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2015.10.26

「ニキ・ド・サンファル展」で出逢う
おしゃれでエキサイティングなアート

戦後を代表するアーティストの一人、ニキ・ド・サンファルの回顧展が、六本木の国立新美術館で開催されている。「ニキ・ド・サンファル展」に集結した、カラフルでおしゃれでエキサイティングな作品が問いかけるものとは?

 

 

 

《泉のナナ》 1971年/1992年  Yoko増田静江コレクション/撮影:林雅之/© 2015 NCAF, All rights reserved.

《泉のナナ》 1971年/1992年
Yoko増田静江コレクション/撮影:林雅之/© 2015 NCAF, All rights reserved.

 

 

《愛万歳》 1990年  Yoko増田静江コレクション/© 2015 NCAF, All rights reserved.

《愛万歳》 1990年
Yoko増田静江コレクション/© 2015 NCAF, All rights reserved.

 

 

 

大胆でパワフルで繊細な作品から

ニキの魂の叫びが聞こえてくる

 

ニキ・ド・サンファルは戦後を代表するアーティストとして世界的な成功を収めたひとりである。色彩豊かな女性像「ナナ」シリーズをはじめ、エネルギッシュな作品を数多く世に送り出してきた。

 

今回の展覧会では、年代別に創作の軌跡を追いながらニキの世界が紹介されているが、ニキの作品に通底するのは、自己や社会に対する強い意識と自由奔放な表現であることがはっきりと解る。

 

暴力的だったりときにファンタジックだったり、それぞれの作品が見せる表情はまったくちがうが、どの作品からも必死になにかと闘い、なにかを追い求め続けたニキの気迫が感じられる。

 

1961年に発表され、センセーションを巻き起こした初期の作品群「射撃絵画」シリーズは、パフォーマティブな創作時の映像も併せて展示されていた。オブジェと塗料の入った瓶や缶を配し真っ白く塗り固めた壁面に、白いつなぎを着たニキがライフルで銃弾を撃ち込む。鳥のさえずりが聞こえる高原に銃声が響き渡り、ギャラリーが歓声をあげる。

 

平穏な時間と空間が一気に引き裂かれる。ニキはなぜ、このような暴力的な表現を選んだのだろう、と思いを馳せる。

 

飛散したのちダラリと流れ落ちる塗料は、怒りなのか、苦悩なのか。それとも歓喜なのか。ニキは銃弾を撃ち込むことで、なにかを昇華できたのだろうか。

 

 

《スフィンクス》 1975年  Yoko増田静江コレクション/撮影:黒岩雅志/© 2015 NCAF, All rights reserved.

《スフィンクス》 1975年
Yoko増田静江コレクション/撮影:黒岩雅志/© 2015 NCAF, All rights reserved.

 

 

《小さなナナ・メゾン(クラリス)》 1968年頃  Yoko増田静江コレクション/撮影:黒岩雅志/© 2015 NCAF, All rights reserved.

《小さなナナ・メゾン(クラリス)》 1968年頃
Yoko増田静江コレクション/撮影:黒岩雅志/© 2015 NCAF, All rights reserved.

《ビッグヘッド》 1970年  Yoko増田静江コレクション/撮影:林雅之/© 2015 NCAF, All rights reserved.

《ビッグヘッド》 1970年
Yoko増田静江コレクション/撮影:林雅之/© 2015 NCAF, All rights reserved.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女性の社会的役割をテーマとした
数多くの作品を生み出す

 

射撃絵画で注目され、高く評価されたニキは、その後も創作活動に没頭していく。社会との関わりのなかでの女性という性に興味関心を抱くようになり、誕生したのが女性像「ナナ」シリーズだ。

 

ふくよかで、奔放で、躍動感がある。鮮やかな色彩はポップだが、力強さとたくましさに溢れ、男性主導の社会のなかでふみにじられる女性性への怒りという深いテーマ性を内包したナナは、ニキそのもののようにも思えてくる。

 

本展覧会は、2014年秋にパリのグラン・パレで開催された『ニキ・ド・サンファル大回顧展』の要素をベースに構成されているが、一部に日本独自の展示が含まれている。ニキの作品に惚れ込み、20年以上にわたって深く親交を持ち続けたコレクター、Yoko増田静江さんとの交流にもスポットが当てられているのだ。

