アーバンインフォメーション

2017.08.07

都心で非日常を体験、泊まれるギャラリー
東麻布「NIBUNNO(ニブンノ)」

麻布十番や東京タワーの近くにありながら比較的静かなことから、隠れ家的な穴場として住む人が急増中の東麻布。麻布は近年個性的なギャラリーが増えているエリアでもありますが、6月に4年間限定でオープンした「NIBUNNO(ニブンノ)」は、"泊まれるギャラリー"というこれまでにはない新しいコンセプトの施設です。アートに囲まれリラックスできる特別な空間で、非日常を体験してみませんか?

 

 

ロビーはまるでギャラリーの雰囲気。ホテルではない泊ることができるギャラリーで、アートに出会うことができます。

 

 

台日アートの架け橋的存在に。

新感覚の泊まれるギャラリー「ニブンノ」

 

今回取材に訪れたのは、東麻布の住宅街の中に"泊まれるギャラリー"として6月10日にオープンした「NIBUNNO(ニブンノ)」です。

 

ニブンノは食事付きのフルサービスを提供する従来型のホテルとは異なり、客室自体がギャラリーとして機能するこれまでにはない新感覚の宿泊施設。廊下や客室、ラウンジには東京藝術大学を中心とした美大生の作品や、台湾人アーティストによる作品が個展という形で約3か月ごとに入れ替わりで展示されます。

 

なぜ日本と台湾かというと、代表である李章聖(リショウセイ)さんが「日本にもっと台湾アートの魅力を伝えたい」と考え、日本と台湾の交流の場になることを願って生まれた施設だからです。

 

グラフィックデザインのブランディングをメインビジネスとする李さんは2011年に留学のため来日し、同じ台湾人留学生仲間でアートディレクターの林唯哲(リンウイツ)さんらとデザイン事務所「BXG株式会社」を立ち上げました。

 

 

ゲストルームの表示もGALLERYになっています。

 

 

1階がアートショップにもなっていて、気に入った作品を購入できます。

 

 

ホテルは1階がアートショップ、2〜3階が宿泊スペース、4階がBXGのオフィス、5階が食事や歓談を楽しむためのラウンジになっています。客室は2階と3階にそれぞれ1室ずつの贅沢なつくりで(計2部屋)、宿泊するとワンフロアが貸し切り状態というまさにギャラリーを独り占めする感覚。ギャラリーにいながらリラックスできて作品の中で眠れるなんて、アート好きにはたまりません。

 

アート作品は、2階には日本人アーティスト、3階には台湾人アーティストの作品が主に展示されています。取材時にはちょうど、2階に東京藝大出身のイラストレーター・山田だりさんの88星座をモチーフにした作品が、3階には台湾在住のアーティスト・陳青琳(チェンチンリン)さんのダイナミックで迫力あるイラスト作品が展示されていました。

 

真っ白に統一されたシンプルでモダンなゲストルームだからこそ、1点1点の作品が空間に映えます。宿泊するのはアート好きな方はもちろん、部屋から見えるほど東京タワーを間近に望む立地のため、東京観光の拠点として宿泊する外国人観光客も多いのだとか。

 

 

2階のゲストルーム。真っ白に統一されたモダンな空間にアーティストの作品を展示。室内は、高さ130㎝を境にそれより下が白壁、上が解体されコンクリートの打ちっぱなしになっています

 

 

(左)ゲストルームにはちょうどイラストレーター・山田だりさんの作品を展示。
(右)トイレはスペース確保のため、ユニークな直角のドアになっています。

 

 

むき出しの鉄骨も空間デザインとして活かす。

「解体」というコンセプトから生まれた空間づくり

 

「ニブンノ」のビル自体は、それまで自動車部品の倉庫として使われていたものをリノベーションして今の形になっています。設計を手掛けたのは、隈研吾都市設計事務所に10年間在籍し、この夏から独立して「虎尾+謝建築設計」を立ち上げた建築家の虎尾亮太氏。

 

興味深いのは、新たに装飾してつくり込むのではなく「解体するデザイン」というテーマを軸に取り壊す過程もデザインの一部と考え、ほぼ解体の作業だけで空間をつくり上げていること。

 

そのため館内を回ってみると、あちこちに壁に描かれた設計のための数値や文字、穴の跡、客室にもむき出しになった鉄骨などがそのまま残っています。壁を剥がす作業も、すべて自分たちの手で行なっていったそうです。本来の倉庫を「1」、取り壊された状態を「0」とするならば、現在の姿は「1/2」。「ニブンノ」という施設名はここからきているんですね。

 

さらにゲストルームは、高さ130㎝を境にそれより下が白壁、上が解体されコンクリートの打ちっぱなしになっています。虎尾氏によると、

「ベッドや椅子に座った時には、目線の高さが白壁以下に収まり、落ち着きが感じられるように130cmという高さを設定した。この寸法は、ギャラリーとしての緊張感と、ホテルとしての快適さを考えて決めたもの」だそうで、この二つの空間を利用して、アーティストはざまざまな展示を行っています。

 

 

3階のゲストルームでは、台湾のアーティスト・陳青琳さんの迫力あるイラスト作品を展示。

 

 

(左)窓からは東京タワーが望めます。
(右)ゲストルームへの廊下にも作品が展示されています。

 

 

実はこの施設、もともと「4年間限定」ということでオープンしたもので、ちょうど東京オリンピックを迎えたあとの2020年9月には取り壊しが決まっているんです。素敵な空間なだけになんとも残念ですが、李さんは「4年後にまた新たな形でスタートできれば」とも話していました。

 

宿泊費は平日が22000円、休日が24000円〜ですが、1部屋に最大4人まで宿泊できるので、グループで宿泊すればその分部屋代も割安に。食事は付きませんが、近くにコンビニやスーパーがあるので買い物にも不自由しません。

 

アートに囲まれながらの"非日常体験"が味わえる「ニブンノ」。館内は清潔感にあふれ、リラックス空間としても十分に満足できるつくりになっているので、アート好きな方もそうでない方も、4年後に解体されてしまう前にぜひ足を運んでみてほしい空間です。

 

(取材・文/開 洋美、写真・川野結李歌)

 

 

5階のラウンジは、食事や歓談などができるフリースペース。

 

 

(左)ラウンジにもアートが展示されています。
(右)左端が設計を手がけた建築家の虎尾亮太氏。右から2番目が代表の李章聖さん、その右横がアートディレクターの林唯哲さんら、スタッフのみなさん。

 

 

東麻布で隠れ家的な雰囲気の「ニブンノ」。アートに囲まれてリラックスできる特別な空間です。

 

 

NIBUNNO(ニブンノ)

住所:東京都港区東麻布1-8-2

電話:080-8724-1637

時間:チェックイン15:00、チェックアウト10:00

https://www.sselectlab.com/nibunno