デザインインフォメーション

2015.10.27

奇抜な創造力で活躍する巨匠建築家
フランク・ゲーリーの大規模展覧会

一度見たら忘れられない建築物をつくり続ける建築家、フランク・ゲーリー。21_21 DESIGN SIGHTで現在開催中の「建築家 フランク・ゲーリー展 “I Have an Idea”」は、彼の「アイデアの力」に焦点を当て、頭の中で生まれたアイデアの種が実現に至るまでのプロセスを紐解く内容となっている。10月15日に行われたプレス向け内覧会では、来日した本人も出席。自身のルーツや創作の意図を明かした。

 

 

ビルバオ・グッゲンハイム美術館 (FMBG Guggenheim Bilbao Museoa,2015/Photo: Iwan Baan)

ビルバオ・グッゲンハイム美術館
(FMBG Guggenheim Bilbao Museoa,2015/Photo: Iwan Baan)

 

 

ルイ・ヴィトン財団 (Photo: Iwan Baan)

ルイ・ヴィトン財団
(Photo: Iwan Baan)

 

 

 

建築界の奇才にマニフェストあり

新進気鋭の建築家が創作の源泉を読み解く

 

「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」(スペイン・ビルバオ、1997年)、「ウォルト・ディズニー・コンサートホール」(アメリカ・ロサンゼルス、2003年)など、「有機的」「斬新」という言葉ではとても表現しきれない形態の建物を設計し、世界的に活躍する巨匠建築家、フランク・ゲーリー。

 

特にビルバオ・グッゲンハイム美術館は、インパクトのある姿が話題を呼び、観光客が絶えずに斜陽の街が再生したことでも有名だ。

 

86歳になる彼の大規模な展覧会は、半生記を超える活動のうち10のプロジェクトを紹介しながら展開される。

 

展覧会ディレクターと会場構成を手がけたのは、パリを拠点にして「エストニア国立博物館」の設計や、先日は「新国立競技場基本構想国際デザイン競技」のファイナリストとして注目を集めた若手建築家の田根 剛(DGT.)。

 

普段の設計活動で行っている綿密なリサーチの対象を建築物だけでなくゲーリー本人にも向け、型にはまらないゲーリーの創作の姿勢と源泉に迫っている。

 

1階のエントランスを入って正面に据えられているのは、最新作の「ルイ・ヴィトン財団」(フランス・パリ、2014年)の50分の1の迫力ある模型。船の帆のようなガラスが折り重なる姿は、初めてゲーリーの世界に触れる人も、昔から知っている人も新鮮に感じられる。

 

地階に至ると、大きなコンクリート壁にはここまでに挙げた3つの建物の映像が投影されている。「スケールを体感できるようにした」と映像を手掛けた遠藤 豊(LUFTZUG)は語る。

 

続く小さな展示室で展開されるのは、「ゲーリー・ルーム」。ゲーリー事務所にあるミーティングルームに着想を得たといい、不思議な形態のオブジェや写真などが展示されている。

 

ここで中核をなすのは、ゲーリーの「マニフェスト」だ。「まずアイデアが浮かぶ。ばかげているけど気に入る。」から始まり、試行錯誤を繰り返す様子を示す文は、彼がアイデアを実現するために闘い、投入する膨大なエネルギーを現している。

 

この展示室では、彼の建築の原点ともいえる「ゲーリー自邸」(アメリカ・ロサンゼルス、1979年)の模型や写真も展示。温かみのある空間を感じながら、メインの展示室へと向かう。

 

 

ル・ルボ脳研究所 (Photo courtesy of Cleveland Clinic Lou Ruvo Center for Brain Health)

ル・ルボ脳研究所
(Photo courtesy of Cleveland Clinic Lou Ruvo Center for Brain Health)

 

 

ゲーリー自邸(アメリカ・サンタモニカ、1979) (Photo: Tim Street-Porter/OTTO)

ゲーリー自邸(アメリカ・サンタモニカ、1979)
(Photo: Tim Street-Porter/OTTO)

ゲーリー事務所 (Image Courtesy of Gehry Partners, LLP)

ゲーリー事務所
(Image Courtesy of Gehry Partners, LLP)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Facebook本社 西キャンパス〈模型〉 (Image Courtesy of Gehry Partners, LLP)

Facebook本社 西キャンパス〈模型〉
(Image Courtesy of Gehry Partners, LLP)

 

 

UTS(シドニー工科大学)ドクター・チャウ・チャク・ウイング棟 ( Photo: Andrew Worssam)

UTS(シドニー工科大学)ドクター・チャウ・チャク・ウイング棟
( Photo: Andrew Worssam)

 

 

 

アイデアを実現するさまざまなツールから

絶えざる試行錯誤の様子を追体験

 

大きな展示室では、ゲーリーのアイデアが進展する様子が表現される。展覧会ディレクターの田根はまず、「アイデアグラム」としてゲーリーのアイデアを「建築」「人」「技術」に分け、マインドマップのように要素を整理。壁面に描き出した。

