行ってみたいデザイン空間

2016.06.20

世界最速の走る美術館がデビュー
夏休みは「現美新幹線」に乗りに行こう!

何と新幹線が美術館となって走行。エクステリアデザインは、写真家・蜷川実花が夏の夜空を彩る花火を描き出し、列車内のインテリアは、松本尚、小牟田悠介など注目アーティストの作品で空間を創造。世界最速の新幹線が美術館となって、アート一色に埋めつくされている。

 

写真家・蜷川実花の作品で彩られたエクステリア。深みのある藍色に花火がデザインされ、停車中の車両を見るだけでもテンションがあがる。 ©mika ninagawa,Courtesy of Tomio Koyama Gallery

写真家・蜷川実花の作品で彩られたエクステリア。深みのある藍色に花火がデザインされ、停車中の車両を見るだけでもテンションがあがる。
©mika ninagawa,Courtesy of Tomio Koyama Gallery

 

 

最高速度210km/hの「世界最速芸術鑑賞」

新幹線の車両で楽しむ約50分間のアート体験

 

ひと昔前まで、旅先での観光ばかりでなく移動そのものも楽しむものだった。

 

特急列車に乗り、車窓に流れる景色を楽しみながら駅弁を食べるだけで「旅情」が味わえたような気がする。ブルートレインや夜行列車で「電車に泊まる」という非日常にワクワクした人もいるだろう。

 

ところが、高速鉄道や飛行機、高速道路の拡充など、ハイスピードかつ短時間で移動できる便利さが追求される時代、移動時間は楽しむものではなく「必要な無駄」になっている。

 

もっと、移動する時間と空間を楽しんでもいいのではないか。乗ること自体が旅の目的になるような列車があってもいいのではないか。

 

「高速移動」と「乗る楽しみ」を両立させたのが、「現美新幹線」だ。

 

指定席車両の11号車。松本尚が “触れられるアート”として、シートやカーペット、カーテンなどをトータルでコーディネート。

指定席車両の11号車。松本尚が “触れられるアート”として、シートやカーペット、カーテンなどをトータルでコーディネート。

 

 

15号車は、荒神明香(こうじんはるか)のインスタレーション「reflectwo」を展示。

15号車は、荒神明香(こうじんはるか)のインスタレーション「reflectwo」を展示。

 

 

もともとは秋田新幹線「こまち」として運用されていた車両を改造し、上越新幹線の越後湯沢-新潟間を約50分で結ぶ。運用は土・日・祝日を中心に1日3往復、計6本。最高時速は210km/hを記録する。

 

車両は6両編成で、8組のアーティストがこの列車のために制作した現代アートが車両の内外を飾る。

 

エクステリアは、写真家で映画監督の蜷川実花の作品だ。車両全体をキャンバスに見立てて、長岡の花火を大胆にデザインした。

 

深みのある藍色に、カラフルな火花が散る躍動感は、まさに日本の夏のアート。ホームに停車中の車両を見るだけでもテンションがあがる。

 

写真家である石川直樹が新潟で撮影した「潟と里山」を展示した14号車。

写真家である石川直樹が新潟で撮影した「潟と里山」を展示した14号車。

 

 

12号車は、小牟田悠介が制作。鏡面ステンレスを一面に配し、窓の外を流れる景色や光、乗客を含めた空間全体がアートとなる。

12号車は、小牟田悠介が制作。鏡面ステンレスを一面に配し、窓の外を流れる景色や光、乗客を含めた空間全体がアートとなる。

 

 

壁面に液晶画面を設置した16号車。新潟の地形、土地の豊かさを表現したブライアン・アルフレッドのアニメーションを鑑賞できる。

壁面に液晶画面を設置した16号車。新潟の地形、土地の豊かさを表現したブライアン・アルフレッドのアニメーションを鑑賞できる。

 

 

 

車両が丸ごとアート展示室に

7つのまったくちがう個性に触れる

 

車内は、各車両を別々のアーティストが担当した。13号車のみ2名が参加しており、カフェスペースの壁面は古武家(こぶけ)賢太郎の色鉛筆画が飾り、プラレールで自由に遊べるキッズスペースをParamodelが手がけている。

