パリとアート

2017.11.24

現代美術のトレンドはここで知る。
パリアートの殿堂「グラン・パレ」

モニュメンタ 2011 Anish Kapoor展

 

パリの中心、シャンゼリゼ通りの途中にある「グラン・パレ」。1900年のパリ万博でパビリオンとして造られた建築は、当時の最先端素材だった鉄とガラスの屋根が特徴。「ネフ(身廊)」と呼ばれる中央のホールは、その美しさと天井高最大45mの壮大さゆえにさまざまな大規模アートイベント、シャネルのファッションショーなどが開催されている。

このスケールを存分に活かしきったのが「モニュメンタ」というアート展だ。年に一度、世界的なアーティストを招き、その名の通りモニュメントのような作品1点を展示する。忘れられないのは2011年の出来事。イギリスの美術家アニッシュ・カプーアは、はちきれんばかりの巨大バルーンでグラン・パレを占拠して観客の度肝を抜いた。スケールの感覚が壊れ、自分が小さくなったような驚きとそこはかとない不安感。そしてその内側では、まるで内臓に飲み込まれるかのような不思議な体験が待っている。

 

モニュメンタ 2011 Anish Kapoor展 (内部)

モニュメンタ 2011 Anish Kapoor展

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こういった誰にでもひと目で凄さがわかる作品は、子供向けアート教育のもってこいの素材になる。何に見えるか、何を感じるか、自由な発想を広げるトレーニングで想像力を養う。

このグラン・パレで定期的に開催されるイベントに、国際的なアートフェアがある。秋は10月に現代アートのフェア「FIAC」、11月は写真芸術のフェア「PARIS PHOTO」がプログラムされていて、世界中のコレクターやアートファンがパリへと集結する。

 


PARIS PHOTO 2016

 

 

前回もふれたように、住まいの中でアート作品を飾ることが日常的な欧米諸国。庶民からお金持ちまで、アートを購入することは、心と所有欲を豊かに満たす楽しみのひとつ。フランスで力のあるアーティスト達は、昔なら「サロン」と呼ばれた国の公式展覧会、現代ならアートフェアへの出品に命運をかける。目的は「作品を見てもらうこと」そしてなにより「販売する」ことだ。19世紀、モネやドガ、ルノワール、セザンヌなどの巨匠たちも、この「サロン」に入選して展示してもらい、評価を得て販売につなげようと、こぞって応募したが、絵のスタイルが斬新すぎて軒並み落選。ならば自分たちでやろうと企画したのが、のちに「第1回印象派展」として美術史に残ることになる1874年4月の自主展覧会だった。

 

今ではギャラリーが、アーティストの代理人としてアートフェアに出展し、作品を販売する。パリのFIACは、スイスのアートバーゼルなどと並び世界でも知名度が高く、第一線の美術家たちが紹介されるフランス最大規模のショー。今年は縁あって、準備中のグラン・パレに潜入することができた。

 

FIACブース設営の真っ最中。1点数百万、数千万円もするような作品が箱に積まれて行き来する。

 

一般公開は、木曜日から日曜日のわずか4日間。その前の水曜日には特別オープニングが行われて、招待されたコレクターや美術関係者、プレス関係者が来場して一大社交パーティーとなる。それに先立つ月・火曜日の2日間が設営日。30ヶ国、193におよぶ出展ギャラリーは、それぞれが与えられたブースに売り出し中の作家の作品を搬入し、できるだけ多くの人が目を留めるようなインパクトのある展示を構成しなければならないからその労力は大変なものだ。44回目の今年は、特別公開日もふくめ5日間で約73,000人が入場して、現代アートのトレンドを目撃した。

 

 

 

そのグラン・パレは、2020年11月から、修復のため3年間もの長期閉鎖に入る。その間イベントはどうするか、という問題はあるが、完成から100年以上の時が過ぎた歴史記念物、エッフェル塔をも超える量の鋼鉄を使った建築は、以前にもガラス屋根が崩落する事故があっただけにチェックも欠かせない。2024年に決まったパリ五輪までには、また美しくなったグラン・パレがお目見えするはずだ。フランスお得意の工事延期がなければ。

 

杉浦岳史/ライター、アートオーガナイザー

コピーライターとして広告界に携わりながら新境地を求めて渡仏。パリでアートマネジメント、美術史を学ぶ芸術高等学院IESA(現代アート部門)を修了。ギャラリーでの勤務経験を経て、2013年より Art Bridge Paris – Tokyo を主宰。現在は広告、アートの分野におけるライター、キュレーター、コーディネーター、通訳として幅広く活動。

www.artbridge-paris.com