 

これから続くのは、6つのプロジェクトを引き合いに出しながら、ゲーリーがアイデアを実現するための“ツール”の紹介である。

 

大きく引き伸ばされたのは、ゲーリー事務所の写真。広大なオフィスの中に置かれている数々の模型はプロジェクトごとに分かれ、進行形の模型を見ると最新の状況がひと目で把握できる。

 

「私は雑然としているのが好きなんです。落ち着くんです。オフィスも、半分ほどのものを処分しなければとわかっていますが、この環境にはインスピレーションが湧くのです」とはゲーリーの言葉だ。

 

会場は、木製の大きなブロックが展示台となって構成される。その広がり方は、模型をつくるときのデスクのようであり、ゲーリーが幼少期に祖母と遊んだという積み木が重ねられたようでもある。

 

壁面には、ゲーリー自身の言葉や関連する写真、スケッチ、建築素材などを展示。興味深かったのは、奇抜な外観に目が行く建築物であっても本人は「内部の居心地の良さを重視している」という点。

 

「内部から設計するんです。それによって、完成した建物は何らかの必然性を帯びる。人々がそこにいたいと思うような建物、人間性のある建物をつくらなければならない」と表現する。

 

さらに、ゲーリーの建築を可能にする「ゲーリー・テクノロジー」を、ビジュアルデザインスタジオWOWによる映像で解説。二次元の図面では再現しきれない形態を、最先端のCAD技術などを駆使して実現する様子が示される。

 

こうすることで、時間やコストまでも一体でコントロールする体制が整った。「より美しい建物はより合理的なプロセスで成り立つ」という言葉が印象的だ。

 

最後は「ゲーリーのシークレット」として、ゲーリーの重要なモチーフとなっている魚のスケッチや模型、また彼自身の撮影による工場の写真が展示される。

 

インタビューでは、自らが建築の道を志した経緯や、日本の木造文化との関わりについて言及。

 

「現代の文脈のなかで、人間味を感じられるもの、歴史を感じられるものをコピーではなく新たにつくりたい」と語るゲーリーに、まったく衰えは感じられない。これからも意欲的に実現されるアイデアに、大きく期待したい。

 

(取材・文/加藤 純)

 

 

展覧会会場風景〈Photo:吉村昌也〉

展覧会会場風景〈Photo:木奥恵三〉

 

 

ゲーリー・ルーム(左)とゲーリーのシークレット(右)〈Photo:吉村昌也〉

ゲーリー・ルーム(左)とゲーリーのシークレット(右)〈Photo:木奥恵三〉

 

 

Photo by John B. Carnett/ Bonnier Corporation via Getty Images

Photo by John B. Carnett/
Bonnier Corporation via Getty Images

 

 

フランク・ゲーリー(Frank Gehry)

カナダ・トロント育ち。1947年、家族とともにロサンゼルスに移住。1954年、南カリフォルニア大学にて建築学士を取得後、ハーバード大学デザイン大学院で都市計画を学ぶ。その後は建築家として、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの各地で公共および民間の建造物を手がけている。

アーノルド・W・ブルンナー記念建築賞、プリツカー賞、ウルフ賞芸術部門(建築)、高松宮殿下記念世界文化賞など、建築界で最も重要な賞を多数受賞している。

主な仕事には、スペイン・ビルバオのグッゲンハイム美術館、カリフォルニア州ロサンゼルスのウォルト・ディズニー・コンサートホール、ニューヨーク市のエイト・スプルース・ストリート、フランス・パリのルイ・ヴィトン財団など。

 

 

 

 

10月15日のプレス内覧会では、来日したフランク・ゲーリーも出席。自身のルーツや創作の意図を語ってくれた(左)。展覧会ディレクターと会場構成を手がけたのは、若手建築家の田根 剛氏(右)〈Photo:加藤 純〉

10月15日のプレス内覧会では、来日したフランク・ゲーリーも出席。自身のルーツや創作の意図を語ってくれた(左)。展覧会ディレクターと会場構成を手がけたのは、若手建築家の田根 剛氏(右)〈Photo:加藤 純〉

 

 

 

21_21 DESIGN SIGHT企画展

建築家 フランク・ゲーリー展 “I Have an Idea”

会期:2015年10月16日(金)~ 2016年2月7日(日)

会場:21_21 DESGIN SIGHT(東京ミッドタウン・ガーデン内)

開館時間:10:00-19:00(入場は18:30まで)

休館日:火曜日(11月3日は開館) 年末年始(12月27日から1月3日)

入場料:一般1100円/大学生800円/高校生500円/小中学生以下無料

*各種割引についてはウェブサイトを参照

住所:東京都港区赤坂9-7-6

電話:03-3475-2121

http://www.2121designsight.jp/

 

 

 

 

関連記事一覧