みの調整を加えたオリジナルレシピに挑戦してみたい。

 

 

タッチパネルで希望の工程やレシピをセレクト。

 

 

(左)焙煎を左右する経過時間、温度は6段階で設定可能。(右)ドリップのお湯の温度は1℃単位で設定できるほか、焙煎度や抽出量も選べる。これらの情報を受け、注湯パターンが内部で最適化される仕組み。

 

 

レシピが決まったら、その分量に合わせて水と生豆、ペーパーフィルターをセット。焙煎からドリップまで全自動で行う場合、ここから先はすべて機械におまかせとなる。

 

 

高温焙煎を実現する生豆の投入口。手前に前傾しているので、焙煎の様子が正面から見える。

 

 

最初の焙煎工程は、約3分の予熱に始まり、焙煎が12分ほど、その後、5分ほどかけて焙煎された豆の冷却が行われる。焙煎時の温度を最高250℃まで上げられるのもポイントで、これによりしっかりムラなく煎り上げられ、豆本来のおしいしさが引き出されるのだという。実はこの高温焙煎の機能をコーヒーメーカーに内蔵するというのが非常に難しい。中途半端な温度では、十分に煎り上げられず、結果、味にも影響が出る。その課題を見事にクリアできたのも、まさに“熱とその制御”に精通する専門メーカーのノウハウがあってこそ、なのだ。

 

そして、焙煎、冷却が済んだ豆がその下のポットに自動投入されたところで、ミルがスタートする。ミル刃は、臼状の刃で豆をすり潰すように挽く臼刃式、かつ、コーヒーの油分にも強いセラミックミル。豆の粒が均一に挽け、抽出時の味ムラができにくいのも特徴だ。臼刃式のセラミックミルは高価なため、ほとんどが業務用機に採用されていて、家庭用マシンに使われるのは珍しいという。

 

 

耐久性が高く、豆を均一に挽ける国産の臼刃式セラミックミルを採用。

 

 

その後、挽かれた豆がドリッパーに落ち、注湯がスタート、ふたつのノズルから粉の中央部をねらって、少量の湯がぽとぽとと落ちていく。そして適度に蒸らされたかな、と思った次の瞬間、驚きの出来事が!

 

なんとドリッパーの台がゆっくり回り始めたのである。実はこれ、ハンドドリップ抽出でキモとされる“の”の注湯を再現したもの。お湯の注がれる量やタイミングもすべて最適化されているため、機械まかせにして、人間が淹れたのと同じような抽出ができるのだ。

 

 

ふたつの注水ノズルから、プログラムされた量、タイミングで注湯。ドリッパーは、プロの愛用者も多い“点滴式”のコーノ式ドリッパーを採用する。

 

 

だが、驚きはそれに止まらなかった。重量センサーが規定量の抽出を感知したところで今度は、ドリッパーとサーバーの間に“余剰液受け”が移動してきて、エグ味や苦みの元となるコーヒーの余剰液をカット。一般的なコーヒーメーカーでは、フィルターを通ったコーヒー液がそのまますべて抽出されるため、微細な粉などまだ一緒に抽出されて、それがコーヒーの味を損なうことにもなるが、カフェロイドは、雑味の元となる余剰液をカットできるので、コーヒーのおいしさを損なわず、本来あるべきクリアな味わいを楽しめるのだ。

 

 

ドリッパー台下の余剰受けにより、微粉やアクなど、雑味の元となる余剰液をカット。

 

 

ちなみにこちらのマシンに保温機能は付属していない。保温は便利な機能ではあるけれど、確実にコーヒーの味を劣化させる。これもまたカフェロイドのこだわりなのである。

 

「カフェロイドのコンセプトは、至高のコーヒータイムを五感で体験してもらうこと。生豆や焙煎後の豆に“触”れ、生豆が焙煎される時のはぜる音を“聴”き、豆の色の変化やドリップ時の粉の膨らみといった全行程を“観”る。さらに生豆や焙煎、ドリップの各工程で味わえる本格的な“香”りを楽しみ、焙煎度、挽き具合、湯温などにこだわったオリジナルレシピの“味”わう。この“観”“触”、“聴”、“香”、“味”、という五感を駆使して、最高の味わいと感動を味わっていただきたいと思います」(前出・荒木さん)

 

気になる価格は38万8800円(税込み)。確かに安い買い物ではない。だが、実際にデモを見て、説明を聞き、試飲してみると、その価格に十分納得できるどころか、むしろ安くも思えてくる。それぞれの工程でマニュアル操作が可能で、自分好みの味わいを追求できるのも大きな魅力。単においしいコーヒーを味わうだけでなく、その過程もひっくるめて楽しめるカフェロイドは、コーヒー愛好家の好奇心と向上心をくすぐる、唯一無二のコーヒーマシンだ。

 

 

 

日本電熱「カフェロイド」

焙煎から抽出まで自動で行う場合の所要時間は約30分。焙煎前の予熱と焙煎後の冷却がその時間の半分を占めるため、平日はミルから、休日は時間をかけて焙煎からなど、使い分けするのがおすすめ。抽出量は一杯120ccで、最大4杯分。W400×H610×D240㎜、約1.8kg。11月27日発売。

 

問い合わせ

日本電熱TEL.03-6721-5320  http://www.caferoid.jp/

 

(取材・文/原口りう子)