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2015.12.14

国内で14年ぶりの大規模個展
「村上 隆の五百羅漢図展」開催中

村上 隆 《五百羅漢図》[白虎](部分)2012年 個人蔵
©2012 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

村上隆の「凱旋」と呼ぶに相応しい展覧会、『村上隆の五百羅漢図展』が東京・六本木の森美術館で開催されている。日本を代表する現代美術家のひとりでありながら、国内で大規模な個展を開催するのはじつに14年ぶりとなる。

 

 

展示風景:「村上 隆の五百羅漢図展」 森美術館、東京、2015年 村上 隆 《五百羅漢図》[白虎](部分)2012年 撮影:高山幸三 画像提供:森美術館、東京 ©2012 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

村上 隆 《五百羅漢図》[白虎](部分)2012年
展示風景:「村上 隆の五百羅漢図展」 森美術館、東京、2015年
撮影:高山幸三 画像提供:森美術館、東京
©2012 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 

展示風景:「村上 隆の五百羅漢図展」 森美術館、東京、2015年 撮影:高山幸三 画像提供:森美術館、東京 ©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

展示風景:「村上 隆の五百羅漢図展」 森美術館、東京、2015年
撮影:高山幸三 画像提供:森美術館、東京
©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 

 

村上 隆 《五百羅漢図》制作風景 撮影:Aminaka Kenta

村上 隆 《五百羅漢図》制作風景 撮影:Aminaka Kenta

作品を前にした村上 隆 撮影:御厨慎一郎 写真提供:森美術館 Ⓒ2012 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

作品を前にした村上 隆
撮影:御厨慎一郎 写真提供:森美術館
Ⓒ2012 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高さ3メートル、幅は4面で合計100メートル

圧倒的な迫力を見せつける《五百羅漢図》

 

最大の見どころは、なんと言っても《五百羅漢図》である。

 

中国の神話で東西南北を守るとされる四神を採り入れ、「青竜」、「白虎」、「朱雀」、「玄武」の4パートで構成されているのだが、それぞれが高さ3メートル、幅25メートルという超大作。

 

羅漢とは、悟りを開いた仏教の聖者「阿羅漢」の略語だ。

 

釈迦の教えを仏典として編集したとされる500人の弟子が「五百羅漢」であり、日本では江戸時代の中期より信仰の対象とされてきた。羅漢像や羅漢図が全国各地に数多く残されている。

 

村上は、その五百の阿羅漢に新たな解釈を加え、壮大な作品に仕立てた。

 

それぞれの羅漢の名前や特徴、過去に描かれた姿などを徹底的にリサーチし、咀嚼し、見事に村上作品のキャラクターとして世に送り出した。全国の美大生約200人が村上の指示に従って24時間体制で制作する工房システムにより、約1年という驚くほどの短期間で完成させている。

 

画面には、前向きだったり横向きだったり、合掌したり坐したり跳んだり、五百羅漢が個性豊かに描きわけられている。手塚治虫の『火の鳥』の要素を採り入れた朱雀、曾我蕭白の《雲龍図》にインスパイアされた青竜など四神。

 

そのほか、狩野一信の「五百羅漢図」に描かれた鬼、伊藤若冲の《象と鯨図屏風》に登場するクジラとゾウ、宮崎 駿監督の映画『もののけ姫』に登場する「シシ神」など、新旧の日本のアートの意匠をモチーフにしている。

 

さらにおもしろいのは、制作の過程も展示の一部としているところだ。何百冊ものファイルにまとめられた、リサーチ時につくりあげた資料、デッサン、指示書などのほか、制作の様子収めた映像も展示。いかにしてこの壮大な作品が完成したのか、つぶさに知ることができる。

 

 

村上 隆 《手と手を繋げよ。》 2015年  ©2015 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

村上 隆 《手と手を繋げよ。》 2015年
©2015 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 

 

村上 隆 《円相 隣にいる》2015 年 ©2015 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

村上 隆 《円相 隣にいる》2015 年
©2015 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 

 

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展示風景:「村上隆の五百羅漢図展」 森美術館、東京、2015年 撮影:高山幸三 画像提供:森美術館、東京 ©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

展示風景:「村上隆の五百羅漢図展」 森美術館、東京、2015年
撮影:高山幸三 画像提供:森美術館、東京
©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 

 

スケール感、繊細さ、豊かな色彩

大物が揃う展示作品は、全作日本初公開

 

《五百羅漢図》以外の作品も必見だ。なにしろ、展示されている約40点の作品はすべて日本初公開なのである。

 

作品の多くは、時空や宇宙を感じさせる。花やドクロ、パンダ、「DOB君」などのポップなキャラクター。さらに、虎や象、鳳凰、鶴、亀をはじめとする日本で昔から描かれてきた意匠、禅のシンボルでもある「円相」や四天王、達磨大師など仏教に通じるモチーフが作中に同居し、独特の世界とつくりだす。

 

キャンバスに描かれた村上作品は、大半がアクリル絵の具で鏡面仕上げとしているが、制作中の《見返り、来迎図》は素材感がはっきりとわかる。

 

制作半ばの作品や制作過程を、てらうことなく、惜しむことなく展示する。公開制作に近いリアリティが感じられておもしろい。

 

《五百羅漢図》も、「円相」シリーズも、《宇宙の産声》をはじめとする彫刻作品も、ともかく芸が細かい。細部の作りこみは繊細で、さまざまなコンテクストが隠されている。ちなみに、美術展にしては珍しく館内どこでも撮影また、スマホでの動画撮影も可能。

 

村上 隆はメディアにもたびたび登場する著名なアーティストだが、名前や丸メガネにひげの風貌を見聞きしたことはあっても、作品を実際に観たことがある人は少ないかもしれない。

 

この機を逃せば、またいつ日本で個展を開くかわからない。村上隆の世界観を肌で感じられる絶好のチャンスに、大型作品らしい迫力と、繊細さを、じっくり鑑賞していただきたい。

 

(文・久保加緒里)

 

 

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展示風景:「村上隆の五百羅漢図展」 森美術館、東京、2015年 撮影:高山幸三 画像提供:森美術館、東京 ©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

展示風景:「村上隆の五百羅漢図展」 森美術館、東京、2015年
撮影:高山幸三 画像提供:森美術館、東京
©Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 

 

村上 隆 《死の淵を覗き込む獅子》 2015年  ©2015 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

村上 隆 《死の淵を覗き込む獅子》 2015年
©2015 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 

 

村上 隆 《五百羅漢図》[玄武](部分)2012年 個人蔵 ©2012 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

村上 隆 《五百羅漢図》[玄武](部分)2012年 個人蔵
©2012 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 

©2012 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. / Design by Goto Design, NY

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村上 隆の五百羅漢図展

会期:2015年10月31日(土)~2016年3月6日(日)

会場:森美術館

開館時間:10:00-20:00 火曜日は10:00-17:00 (いずれも入館は閉館30分前まで)

休館日:会期中無休

観覧料:一般1600円/高校生・大学生1100円/子ども(4歳から中学生)600円

住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階

お問合せ:03-5777-8600 (ハローダイヤル)

http://www.mori.art.museum

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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