SUMAU'S SCENE

2016.02.15
日本庭園が一望できるベランダの床は市松模様。朝香宮ご夫妻の居室からのみ出入りできます。

日本庭園が一望できるベランダの床は市松模様。朝香宮ご夫妻の居室からのみ出入りできます。

 

 

現代美術家・杉本博司氏監修の新館への通路は、ガラスと光が多様な形を織りなし、その模様を廊下に映し出しています。

現代美術家・杉本博司氏がアドバイザーとなった新館へとつづく通路は、ガラスと光が多様な形を織りなし、その影は刻々と変化していきます。

 

 

 

邸宅美術館の広大な庭は

ガレのフランスの自邸を思わせる

 

リニューアルオープンに伴い、改築された新館は、現代美術家の杉本博司氏がアドバイザーです。

 

ガラスの廊下には光が差し込み、模様の波が広がっています。

 

よくみるとハートの形や渦巻き形をしています。季節や時間帯によって、模様が変化していくので、いつ訪れても違う装い。

 

脚付杯「ルバーブの萎れた葉」(1903年頃) 北澤美術館蔵。

脚付杯「ルバーブの萎れた葉」(1903年頃) 北澤美術館蔵。

 

 

朝の光と夕暮れの光に照らされ、2つの顔を見せる花瓶。「松」〈ストローブマツ〉(1903年頃) 北澤美術館蔵。

朝の光と夕暮れの光に照らされ、2つの顔を見せる花瓶。「松」〈ストローブマツ〉(1903年頃) 北澤美術館蔵。

 

 

新館の展示室は、ガレの作品とより向き合えるような空間になっています。

 

スポットライトは「朝の光」と「夕暮れの光」の2種類の光で照らし出し、ガレが愛した「庭に生きる草花」をそこに観ることができます。

 

美しいデッサンとそれを元にして創り出された作品を見比べることもできます。

 

美術館の庭には梅の花が咲いていました。木の影が浮世絵のように映り込んだ看板が印象的です。

美術館の庭には梅の花が咲いていました。木の影が浮世絵のように映り込んだ看板が印象的です。

 

 

建物全体を眺めながら散策していると、ガレが愛したフランス・ナンシーの自邸の庭と重なります。

 

自然を愛でた朝香宮王とアンリ・ラパン、エミール・ガレ。

 

冬のやわらかな陽射しの中、三者が宿した自然への愛に包まれて、優しく優雅な気持ちになります。

 

(写真・文/川野結李歌)

 

 

 

 

Profile:川野結李歌

横浜生まれ。大学卒業後(美術史専攻)、2013年よりフリーランスのカメラマンとして活動中。雑誌を中心に、ポートレート、映画、アート、建築など幅広く撮影。趣味は海外旅行、スケッチ、愛犬との昼寝。

 

 

 

 

ガレの庭 

花々と声なきものたちの言葉

 

エミール・ガレ(1846-1904)は、19世紀末を彩ったヨーロッパの装飾様式「アール・ヌーヴォー」を代表する一人。花や昆虫など自然をモチーフにして、陶芸・ガラス・木工家具の3分野で活躍したアーティスト。自然の描写を通して、ガラスや木工家具を単なる装飾ではなく、哲学的な世界観を表す芸術作品を発表した。また植物学の権威としても知られている。「ガレの庭」展は、ガレが愛したフランス、ラ・ガレンヌの自邸と庭に見立てて、デザイン画(オルセー美術館所蔵)50点以上とともに、ガラス工芸品など100点以上を展観している。

 

会場の東京都庭園美術館は、朝香宮家鳩彦(やすひこ)王の邸宅で1933年に完成。当時フランスはアール・デコの全盛期で、その様式美に魅せられた朝香宮ご夫妻は、建設にあたり、フランス人芸術家アンリ・ラパンに主要な部屋の設計を依頼するなど、アール・デコの精華を積極的に取り入れた。建築は宮内省内匠寮が設計し、日本古来の高度な職人技も随所に発揮されている。当時のアール・デコ様式を正確に留めた貴重な歴史的建造物として、国の重要文化財に指定されている。

 

会期:2016年1月16日(土)~4月10日(日)

会場:東京都庭園美術館

開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)

休館日:第2・第4水曜日

入館料:一般1100円、大学生(専修・各種専門学校を含む)880円、

中学生・高校生・65歳以上550円

住所:東京都港区白金台5-21-9

電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)

http://www.teien-art-museum.ne.jp/

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