Complicated Watch

2017.08.09

230年の時を超えて

シンギングバードが腕時計に

 

そして200年あまりの時間が流れた1995年、「ジャケ・ドロー」は、世紀を超えた価値を持つその時計やオートマタを敬愛する人々の手で時計ブランドとして現代に甦った。そして2000年、世界最大の時計グループ企業スウォッチ グループの傘下となってから、ジャケ・ドロー父子の遺志と情熱を継承した活動を開始する。2010年、彼の生まれ故郷であるラ・ショー・ド・フォンに高級時計のアトリエと、ジャケ・ドローの伝統技術を受け継ぐ装飾芸術工房「アトリエ・オブ・アート」を設立。彼らが情熱を注いだオートマタ(複雑からくり機構)を搭載するコンプリケーションウォッチなどの開発に取り組んだのだ。

 

そしてジャケ・ドロー父子がシンギングバードを発明してから230余年。2013年にブランドが取り組む挑戦的なプロジェクトとして発表され、2015年に製品版「チャーミング・バード」が登場。ピエール・ジャケ・ドローが18世紀に発明したシンギングバード機構を超小型化して組み込んだ、時計と機械の歴史に新たな1ページを開くオートマタ・ウォッチである。

 

ケース右上、2時位置のプッシュボタンを押すと、このモデルのために特別に開発された2つの特許機構、3本のサファイアクリスタル製のシリンダーで構成される超小型の「ふいご」と、非接触式マグネティック・ガバナー(調速機構)が作動。圧縮された空気が笛に送られ、この文字盤6時位置のドームの中に棲むアオガラが、羽ばたき身体を動かしながら規則正しく正確な音色の美しいさえずりを、いつでも好きなときに聴かせてくれる。

 

6時位置で動く小鳥のオートマタと、そのさえずりを作り出す3つのサファイアクリスタル製のシリンダーメカニズム。小鳥にも細密なペイントが施されている。

 

空気を取り込む。空気を圧縮する。音色を調整する。3本のシリンダーが3つの役割を分担して、可憐なさえずりが生まれる。

 

ジャケ・ドロー父子の伝説と精神を受け継ぎ、さらに発展させたこのオートマタ・ウォッチは、時計界で最も権威のあるアワードのひとつ「ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ」で2015年に「メカニカル エクセプション(超越的なメカニズム)賞」に輝いている。その製作数はごくわずか。ジャケ・ドロー父子の作品のように、世紀を超えた傑作として目にする人を感動させ続けるに違いない。

 

 

 

COLLECTION AUTOMATES CHARMING BIRD

ジャケ・ドロー コレクション オートマタ チャーミング・バード

 

自動巻き/ホワイトゴールドケース/ケース径47mm/アリゲーターストラップ/非防水/世界限定8本

サファイアクリスタルガラスダイアル 18Kホワイトゴールドケース シンギングバード機構、自動巻き機械式ムーブメントとプッシュボタンによる自動起動システム 自動巻きムーブメント サファイアガラス製ホイッスルシステム 38時間パワーリザーブ 直径47mm 世界限定28本。予定価格43,370,000円(税抜)/46,839,600円(税込)

 

問い合わせ先

ジャケ・ドロー ブティック銀座 03-6254-7288

www.jaquet-droz.com

 

(取材&文・渋谷ヤスヒト)

 

PROFILE 渋谷ヤスヒト

ジャーナリスト、エディター、メディアプロデューサー。モノ情報誌編集部員時代の1995年から現在まで、スイス2大時計フェアや国内外のあらゆる時計ブランドの取材を一貫して続ける腕時計のエキスパート。他にもクルマ、カメラ、家電、IT機器、ファッション、トラベル、食まで、国内外のあらゆるモノとコト作りの現場取材を続けている。