 

ニキからYokoへ宛てられた直筆の手紙は、まるで文字が躍っているように見える。カラフルな絵が添えられ、ところどころに装飾文字も使われていて、とても楽しげで自由だ。何通もの手紙に「ドウモ有難ウ」と綴られており、ニキとYokoのあいだに刺激と信頼とお互いを尊重する気持ちがあったことがうかがえる。

 

1999年に発表された大作<<ブッダ>>など、ニキの晩年の作品が少なからず日本からインスピレーションを受けているのも、Yokoとの交流によるところが大きいことがわかる。

 

10月29日のニキの誕生日に合わせ、国立新美術館では10月24日から29日を「ニキ・ウィーク」としてさまざまなイベントを開催する予定だ。ニキが生み出した魅力的な作品群を鑑賞しながら、ニキが真正面から向き合ってきたジェンダーや社会問題に目を向けてみてほしい。

 

(文・久保加緒里)

 

 

 

《恋する鳥》 1974年  Yoko増田静江コレクション/撮影:黒岩雅志/© 2015 NCAF, All rights reserved.

《恋する鳥》 1974年
Yoko増田静江コレクション/撮影:黒岩雅志/© 2015 NCAF, All rights reserved.

《ブッダ》 1999年  Yoko増田静江コレクション/撮影:林雅之/© 2015 NCAF, All rights reserved.

《ブッダ》 1999年
Yoko増田静江コレクション/撮影:林雅之/© 2015 NCAF, All rights reserved.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《赤い魔女》 1963年  Yoko増田静江コレクション/撮影:林雅之/© 2015 NCAF, All rights reserved.

《赤い魔女》 1963年
Yoko増田静江コレクション/撮影:林雅之/© 2015 NCAF, All rights reserved.

 

 

 

 

《大きな蛇の樹》 1988年  Yoko増田静江コレクション/撮影:林雅之/© 2015 NCAF, All rights reserved.

《大きな蛇の樹》 1988年
Yoko増田静江コレクション/撮影:林雅之/© 2015 NCAF, All rights reserved.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニキ・ド・サンファル(ポートレート) 1983年  Yoko増田静江コレクション/撮影:黒岩雅志/© 2015 NCAF, All rights reserve .

ニキ・ド・サンファル(ポートレート) 1983年
Yoko増田静江コレクション/撮影:黒岩雅志/© 2015 NCAF, All rights reserve .

ニキ・ド・サンファル(NIKE DE SAINT PHALLE 1930-2002)

1930年、フランス系アメリカ人の母とフランス貴族の血を引く父との間にフランスで生まれる。最初の夫であるハリー・マシューズと共に1952年にパリに移住。1953年に精神疾患の治療のために絵画制作に取り組んだことを機に芸術家を志す。1960年からは彫刻家のジャン・ティンゲリーとアトリエを共有して生活を始める。翌年発表した「射撃絵画」で注目を浴び、その後、女性の社会的役割をテーマとした作品を数多く生み出す。ニキの創作活動は絵画や彫刻に留まらず、映画、舞台、建築、執筆などジャンルを超えて展開される。晩年はアメリカのサンディエゴ郡ラ・ホーヤに居を構え、作品制作に取り組んだ。2002年、71歳の生涯を閉じる。現在、サンディエゴ郡サンティーに設立されたニキ芸術財団がニキの作品と資料の保護に努めている。

 

 

 

 

 

ニキ展ロゴ

ニキ・ド・サンファル展

会期:9月18日(金)~12月14日(月)

会場:国立新美術館 企画展示室1E

休館日:火曜日 ただし11月3日(火)は開館 、11月4日(水)休館

時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで) ※入場は閉館の30分前まで

料金:一般1600円、大学生1200円、高校生800円、中学生以下無料

住所:東京都港区六本木7-22-2

電話:03-5777-8600 (ハローダイヤル)

ニキ・ド・サンファル展公式ホームページ:http://www.niki2015.jp/

 

 

 

 

 

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