 

そのほかの車両を順にご紹介していこう。

 

指定席車両となる11号車は、松本尚(なお)が「五穀豊穣」、「祝祭」、「光」をテーマに、“触れられるアート”としてシートやカーペット、カーテンなどをトータルでコーディネート。

 

「こまち」のグリーン車だった車両を転用しているためシートの幅やピッチも広くゆったりとしているのも特徴だ。

 

12号車から16号車は、片側の窓をつぶして展示スペースとしている。13号車を除く4つの車両は、窓のある側にソファを配置。くつろぎながらアート鑑賞ができる仕様となっている。

 

12号車は、小牟田悠介が制作。鏡面ステンレスを一面に配した作品で、窓の外を流れる景色や光、乗客を含めた空間全体がうつろうアートとなる。

 

14号車には、写真家である石川直樹が新潟で撮影した「潟と里山」の写真を展示。荒神明香(こうじんはるか)のインスタレーション「reflectwo」を展示する15号車は、全長11mにわたって吊るされた造花が車両の動きに合わせて揺れる様子もおもしろい。

 

壁面に液晶画面を設置した16号車では、ブライアン・アルフレッドのアニメーションを鑑賞できる。新潟の地形、土地の豊かさなどを表現した15分の作品だ。

 

カフェとキッズスペースの13号車は、2名のアーティストが参加。

カフェとキッズスペースの13号車は、2名のアーティストが参加。

 

 

カフェスペースの壁面は、古武家賢太郎の色鉛筆画が飾られている。

カフェスペースの壁面は、古武家賢太郎の色鉛筆画が飾られている。

 

 

プラレールで自由に遊べるキッズスペースは、Paramodelが手がけた。

プラレールで自由に遊べるキッズスペースは、Paramodelが手がけた。

 

 

アートキュレーションは、東京の現代アートシーンをけん引するふたつのコンテンポラリーアートギャラリーが担当。

 

台東区谷中の銭湯を改築したギャラリー「SCAI THE BATHHOUSE(スカイザバスハウス)」と、2016年3月に神宮前のオープンした「MAHO KUBOTA GALLERY(マホクボタギャラリー)」のセレクトだ。

 

カフェは「romi-unie」のいがらしろみが監修。魚沼産米粉のバニラケーキや佐渡バターフィナンシェ、佐渡クリームチーズのレモンケーキなど新潟の素材を使ったスイーツが楽しめる。また、燕三条で人気の「ツバメコーヒー」監修のコーヒーも味わえる。

 

見どころがギュッと詰まった現美新幹線は、隅々まで堪能しようと思ったら50分の乗車時間ではもの足りないぐらいかもしれない。

 

6月いっぱいまでは指定席のほかは旅行商品としての販売だが、7月から9月は指定席および自由席が販売される。夏休みにぜひアートな旅を体験してみてはいかがだろう。

 

カフェでは「romi-unie」のいがらしろみが監修した、新潟の素材を使ったスイーツが楽しめる。燕三条で人気の「ツバメコーヒー」監修のコーヒーもおすすめ。

カフェでは「romi-unie」のいがらしろみが監修した、新潟の素材を使ったスイーツが楽しめる。燕三条で人気の「ツバメコーヒー」監修のコーヒーもおすすめ。

 

 

GWに運行をスタートして注目を集めている現美新幹線。上越新幹線の越後湯沢-新潟の「移動」がアミューズメントになる ©mika ninagawa,Courtesy of Tomio Koyama Gallery

GWに運行をスタートして注目を集めている現美新幹線。上越新幹線の越後湯沢-新潟の「移動」がアミューズメントになる
©mika ninagawa,Courtesy of Tomio Koyama Gallery

 

 

 

現美新幹線

http://www.jreast.co.jp/genbi/

えきねっと

http://www.eki-net.com/travel/train/?utm_source=go&utm_medium=dis&utm_term=banner_160527&utm_content=genbi&utm_campaign=train#genbi

関連記事一覧